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ハジマリノヒ  作者: うぐいす
幻想湖水伝
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幻想湖水伝7

 バスで大森林を奥へと進んで行くと、次第に道路の荒れ具合が酷くなっていく。

遂には道すらもなくなってしまい、車両では進行不能になってしまった。

普通ならここからは車を降りてモッドを警戒しながらの歩きになるのだが彼等はクオリア、そうはならない。


「そろそろやりますか」

「めんどくせーなぁ……」


 オニキスが重力操作でバスを空中に浮遊させると、バスの屋根で胡坐をかいていたエメラルドが風を操ってバスを前方へと押し出して進む。

他の面々は時折襲って来る飛行型のモッドを迎撃して撃ち落とす。

その状態でさらに半日、森を進んで行った。


「あ、着きましたよ!この辺で下ろして下さーい!」


空飛ぶバスの車内で地図を確認していたスティーブが声を張り上げて知らせる。


「ようやくですか……まだ余力はありますが、流石に気疲れしますね」

「お疲れ様です、でも着地の際に待ち伏せ等の危険がある可能性がありますので、もう少し頑張って下さい」

「えぇ、わかっています」


 オニキスとスティーブが初めて会ってからまだ二日も経っていないが、スティーブの立ち振る舞いや態度を見て『しっかりした人だな』という印象を受けた。

確かにスティーブは世間の評判通りまだ若いが、偉大な実績は伊達では無いというのが感じられる。

彼が普段から股にかける広いセカイが、彼を鍛え上げているんだろう。

そういう尊敬の念もあってかクオリア達とスティーブ達は軽い冗談を言える位には打ち解けていった。


「皆さん長旅お疲れ様でした!今日はキャンプ周辺の安全確認を済ませてから、明日から本格的に調査を開始しましょう!」


 リキッド・クリスタル社からの報告では以前の調査隊が設営したキャンプがそのまま残っているという事だったので、クオリア達もそれを利用させてもらう事にした。

霧の深い湖の湖畔に設営されたキャンプ地に到着した一行は、最初に軽くキャンプ内を調べまわってみたが、特に野生のモッドに荒らされた形跡も見当たらず、使われなくなってから時間が経っている設備には多少の埃は積もっているものの、全てが綺麗に使用可能なまま残っていた。

モッド達は元々大戦中に生物兵器として造られた存在である為、人類や人工物に対して非常に攻撃的である事が多い。

なので設備がモッドに荒らされていないという事は不自然であり少し不気味だ。

設備に異常が無いのなら、ここに居たヒト達は一体何処へ行ってしまったのか?


・・・


 キャンプ地に到着したその日の夜……既に深夜3時を過ぎたというのに明かりの消えないテントがある。

探検家スティーヴ・ジョーンズのテントだ。


「はいコーヒー」


 スティーブの助手のライラが机で調べ物をしているスティーブの横にそっとコーヒーを置くと、スティーブはライラがテント内に居た事に今気付いた様子だった。


「あ、ライラ……ごめん、気付かなかったよ」

「だろうと思った……ただいま」

「うん、おかえり」


 スティーブは読みかけの資料を一旦机の上に置くとライラの淹れてくれたコーヒーの入ったカップを手に取った。

カップに顔を近づけてみると鼻をくすぐるコーヒーの香りが気分をリラックスさせてくれる。


(コーヒーを淹れている時から香りは部屋に漂っていた筈だけど……夢中になると周りに気が回らなくなるのは悪い癖だなぁ)


 スティーブは内心自分の悪癖を反省していたが、幼馴染であるライラからすればこんなのはいつもの事で、気にするのも今更だ。

彼は自分の悪い部分をそのままにしたくないなというヒトの良さも持っていて、少し申し訳無さそうにしてコーヒーをちびりちびりと啜っていた。

ライラはそれを内心『かわいいな』感じつつも『気にしなくてもいいよ』と言う代わりに話題を変える事にした。


「何を見てたの?」

「ん?あぁ、前の調査隊の記録とかだよ、特に収穫は無かったけど……調査自体は何事も無く終わったみたい」

「でも調査隊の人達は皆、行方を眩ませた……」

「そうなんだよ……調査隊の行動記録にも目を通してみたけど、大森林から外に出たという記録も無いし、何か緊急事態が起こったという記録も無いんだ」

「……原因はなんだと思う?」

「うーん……まだ確証が無いから、クオリアの皆さんにはまだ話せないんだけど、おそらく……」


ライラの質問にスティーブは十分に勿体付けた前置きをしてから答えた。


「……やっぱりモッドかなあ、どういう種類かまではまだ流石に分からないけど……」

「根拠とかはあるの?」

「これは僕個人の勘なんだけど……この無作為にヒトを害する感じ、如何にもだよねぇ」


 二人は世界中を飛び回って冒険している途中、何度も危険な目にあった。

ある時はそれが同じヒトだったり、ある時はそれがモッドだったりしたものだ。

そういった経験からスティーブの勘も馬鹿には出来ない。


「もしかして悪の秘密結社とかの仕業だったり?」

「はっはっは!ジャングルの奥地の秘密基地!それはそれで大発見だねぇ!」

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