星のクオリア53
海運都市ルルイエに到着してからガレスと別行動になったオニキスは余暇を持て余していた。
休息が必要なのは理解しているが、オニキスは『一人で自由に』というのが苦手だった。
逆に何か仕事をこなしている時の方が気が楽まである。
オニキスには趣味と呼べる様なものも無く……かといって折角ルルイエに来ているというのに余暇を寝て過ごすというのは、流石に無趣味なオニキスでも勿体無い事に思えた。
しかし目的も定まらないまま外に出かける踏ん切りがつかず、なんとなーく部屋でゴロゴロしながらテレビをボーっと眺めていた。
テレビには天気予報が流れていて、向こう一週間は快晴の日が続くとかなんとか言っているのをオニキスは上の空で聞き流していた。
(そういえば一人で過ごす時間というのも、久しぶりですね……)
思えば最近はずっとガレスと行動を共にしてたからか、こういう風に時間を持て余す感覚というのも久しぶりの事だ。
不思議とガレスと一緒に居た時の自分は、時間を持て余すという事が無かった様に感じる。
(彼と居ると楽しい……のでしょうか?)
そう思った直後に頭に浮かんだガレスの顔をオニキスは慌ててかき消そうとした。
別にそれが嫌という訳じゃなくて、なんとなく反射的に恥ずかしい事の様に感じてしまったから。
(……大事な任務の途中なのに、こんな浮ついた気持ちで任務にあたるなんて許されません……本当にダメ、なんだけどなぁ)
オニキスは熱くなった顔面を抱いていたクッションにぎゅっと押し付けた。
特に理由は無いが、そうすれば顔の熱が鎮まるような気がしたから。
しかし色んな考えが頭の中を無秩序にぐるぐるするせいで、もやもやした気分は一向に晴れそうにない。
しばらくしてオニキスは弾かれた様に飛び起きた。
「よし!気晴らしに私も出かけましょう!そうしましょう!……きっとやる事が無いからこんな事ばっかり考えるんです!えぇ!」
丁度テレビでは『恋人に贈るプレゼント特集』なるものが流れていた。
内容のほとんどはどうでもよい事ばかりだったが、オニキスは『プレゼント』という部分に思う所があった。
「ふむ、プレゼント……そういうのもありますか。思えばガレスにはお世話になりっぱなしですからねぇ……贈り物で感謝の気持ちを伝えるのは我ながらいいアイデアかもしれません」
以前新月街でやったバニーガールのアルバイト代が、まだそれなりにある。
それに持て余していた時間も外出する目的も出来てそれらを効率よく消化出来る……良い事ずくめだ。
「さて、そうと決まれば早速出かけますか」
オニキスは簡単な書き置きを残して外出の準備を始めるのだった。