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ハジマリノヒ  作者: うぐいす
星のクオリア
140/179

星のクオリア45

 真紅のティラノサウルスに変身したガレスがオニキスを背に乗せて、ドスンドスンと大地を踏み鳴らして猛進する。

目的地はアメジスト本体がいる丘の上だ。

それを迎え撃つのは、地上と空に覆い尽くすクオリア・アメジストの造り出した分身人形達の大軍勢。


「ギャオオオオオオオン!」


 ガレスが一鳴きして首を大きく振り上げると、パイクの密集陣形で応戦していたアメジスト歩兵達が成す術無く豪快に吹き飛ばされる。

ガレスの身体に何本かパイクが刺さるが、その程度の攻撃ではガレスの足が止まる事も速度が落ちる事もなかった。

身体に刺さったパイクを気にも留めず、ガレスは兵隊達を強引に掻き分けて突進する。


 今度はハルバードを装備した騎兵達がガレスの周囲を取り囲んで進行を阻もうとするが、勿論そんな程度では攻撃は通らず妨害にすらならない。

騎兵の内の何人かが巨大な恐竜の足に蹴り飛ばされて落馬し、無残に砕け散った。

次に襲い掛かって来たのは小型の竜やハーピーの形をした人形達の飛行部隊だ。

ガレスは現在ティラノサウルにプロモーション(変身)している為、構造的に背中から迫る敵に対して無力なのだが、そこは背中に騎乗しているオニキスの出番だ。

アメジストの飛行部隊はオニキスの重力球を撃ち込まれて迎撃されている。

今や二人は走行する要塞になっていた。


「今の所上手くいっていますが……それにしても数が多い!!でもアメジストの力はまだこんなものではない筈です」


 オニキスの考えたとおり、やはり一筋縄ではいかないらしい。

前方から身長30メートル程もあろうかという巨人兵の群れが横一列に並んでタワーシールドを構えながら進軍してくる。

迂回する時間は無いが、かといって簡単には突破出来そうに無い。

オニキスはガレスの背中を軽く叩いて、声を掛けた。


「ガレス!私が応戦しますので、囲まれない様に走り回って下さい!」

「ガオオオン!」


ガレスは返事の代わりとばかりに短く吼えるとオニキスの指示通りに走り方を変えた。


(アメジストの能力で造り出した兵隊に再生能力は無い……ならば足を狙えば追っては来れないでしょう)


 巨人兵を全員相手にしていたらオニキスはすぐにガス欠になってしまうだろう。

しかし最小限の力で足だけを狙えば力を温存出来る。

的は大きく狙うのに苦労はしないが、それでもオニキスは慎重に狙いを定めると、進行方向に回り込んで来ている巨人兵の足を狙って30センチ位の重力球を次々に撃ち込んでいった。

構えているタワーシールド諸共足が圧壊した巨人が悲鳴の代わりに盛大な土煙を巻き起こしながら転倒する。


「倒れた巨人の横を走り抜けて下さい!」


 オニキスに言われた通りにガレスが倒れた巨人の身体に隠れながら走っていると、別の巨人達が群がって来た。

巨人兵達はそのまま武器を振り下ろしてガレスを攻撃しようとしている。

巨人兵達の攻撃がお構いなしに倒れている味方の巨人兵の身体を粉々に砕くと地面が大きく揺れ、また土煙が盛大に巻き起こった。

ガレスは土煙に紛れながら巨人兵達の間を縫う様に走り抜けた。

巨人兵達は元々そのサイズの所為か動きの精度が悪く小回りが利かない。

それに加えて巻き上がる土煙で視界が悪くなった事が重なってしまい、同士討ちが起こってしまっていた。

この機を逃すまいとガレスは一人目の剣を蛇行して避けながら走り抜ける。

それでも向かって来る巨人兵は背中に乗っているオニキスが最小限の攻撃で迎撃する。

進行方向に居る巨人兵達の集団の足元に地面を抉る様な形で重力球を炸裂させると、バランスを崩した巨人兵達がドミノ倒しになった。

巨人兵達の包囲網に明らかな隙が出来た。


「跳んで!」

「ガオオオオオン!!」


 オニキスが短く指示を出すとガレスは力一杯に跳躍し、バランスを崩し片膝をついている巨人の膝の上に飛び乗った。

巨人の膝の上に着地にしたガレスは、今度は巨人の肩に飛び移ると、そのまま駆け上がって肩から背中側へと抜ける。


「やった!!!」


 前方を見るとアメジストの本陣のある丘が大分近づいて来ているのが見える。

アメジストも遂に兵隊も補充が利かなくなったのか、敵の数も少ない。

しかしガレスがいち早く危険を感じ取り、警告するように喉を鳴らした。


「グルルルルル……!!」

「ガレス?」


 次の瞬間、何かが地面の中から跳び出してガレスに襲い掛かって来た。

ガレスは襲撃者を尻尾で打擲し、振り払う。

一瞬反応が遅れたオニキスが振り払われた襲撃者を見る。


「モグラ!?」


 それは全長3メートルはあろうかという巨大な紫色のモグラだった……どうやらこれもアメジストの造り出した兵隊らしい。

最初の一匹を皮切りにモグラは次々と地面から飛び出してガレスに踊りかかった。

奇襲である事に加えて数が多かったので回避が間に合わず、何匹かがガレスの身体に爪を立ててしがみ付いた。

ガレスの動きが鈍った所を見計らう様に前方の地面が陥没すると、砂の無い平原に急に流砂が現れた。

流砂の中心には特徴的な大顎が見えている……今度はデカいアリジゴクが姿を現した!


「ああもう!次から次へと!」


 オニキスが周囲に強力な斥力を発生させると、ガレスの身体に張り付いていたモグラ達がスーパーボールの様に一斉に吹き飛ばされた。

モグラの爪で傷ついたガレスの身体を見て、オニキスが心配そうに声を掛ける。


「……ガレス、大丈夫ですか?」

「グオオオッ!!」


 恐竜の状態ではヒトの言葉を話せないガレスだったが、その声色は未だに活力に満ちていて『まだまだやれるぜ!』と健在をアピールする様に短く吼えた。

オニキスは幾分かその様子に安堵しながらも激励する。


「ここまで来ればもう一息です、もうちょっとだけ……頑張って下さい!」


 オニキスはオレンジ色の結晶羽を自分の背中から分離すると、それをそのままガレスの背中周辺に翼の形に再配置した。


「一気に行きましょう!飛びますよ!」

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