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ハジマリノヒ  作者: うぐいす
幻想湖水伝
182/215

幻想湖水伝11

 深夜、皆が寝静まった頃。

不実の湖には深い霧が出ており、人里離れた場所である筈なのに獣や鳥の声も無く、気味の悪い静寂が横たわっていた。

そんな中、キャンプの中からのっそりと外へ出てきた人影があった。

スティーブの助手、ライラだ。


「……………………」


 トイレにでも起きたのかと思えば、しかしどうにも様子がおかしい。

寝ぼけ顔である事に不自然さは無いが、ふらふらと足元が覚束なく、そもそも安全の為トイレは外には設置していない。

ライラは何かに誘われる様に湖の方へと進んで行った。

歩きながらライラは昔の夢を見ていた。

小さい頃の夢、ライラ・ウェステンラの人生の大きな転機となったあの日の夢。


・・・



 まだセカイが世界だった頃、裕福な家に生まれたライラ・ウェステンラは両親から愛されて育ち、何不自由なく暮らしていた。


「誕生日おめでとう!!」


 その日はライラの7歳の誕生日だった。

祝福の言葉に続いてクラッカーが数回鳴って、彩りを添える。

一人娘の誕生パーティはささやかなもので、ライラの両親と幼馴染のジョーンズ一家が呼ばれていた。


「みんなありがとう!」


 天真爛漫なライラの笑顔に皆頬が緩む。

ライラのママがキッチンから七本のろうそくが立ったケーキを持ってきた。


「このケーキ、ママと二人で作ったのよ!」

「うふふ……きっと皆喜んでくれるわ」


 ちょっぴり得意げなライラの前にケーキが到着して、皆がライラは蠟燭の火を吹き消そうとした所で……『目が覚めた』


「あれ?ここは……?」


 テントで寝ていた筈なのに気付けばライラは深い霧の中に居た。

あまりにも霧が濃すぎて周囲に何も見えない。

前も後ろもわからなくなり、進もうか戻ろうか迷っていると前方に明かりが見えた。

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