幻想湖水伝5
リキッド・マスクの要請で行方不明のクオリア・パールを捜索するべく集められた八人のクオリア達。
話が終わった後、クオリア全員でなんだかんだと相談しては見たものの、結局全員でパールを捜索する事になった。
リキッド・マスクに裏があって完全に信用出来ないにしても、他ならぬクオリアの兄弟の事を他人に任せたくないという事で話が一致した。
それからクオリア達はそれぞれの予定を調整し、遂にパールの捜索へ出発する日がやって来る。
待ち合わせ場所に最初に姿を現したのは、緑色の髪に墨の様な真っ黒な肌を持つ少女クオリア・オニキスだった。
(皆はまだ来てないみたいですね……まぁ、時間の三十分前だから当たり前ですが……)
オニキス自身も実際に待ち合わせ場所で何かが起こるとは考えてはなかったが、それでも早めに到着していれば何か不測の事態にも余裕を持って対応出来るだろう……なんてうっすら考えてはいるものの、まぁぶっちゃけると単にそういう性分なだけだ。
「オニキス?随分早いんだね?」
次に待ち合わせの十分前に待ち合わせ場所にやってきたのは、黄色い肌を持つスキンヘッドのマッチョメン、クオリア・アンバーだった。
どうやらジョギングしてきたらしく、額に汗をかいていた。
アンバーはタオルで汗を拭き、制汗剤等で身だしなみを整え始めた。
彼が十分早く到着したのは、この為だ。
待ち合わせの五分前にはリキッドクリスタル社の用意した野外活動用の装甲バスが二人の前にやってきて、オニキスとアンバーはそれに乗り込んだ。
「おはよう諸君、やはり時間通り全員という訳にはいかないか……」
出発予定時刻にバスに乗り込んで来たのは流れる様な美しいブロンドに水色と翠の中間の様な肌色を持つエレガントな青年クオリア・ターコイズ。
続いて滅茶苦茶具合が悪そうな真緑色の肌の少女クオリア・エメラルドが現れた。
「…………」
エメラルドの様子を見かねたオニキスが問いかけた。
「エメラルド、凄く具合が悪そうですけど……大丈夫ですか?」
するとエメラルドはいつもより全然覇気の無い目をオニキスに向けた。
「……ちょっと寝てねーだけだ、心配すんな」
といって軽く手を上げると、そのままバスの座席に倒れ込んで寝てしまった。
「……エメラルドは本当に大丈夫でしょうか?」
「どうせ徹夜でゲームでもしてただけだろう、心配なんかするだけ無駄さ」
待ち合わせの時間から五分過ぎた頃、遠くから凄いスピードでパスに向かってくる人影が見えた。
「ちこくちこく~!!」
人影の正体は水を操る力を持つ薄桃色の髪と透き通る水色の肌を持つ少女、クオリア・アクアマリンだ。
アクアマリンは能力で地面に水流を発生させて、道路の上をサーフボードに乗って滑走してきた。
寝坊して慌てていたのか、トーストを一枚口にくわえたままだ。
バスの中から向かってくるアクアマリンの姿を見たオニキスがアンバーの方向を向いて言った。
「……もしかしてこれが話に聞く陸サーファーというやつでしょうか?」
「いやぁ……多分違うんじゃないかなぁ」
そうこうしている内に、アクアマリンもバスの乗り込んで来た。
「遅れてごめ~ん!」
「あ、いえ、少し位なら大丈夫ですよ……あと来てないのは……」
「ルビーとサファイア、あとはアメジストか……」
アクアマリンが思い出した様に言った。
「あ、そうだ。ルビーから伝言があるよ『サファイアが時間通りに起きるなんてどうせ不可能だろうから私が引っ張っていくわ』ってさ」
アクアマリンは自分のクリクリした目を斜めに引っ張ると釣り目を作り、ルビーの声真似をした。
アクアマリンの声真似は思ったより似ていて面白くもあったが、笑っている所をルビー本人に見つかれば何を言われるかわかったもんじゃないということで、曖昧に愛想笑いで返す事にした。
「あはは……ルビーがついてるなら安心だけど、それにしては二人共遅いね」
「もしかしてアレじゃないか?」
ターコイズが指差した先に目を向けると、一台のタクシーがバスへ近づいてきていた。
タクシーから降りてきたのは赤い肌が目を引くツインテールの少女、クオリア・ルビー。
そしてタクシーから引っ張り出されたのは漆黒のロングヘアの深い青色の肌の女性、クオリア・サファイアだ。
ルビーはガミガミとサファイアを叱っていた。
「全く!出掛けにアンタがもたもたするから、間に合わなかったじゃないの!」
「ルビー……ごめんて~」
険悪な雰囲気かと思いきや、別にそうでもないらしい。
サファイアが鈍くさくて時間にルーズなのも、ルビーの怒りも大抵長続きしないのもいつもの事だ。
「残りはアメジストだけですけど……」
その時、クオリア達の通信端末にメッセージが入った。
メッセージを送ったのは、まだ待ち合わせ場所に姿を現していない最後のクオリア。
紫色の肌をもつ痩せ型の男、クオリア・アメジストだった。
『そろそろ全員揃ったか?じゃあ今から俺を迎えに来い』
これもいつも通りとは言え、皆呆れていた。
とにかく出掛けになんやかんやあったものの、クオリア八人を乗せたバスは次の待ち合わせ場所へと出発した。
そこでクリスタル・リキッド社が手配した専門家とやらと落ち合う予定になっているからだ。