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ハジマリノヒ  作者: うぐいす
星のクオリア
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星のクオリア17

 食事の後、ほろ酔い気分でホテルへ向かったガレス達は、受付嬢の一言で一気に酔いが醒めた。


「お部屋はご一緒でよろしいですか?」

「……えっ?」


 オニキスが女性で自分が男だという当たり前の事を、ガレスは今の今まですっかり忘れてしまっていた。

二人が夜を共に過ごすのは初めてではないものの、今までは野宿だったのでホテルでは意味が全然違う。

あろうことかその当たり前を、受付嬢に面と向かって言われるまで失念していたのだった。

当然部屋は別にしたいが、困った事に懐具合に余裕が無い。

オニキスと出会ってからというもの突然の出費が多すぎたし、元々ガレスは一人旅のつもりで路銀を計算してた為、それは仕方ない事だ。


「えっ!?あー……その……」


 考えが纏まってない所に話しかけられたせいか、変にしどろもどろになってしまう。

そんなガレスの心の内などつゆ知らず、代わりにオニキスが答える。


「?……一緒でお願いします」

「……なあ、いいのか?こんなむさい男と相部屋で……その、貞操観念というか……」


 らしくないガレスの態度を気にした様子も無く、オニキスは不思議そうな顔で首を傾げた。


「……ガレスは私にいやらしい事をするつもりなんですか?」

「いや!決して!そんな事は絶対しないぞ!?」


 オニキスは普段のガレスとは全く違う思春期の少年の様な様が可笑しくて、くすくすと笑った。


「なんだよ、せっかくヒトが気を使ったってのによ……!」


 ガレスはそれが面白くなくて、受付から部屋に到着する頃にはすっかりぶー垂れていた。

しかし彼に更なる試練が襲い掛かる!なんと部屋に備え付けられたベッドが一つしかなかったのだ!

ちなみに枕はちゃーんと二つある!


「じゃあ、俺は床で……」

「ダメです」


 色んな意味で腰の引けてるガレスの提案を、オニキスがバッサリと切り捨てた。


「なんでだよ!?」

「宿代は貴方のお金です、貴方がベッドを使うべきです」

「いやいやいや!女の子を床に寝かせれるもんかよ!」


 お互いにベッドを譲り合っていた二人だったが、どちらも折れる事は無かった。

昼間はエメラルドとの戦いもあったし酒が回ってきて眠くなってきたのもあって、とうとうガレスが負けたと言わんばかりにベッドに大の字で倒れこんだ。


「わかったよ……もう好きにしてくれ……」


 それからはオニキスが先にシャワーを浴びて、薄い桃色のバスローブ浴室から帰ってくるとベッドにちょこんと腰掛けた。


「次どうぞ」

「あぁ……」


うとうとしていたガレスは、大儀そうに身体を起こすと浴室に向かった。


(……オニキスの匂いがする、クオリアって体臭あるんだな……ん?)


 眠りかけの頭でなんとなくそんなことを考えながら脱衣所で服を脱いでると、ポケットから転げ落ちた物があった。

ガレスがそれに気付いて指で摘んで拾い上げると、それは昼間にオニキスからもらった真っ黒い結晶だった。


「おーい、オニキスー昼間に渡してくれたこの結晶って返した方がいいのか?」


 ガレスがシャワーを浴び終わって部屋に戻って来た時、昼間オニキスから手渡された黒い結晶を手に持ってやってきた。


「しっかしクオリアってのはホント不思議だよなあ」

 

ガレスが何の気無しに結晶を手で弄ぶと、なぜかオニキスが反応した。


「んっ……!」

「んっ?」


ガレスは何かを確かめる様に再び手の中の結晶をにぎにぎしてみる。


「きゃっ!……ちょっと止めて下さい!」

「ええっ!?す、すまん……?」

「その欠片は特別製なんです。それがあれば私がガレスに力を働かせる事が出来ますし、逆に私の能力の影響を軽減出来たりもしますので、これからも貴方が持っていて下さい」

「わかった……けど、さっきの反応とどういう関係があるんだ?」

「その欠片は私の一部としてまだ生きている状態なんです……つまりその、感覚もある程度残ってる訳でして……だからあんまり変な触り方したら、ダメなんですからね?」

「あ、あぁ、わかった……気を付けるよ」


 その後、疲れていた二人は横になるとすぐに眠ってしまったので特に面白い事は起こらなかった。


・・・


 翌日、ケテルを後にした二人はルルイエに乗る為の次なる中継地、新月街へと向かっていた。

その道中ガレスが世間話の中で何気なく聞いた。


「もしかしてクオリア同士って結構仲良かったりするのか?」

「ええ、皆個性的なので相性の良し悪しはありますけど……特に不仲とかはないですね」

「そうなのか、どおりで……」

「なんです?」

「いや、容赦なく襲ってくる割に敵意というか殺意が薄いなと思ってたんだ」

「私達クオリアシリーズは同じ隕石……メタトロンから生まれた兄弟みたいなものなんです」


 そこまで言ってオニキスが表情を曇らせた。

理由は不明だが彼女はその仲の良い兄弟達を裏切っている事になる、暗い表情になるのも当然と言えた。

ガレスは自分の不用意な発言を反省した。


「……すまん、事情を知らないとはいえ辛い事を聞いてしまって」

「……いえ」

「えーっと……あっそうだ!クオリアって全部で何人位いるんだ?」

「……現在で実戦投入されているのは私を含め九人です」


オニキスは思い出すように指折りしながら言った。


「まずは私、そして既に倒して封印してるのがルビー、アンバー、エメラルド」

「ガレスがまだ会ってないのはパール、アクアマリン、サファイア、アメジスト、ターコイズ……ですね」

「知ってる範囲でいいからさ、俺がまだ知らないクオリア達の能力とか教えてくれ」

「そうですね……まずはパールですが、彼女は光を操るクオリアで、主に光線で敵を攻撃します」

「ふむふむ」

「次にターコイズですが、彼は雷を……」

「うーん、電池要らずで便利そうだなぁ」

「……ちゃんと聞いてますよね?」

「大丈夫だって、ちゃんと聞いてるから!」


 二人はしばらくの間、まだ見ぬクオリア達の話をしながら旅を続けるのだった。

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