星のクオリア51
ガレスは街であった少女の荷物を目的地まで運ぶことになった。
丁度予定に穴があいてしまって気持ちが宙ぶらりんになっていたガレスにとっても、何か違う事で体を動かすのは良い気分転換になっていた。
何か問題が起こった時、皆がすぐに気持ちを切り替えれる訳ではない。
問題に対して向き合う前にワンクッションが必要なヒトも多いものだ。
「それじゃあ、よろしくお願いします!えっと……」
「ガレスだ、ガレス・ギャランティス、よろしくな」
「えっと、あたしはアクアマリンって言います!よろしくね、ガレスさん!」
偶然街で出会った見知らぬ者同士……普通ならそんなに話が弾まないのが当然だが、二人はたまたまウマが合ったのか、それともアクアマリンの天性の陽気さがそうさせるのか、それほど長くない目的地までの道中の会話で二人は打ち解けていった。
「へぇ~、ガレスはセカイ中を旅して回ってるんだね」
「旅して回ってるというより、仕事のある場所に行くって感じだなぁ」
「旅って楽しい?」
「案外難しいな……俺の旅は人探しが目的なんだけど……だからといって嫌々旅をしてるって訳じゃないし、かといって楽しい事ばかりでも無いしキツい事も多いけど……」
「けど?」
「……なんだかんだ言って、性にはあってるのかもな」
「私も一回くらい『旅』をしてみたいなぁ……旅行じゃなくて旅!」
「旅と旅行か……どう違うんだろ?そういえばよく考えた事なかったな」
「旅行は遊びに行くのが目的でしょ?旅はもっとこう、おっきな目標の為に遠くまで行くというか……」
しどろもどろになったアクアマリンの言葉でも大体の意味は察したガレスが頷いた。
「なるほどな、そういう意味では確かに俺は『旅』をしてるって事になるな……でもそんなに良いもんじゃないぞぉ~?俺の旅は目的が達成出来る保障も無いし、そうなると徒労に終わるかも知れない」
「……それでもやっぱり私も一回くらい『旅』をしたいなあ」
「じゃあ何を目標にするんだ?」
「それは…………決まってないケド」
「ははは、じゃあ先ずは『自分探しの旅』だな」