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ハジマリノヒ  作者: うぐいす
星のクオリア
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星のクオリア24

 パールとオニキスの戦いは一進一退の攻防だった。

もうすでに数百を超える数の重力球と光剣が相殺していたが、それでも両者共に決め手を欠いている状況が続いていた。

中遠距離を得意とする二人の戦い方は似ている所があり、だからこそ拮抗しやすく戦いが長引きやすい。

しかし二人には致命的な相違点があり、それが問題だった。

オニキスの重力操作は敵の防御力を無視する事が出来る絶対的な攻撃力を有しているが、その分クオリア達の中で一番燃費が悪い。

つまり戦いが長引けばパールよりも先にオニキスがガス欠するのは目に見えているのだ。


(短期決戦といきたい所ですが……やはりパール相手では一筋縄では行きませんか……)


 オニキスは焦っていた。

パールを倒した後でターコイズとも戦わなければならないというのに、手間取っていては勝ち目が擦り減っていってしまうだけだ。

それにターコイズを抑えてくれているガレスが、いつ倒されてもおかしくはない。

多少頑丈とはいえガレスはただのヒトであり、ターコイズはクオリアなのだ。

一対一の今でさえ拮抗している状態だというのに、二対一になってしまえばオニキスに勝機は無い。

その焦りからかオニキスは今ひとつ集中を欠いていた。

そんな時、橋の向こう側からガレスの悲鳴がオニキスの耳に届いた。


「ガレス!?」


 ほんの一瞬だったが、その一瞬の隙を見逃す程クオリア・パールは甘い相手では無かった。


「戦いの最中に余所見をするなッ!」

「ぐっ!?」


 一瞬意識が逸れた隙を突かれ、パールの接近を許していまったオニキスは光の剣で胸部を横一文字に切り裂かれた。

さらにそこへ追撃するべく何十という光剣が殺到しオニキスを追い詰める。

一瞬遅れたもののバリアを展開して耐えていたオニキスだったが、パールの光剣がオニキスのバリアのキャパシティを上回るとバリアが弾け飛び、その衝撃でオニキスは吹き飛ばされた。

パールはその機を逃さずキッチリと追撃を行い、オニキスが大量の光剣に呑み込まれた。

光剣が輝きを増していき、光が解放される。


「うわあああああああああ!」


 閃光から一瞬遅れて盛大な爆発音が続き、新月街を揺るがす。

土煙が晴れると体のあちこちに刺さった光剣で地面に縫い付けられた状態のオニキスが見えてきた。

勝利を確信したパールがオニキスを見下ろすような位置に降り立つと、侮辱を込めた口調で言った。


「実に無様ですね……しかし裏切り者の貴女には相応しい末路です」


 パールはオニキスへ止めを刺す為に一際巨大な光剣を生成した。

それは剣というよりも、罪人を裁く為の断罪の十字架と言った方が正しいかもしれない……パール的には。

パールの攻撃により体のあちこちを光剣で貫通されこそしたものの、幸いオニキスの身体は五体満足で欠損も無い。

オニキスはまだ戦える。


「我等の力はこんなものでは無い筈……いい加減に全力を出しなさい。クオリア・オニキス」


巨大な光の十字架を頭上に掲げながらパールが言う。


「私達クオリアがこんな街の中で全力を?正気ですか?そんなことをすれば街に被害が及びますよ!私達の力はヒトを護る為のものでしょう!?」

「ハハハハハッ!笑わせてくれますね!……では貴方は何ですかオニキス?我々を裏切ってメタトロンを強奪する事に正義があり、それが人々の為になる事だと?」

「それは……っ!」

「それにここは……新月街は薄汚い犯罪者共の巣窟……人々の為と言うのなら、むしろ滅ぼした方がセカイの為になる!!」


 そう言うとパールは掲げた十字架にさらに力を込めて巨大化させた。

それは何人巻き添えになろうと知った事かというパールの意思表示に他ならない。


「正気ですかパール!?」


 確かに新月街を支配しているのはマフィアだしパールの言うとおり犯罪者も多い。

しかしだからと言って一方的に暴力を行使する様な真似をオニキスは容認出来なかった。

短い間ではあったが、確かにオニキスはパールが薄汚いと言い捨てたこの街の人々にお世話になっていたのだ。

パールは容赦なくそれらを吹き飛ばそうとしている。


(仕方ありません、上手く出来るかわかりませんが……やるしかない……!!)


 追い込まれたオニキスは覚悟を決めてパールの攻撃を迎え撃つ。

オニキスは街を護る為に力を使うつもりだが、それでも少し加減を間違えばパールの攻撃の防ぐどころか被害を倍加させかねない。

しかしだからといって自分の使命も街のヒトビトの安全も、オニキスは諦める事は出来なかった。

ならばもうやるしかない。


「グラビティ――――っ!?」


 その時、パールに異変が起こった。

突然、何の脈絡も無くパールの胸部から黒い刃が生えたのだ。

そうとしか見えなかった。


「なっ!?」


パール本人は勿論、それを見ていたオニキスですら訳が分からず絶句した。


「……降りて来てくれて助かったわ、高い所まで跳ぶのは面倒だったから」


 パールでもオニキスでも無い女の声が、パールの背後から聞こえた。

そして花の香りと共に桃色のドレスを纏った女性がパールの背後の虚空から滲み出る様に姿を現した。

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