星のクオリア55
初めて見る武器工房の内部にオニキスは興味を抑えられず、思わずキョロキョロと周囲を見回していた。
八百にとってはありきたりな仕事道具が並んでいるだけの日常の風景だったが、オニキスはまるで初めて博物館に来た子供の様に目をキラキラとさせている。
「わぁ~……」
八百に案内されたオニキスは武器工房の内部を通り抜けて、こじんまりとした応接室へと通される。
「その様子だと、武器工房を見るのは初めてかい?」
「ええ、とても……なんというか、新鮮で面白いです」
「そう言ってもらえると、この子達も喜ぶさ」
「……この子達?」
「ああごめん、この武器たちの事さ……自分で作った武器だからか、なんか子供みたいに感じちゃってねぇ」
ヤオは誤魔化す様にタハハと笑う。
オニキスに武器を作る者の気持ちはわからなかったが、それでも自分が出来ない事が出来るヤオに対して敬意の様な感情が胸に湧き上がったので、素直にそれを伝える事にした。
「いえ……なんというか、素敵だと思います」
「照れるからあんまり持ち上げないでくれよ……あ!ちょっと色々準備してくるから、その辺で適当に寛いでてよ!」
照れ隠しなのか、ヤオは逃げる様に応接室から出て行ったが、やがてヤオはティーセットを持って応接室へ戻って来た。
その間、オニキスは応接室に飾ってある豪華な装飾の武器や鍛冶屋の大会のトロフィーや賞状をを眺めていた。
「ごめんねーお待たせしちゃって」
「あ、どうかお気になさらず……」
二人が椅子に座り腰を落ち着けると、咳払いの後に改めてヤオが頭を下げた。
「んんっ!……この度は本当にありがとうございました、これはほんの気持ちです、どうぞお納め下さい」
そう言ってヤオが差し出したのは贈答用の封筒だった。
そんなつもりは無かったのに、こんなに丁寧にお礼まで用意させてしまって、オニキスはなんだか逆に申し訳ない気持ちになった。
「いえ、そんな、私は当然の事をしたまでで、お金なんて……」
なんだか気が引けてしまって受け取るのを自体しようとするオニキスだったが、元の調子に戻ったヤオがさらりとぶっちゃけた。
「あ、別に大したもんじゃ無いよ。中身商品券だからさ、気軽に受け取っちゃってよ」
「切り替え早っ!?」
結局八百から商品券を受け取ったオニキスはその日の帰り道、早速商品券を使ってコーラをまとめ買いした。