表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハジマリノヒ  作者: うぐいす
星のクオリア
124/178

星のクオリア29

「パール……一体どういう事か聞いてもいいかい?」


 怯んだパールに追撃しようとしていたプリデールのナイフを涼しい顔で受け止めながらターコイズは言う。

性格や思想はともかく、パールの強さ対してだけは信頼を置いていたターコイズはパールが苦戦した事に内心驚いていた。

おそらく目の前に居る桃色のドレスの女のせいだろう。

先程スゥが言っていたターコイズよりも速い奴というのは彼女の事らしい。

もしそれが本当なら、パールが後れをとるのも納得というものだ。


「ターコイズ……そちらは片付いたのですか?」

「いや全然?……思わぬ妨害にあってしまってね、さっさと逃げて来たよ。それより君の窮地を救ってあげたんだ、礼の一つでも欲しいものだけどね?」


 パールからの問いにターコイズは全く悪びれた様子も無く答える。

ターコイズとしてもパールを圧倒できる桃色のドレスの女のスピードがどれ程のものなのか気にはなったが、そんな事でいちいち仕事を支障を来たす程、彼は向こう見ずな性格ではない。


「君も失敗したというなら丁度いい……ここは一旦退こう」

「なんだと……私はまだ戦える!」


 それを証明してやるいう風にパールが光剣を生成しプリデールを攻撃するが、当然プリデールに当たらず光剣は虚しく空を切った。

攻撃を回避したプリデールはそのまま距離を取って様子を見ている。


「そうだね、僕達はまだ戦えるし、それに負けてもいない……けれど仕掛けるタイミングを見誤ったのは事実だよ、ここでは邪魔が多すぎる」

「だが!!」

「君は自分の我儘で任務を失敗させるつもりかい?そんなのは相当みっともないと思うけどね?」

「クッ!……わかりました、今回は退きましょう」


 ターコイズは改めてプリデールへ向き直り慇懃無礼に、何よりも優雅に深くお辞儀した。


「そういうことだ美しいお嬢さん、縁があったらまた会おう……僕より速いという君の技、興味はあったのだがね?」

「なにそれ……あぁ、スゥが何か余計な事を言ったのね?」

「それではさらばだ」


 パールとターコイズは眩い閃光に紛れて姿を眩ませた。

二人が去った後、ガレスがスゥに肩を貸してもらいながらオニキスとプリデールの元へ歩いてきた。

無事なガレスの姿を見たオニキスはパッと表情を明るくして彼に駆け寄ると、自分の身体の損傷も忘れてスゥからガレスの体を支える役を引き継いだ。


「よかった、無事でしたか……!」

「まぁな、これくらいなんて事ないさ……イテテテッ!」


 気が抜けたせいか、今頃になって戦いの傷が痛みだしたガレスが顔をしかめると、オニキスも釣られて不安げな顔になる。


「……っ!!全く、あまり心配させしないで下さい!」


その様子をプリデールとスゥがニヤニヤしながら見ていた。


「オイオイ……イチャつくのは後にしてくれよ」

「……見てるこっちが恥ずかしくなるわ」


二人の冷やかしをオニキスとガレスは顔を真っ赤にして否定する。


「わ、私はあくまで仲間として彼の体を心配して……!!」

「あ、いや、これは、その……そういうんじゃ無いんだ!!」

「オーケーオーケー!わかったわかった、そういう事にしとくぜ。ご・ち・そ・う・さ・ま」


 不服そうな二人はさて置き、スゥが肩をすくめながら仕切りなおす。


「……さて、アンタ達の処遇についてだが……ん?ちょっと待ってくれ」


 スゥが話をしようと思った矢先にスゥの携帯電話に着信が入った。

この場にいる三人には詳しい会話の内容はわからなかったが、約一分程度の通話の後、スゥは電話を切った。


「良かったな、アンタ達はお咎め無しだってさ……イェンさんが手を回してくれるらしいぜ?なんかついでにアタシにも『アコギな商売すんな』って釘刺されちまったが」


 何か多少の罰は止むを得ないかも知れないと考えていたガレスは安堵した。

国という概念が無い巨大なスラムである新月街における生活インフラというものは、そのエリアを統治するマフィアの統治能力を示す分かりやすいパラメーターであるのと同時にマフィアの看板でもある。

汚くて不便な街は稼ぎも悪いし、他のマフィアから見える明確な弱みとなるので、新月街のマフィアは自分達が統治している場所のインフラを特に気にするのだ。

だからこそのガレスの安堵なのだった。


「ホントかよ!?……でも何であの人が?」

「お菓子のお礼だとよ……じゃ、アタシ等は帰るぜ。他でもないイェンさんの頼みだ、料金の方もまけといてやるよ」


そう言ってスゥとプリデールはあっさり帰って行った。


「一時はどうなる事かと思いましたけど……なんとか、なりましたね……」

「イェンさんに助けられっぱなしだったな……お菓子のお礼にしてはデカ過ぎるぜ」


 気が付けばもう夕方も近くなっていた。

夜行性のモッドに襲われる危険性が高くなる為、相当追い詰められている様な状況でもない限り、夜間に街の外に行くのは悪手だ。


「……いてて、こりゃ今日の出発は見送りだな」

「身体……ホントに大丈夫です?」

「そんなに心配すんなって!こんくらいなら寝れば明日には良くなってるさ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ