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ハジマリノヒ  作者: うぐいす
星のクオリア
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星のクオリア73

 オニキスは今自分の掌の上に存在する、まだ名前すらない力をどうすればよいのか分からなかったが、それが剣の形をしている以上、とりあえず剣として扱う事にした。

オニキスがルルイエ滞在中にガレスから教わったのは、剣術や流派以前の剣の扱い方の基本中の基本だった。

調べようと思えばネットや本で簡単に知る事が出来る程度の、ごくごくありふれたものでしかないが、それでもオニキスにとってかけがえのないものだ。

剣を両手で持ち、中段に構える、剣先は自分の目線よりも気持ち下くらい。

両足を軽く前後に開いて踏み込みやすい体勢を作り、力が乗りやすい様に振りかぶって縦か斜めに剣を振りぬく。

オニキスは愚直に教わった通りの手順をなぞった。

オーロラよりも高い宙を一筋の虹が駆けると、数多の白光が虹を白に染めつくさんとばかりに殺到する。

白光を避け、弾き、受け流しながら愚直な虹は白い瀑布を切り裂きながら直進する。


「おおおおおおおおおおおおおお!!!」


オニキスの声に他のクオリア達の声が重なる。


「ハッ!無駄な足掻きを!」


 パールがまた盾を展開して攻撃に備えた。

ブラックホールに匹敵する超重力攻撃による消滅すら楽に凌ぎ切ってみせた、あの盾だ。

盾へと肉迫したオニキス達は渾身の袈裟切りで盾を斜めに両断し、さらに大きく踏み込んで返す刀でパールへと斬りかかる。


「盾を斬ったくらいでぇッ!」


 パールが新しく生成した光剣でオニキスの斬撃を受けようと試みるが、逆袈裟の斬撃を受けて光剣が切断されてしまった。


「なんだとッ!?」


 パールは瞬時に身のこなしを変化させて後退した事で致命傷を免れた。

しかし胸部に薄く傷を負ってしまう。


「ちっ!」


一転攻勢のチャンスにも関わらず、オニキスはパールを追撃しようとはしなかった。


「…………パール、こんな事はもう止めて下さい」

「断る!私はこの力で人類を粛清するのだ!」


 パールの発言の意味がわからなかったオニキスが聞き返した。

確かにパールは気位が高く、どちらかといえば近寄りがたい性格だったが、粛清なんて言い出すようなヒトではないと、オニキスを始めとしたクオリア達は思っていたからだ。


「えっ?どうしてそんな事を……?」

「フン、良いだろう。教えてやる……我々クオリアがなぜ生まれたか、知っているな?」


 何故そんな話になるのだろうと若干不思議に思ったものの、とりあえず今はパールの話に合わせる事にした。


「えぇ、戦後の混乱期の治安維持の為……とストーンランド博士に教わりましたね」


 終戦直後の混沌とした無秩序な時代、無政府状態になって悪化した治安、戦争が終わってもどこからともなく湧いてきてヒトを襲い続ける改造生物群モッド……それらに対処する為に必要だった強力な力としてクオリア達は作り出された。


「そうだ……だが考えてもみろ?これは人類の尻拭いでは無いか?何故それを我々がしなければいけない?」

「それは……」

「償いの日が起こし、環境を破壊し尽くし、生態系を遺伝子汚染し、あまつさえ自らの同胞達を90億も殺し尽くした人間達は、あの大人災の責任をとったと言えるのか?」


パールは大仰に両手を広げた。


「罪は既に犯された!ならば人類は責任を取らなければならない!!」

「言いたい事は分かりました……それなら貴方は一体『誰に』責任をとらせようというのですか?かつて戦争をしていた国家や勢力は全て滅んでしまいましたよ」

「責任を取る者が居ないから罪が放置されると??そんなものは到底納得出来ない!!責任者が居ないならば罪の償いは現在の人類全員で行うべきだ!」

「一体どうやって……」

「七大都市を全て制圧し、全人類の自由意志を剥奪する!今日から人類は誕生から死亡まで全てを管理された家畜となって生きてもらう!そうやって生き続けて償いの日を起こした罪を償い続けるのだ!この力があれば、それが出来る!」


 パールの言い草にオニキスは絶句した。

ある程度言いたい事はわかったが、それにしても何でもやり過ぎだ。

だがそれと同時にパールらしいなとも思った。

つまりパールという人物はある種の潔癖なのだ、自分にも他人にも厳しく、納得出来ない事には絶対に自分を曲げない。


(止めるにはやはり戦うしかありませんか……)

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