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ハジマリノヒ  作者: うぐいす
星のクオリア
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星のクオリア26

 プリデールとオニキスが会話をしていた間、パールは呆れる果てて見てられないと目元へ手を当てて大きな溜息を吐いた。

やがて呆れはふつふつと怒りへと転じていき、怒りで震える声は徐々に大きくなり怒号になった。


「仲間を裏切ってメタトロンを盗み出し、あまつさえこの期に及んで他者に見苦しく助けを乞うとは……恥を知れクオリア・オニキスッ!!」

「貴方に何と言われようと、私は私の使命を全うします」

「黙れ、クオリアの恥さらしが!!」


 オニキスの反論が更に怒りに油を注いだ結果となりパールは激昂した。

しかし大きく息を吐いた後、今度は一転して底冷えのする様な冷たい声で言った。


「もういい……クオリアとしての誇りを失った貴方と交わす言葉はありません」


 パールが手を翳すと、オニキスとプリデールの二人に向かって一気に光剣が殺到する。

それをオニキスが重力球で迎撃する。


「来ましたよ!」

「ええ」


今、確かに返事があった筈なのに……いつの間にかプリデールの姿はオニキスの隣から消えていた。


「あれ?プリデールさん……?」

「……ねえ?」

「うわぁい!!」


 誰も居ないと思い込んでいた何もない場所から突然プリデールの声がしてのでオニキスは盛大にビビった。


「貴女は今まで通り戦って……私はまた奇襲を仕掛けるわ」

「え、えぇ。わかりました」

「一応聞くけど、貴方達でもバラバラにしたらもう動けないわよね?」

「それはそうですけど……なんでもないみたいな言い方で恐ろしい事言わないで下さいよ……」

「あら、ごめんあそばせ」


 そういってプリデールの気配は消えた。

先程言っていた様に彼女は奇襲の為に何処かに潜伏しているのだろう。

プリデールの存在を気取られないようにオニキスは平然を装って再びパールの方に視線を戻した。

するとパールの背後の空間にかすかな揺らぎの様なものが見えた。

パールもまだプリデールの存在には気付いていない様子だ。


(やれる……!!)


しかしオニキスの微妙な表情の変化がパールに攻撃を悟られせてしまった。


「二度も同じ手が通じるか!!」


 パールは閃光弾の要領で強烈な光を放ち、それと同時に背後に光の盾を形成すると攻撃に備えた。

もう少しという所でプリデールのナイフは光の盾に阻まれてしまう。

パールの光剣での反撃を軽やかに躱して、プリデールはオニキスの横に戻ってきた。。

プリデールは普通に『移動』しただけなのだが、あまりにもその速度が速い為、オニキスの目には瞬間移動の様に見える。


(相変わらず化け物じみた身体能力ですね……)


 オニキスが内心肝を冷やしていると、プリデールは少し不満そうに口を尖らせた。


「もう少しだったのに……わかってるわよね?今、貴方のせいでタイミングを悟られたのよ?」


 オニキスは案外子供っぽい顔で怒るプリデールに困惑したが、とりあえず謝っておく事にした。


「すみません……あ、そうだプリデールさん、これを持っていて下さい」


 そう言ってオニキスがプリデールに何かをパスした。

プリデールはパールから目を逸らさないまま、それを片手でキャッチした。


「なにかしら……うわっ、指だわコレ。もしかしてケジメってやつかしら??別にそんなに強く責めたつもりじゃないのだけれど……」


 オニキスのものと思われる黒い人差し指を受け取ったプリデールは口では驚いている風だったが、相変わらず表情筋は動いてなかった。


「私の身体の一部です、それを持っていれば私の能力から貴方を護ってくれます……私も全力でサポートしますので、一気に決めましょう!」

「わかったわ」


 プリデールの助力というチャンスを得たオニキスは、全力で能力を使用する事で早期決着を狙い、街への被害を抑えようと考えた。

オニキスは目を閉じて集中し、自らの能力名を静かに口にした。


「グラビティ・オニキス……!」


 クオリア達は自分の能力名を声に出して唱えながら能力を使用する事で、初めてその力の全てを解放する事が出来る。

全てというのはつまりコア以外の全身を能力を使用する為の燃料として消費するという事であり、もし失敗すれば一転して危機に陥る諸刃の刃と言える。

そこまでしなければクオリア・パールを相手に早期決着なんて到底無理な話だ。


「させません!」

「……それはこっちの台詞」


 パールの光剣がオニキスへ殺到し能力の使用を阻まんとするが、光剣はプリデールに弾かれてオニキスまで届かない。

結果、オニキスの能力は無事発動して、周囲の重力が一気に増した。

パールが最初に倒壊させたビルの瓦礫や破片が地面でひしゃげて乾いた音を立てながらクシャっと潰れる。

オニキスは橋を中心とした周囲一キロメートルの範囲内の重力を倍加させて、パールの移動能力を奪うつもりの様だ。

完全では無くとも、ある程度パールの動きを封じる事が出来れば、あとはプリデールがやってくれるだろう。


「これは……貴方って凄いのね」

「ありがとうございます!でもそれはいいですから、今の内に早く!」


 オニキスの重力倍加はパールに効果覿面だった。

重力の変化によって、パールはどうしても動きがギクシャクしてしまって、光剣を上手く飛ばせないでいる。

逆にプリデールは先程渡されたオニキスの指のおかげか、それ程の影響は受けていない様に見えた。


「……小賢しい真似を!!」


 プリデールを迎撃しようと試みるパールだったが、ただでさえ超人的な身体能力を有する上に重力の影響も手伝ってプリデールの接近を止める事が出来なかった。

プリデールのナイフ、ブラックロータスが帯電し淡く発光し、必殺の一撃を放たれるのを待っていた。


「ヒト風情がぁッ!我らクオリアに敵うものかよッ!!!」


 パールも余力は十分に残していたらしく、自身とプリデールの間に巨大な防壁を構築し防御した。

先程プリデールの斬撃を受け止めた盾とは比べ物にならない強度を持つその防壁は、しかし青白く光るプリデールの斬撃で呆気なく両断されてしまった。

パールは防壁を展開した左手の指が斬撃に巻き込まれて切り飛ばされ、そのまま胸部に深い傷を負った。


「……貴方の方こそヒトの事、甘く見過ぎなんじゃないかしら?」

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