幻想湖水伝3
広い平原の中の一本道を一台のバイクが走っている。
道の先にはまだ地平線以外のものは見えないが、この道は学園都市ジュラルバームへと続いている。
バイクを運転している大柄な男はフリーの傭兵として世界を旅する男、ガレス・ギャランティス。
横のサイドカーに乗っている黒い肌の少女はクオリア・オニキス。
二人は共にセカイを旅する仲間であり、付き合い始めたばかりの彼氏彼女でもある。
「別行動?勿論構わないが、なんか急だな?」
オニキスからの急な提案にガレスは思わず聞き返した。
「えぇ、実はリキッド・クリスタルという企業から連絡があって、私達クオリアに協力を仰ぎたいと……」
リキッド・クリスタルという名前はガレスにも聞き覚えがある。
最近新技術でニュースを騒がせている新興企業だ。
ニュースをチェックするヒトならば、あやゆる情報媒体でその名を目にする事だろう。
「リキッド・クリスタル社といやぁ、最近シャード関連の商品を売り出してる新興企業だよな?」
「はい、実はあの会社……元マテリアル研究所の職員が立ち上げた会社らしいんですよ。なんでもマテリアル研究所の技術を応用してるとか」
「じゃあオニキス達に話が来たのもクオリアに関係した事だからなのかね?」
「えぇ……それもパールに関する事らしいです」
ガレスの問いにオニキスは難しい顔をした。
「私もこの件に関しては多少きな臭さを感じていますが……パールに関する事だと言われてしまうと、どうしても無視出来ません」
「パールってオニキスの兄弟のクオリア・パールだよな?新月街と、あとはモスクワ上空でも戦ったっていう……」
「そうです。パールはモスクワ上空の戦い以降、ずっと行方不明だったんですが……」
「まさか見つかったのか?」
「いえ、手掛かりがあるという話です」
「そっか、見つかるといいな……行くなら充分に気をつけてな」
オニキスが少し悪戯っぽく微笑んだ。
「……もし私がピンチになったらガレスが助けに来て下さいね?」
「あのなぁ……ホントに気をつけろよ?勿論どこにだって助けに行くが、地球のどんな場所でもひとっ飛びって訳じゃないだ」
「わかってますって、本当に大丈夫ですから。他のクオリアのみんなも居ますし」
「それなら多少は安心か……キャラは濃いが」
二人が話している内に前方にうっすらとジュラルバームの街並みの遠景が見えてきた。