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ハジマリノヒ  作者: うぐいす
星のクオリア
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星のクオリア5

 オニキスと別れた後、ガレスは適当に安いカプセルホテルをとってチェックインを済ませた。

今後の予定が多少ズレてしまったが、ガレスは今日オニキスを助けた事を後悔していなかった。

カプセルホテルの共用シャワーで汗を流した後、ヒト一人横になるのがやっとの狭いベッドで寝転がって携帯端末を弄っていると、緊急速報のアラームが流れた。

片手で端末の画面をスライドさせてニュースを確認してみると、今居るビッグスカボロウから平原と山を一つ越えた所にある鉄血砂漠で原因不明の火災が発生しているらしい。


(砂漠で、火事……?)


 鉄血砂漠は砂が大量の鉄分を含んでおり、酸化した鉄のせいで真っ赤な色をした砂漠だ。

しかし鉄を含んでいようが砂漠は砂漠、燃える様な物は何一つとして周囲に無いはず。

原因が良く分からない災害が起こるのは特に珍しい事では無いが……今日のガレスに限っては一つだけ心当たりがあった。

先程別れたミステリアスな少女、オニキスだ。

彼女を最初に発見した時も『周囲は原因不明の火の気があった』だからこそオニキスの事を焼死体だと勘違いしてしまった訳だが。


(まさかな……いや、しかし……!)


 ガレスの胸が嫌な予感でざわついた。

オニキスを見つけた時、手足の無い彼女は言っていた『クオリアは自分の身体を消費して特殊能力アブノーマリティを使う』と。

ということは、初めて会った時もオニキスは炎を使う何者かと戦った後だろう。


(周囲一体を焼け野原にする敵……果たして俺の手に負える事なのか……?)


 その時、ガレスの脳裏に昼間のオニキスが見せた無邪気な笑顔が思い浮かんだ。

自分でも全く損な性分だとは重々承知の上だが、知り合った人間が危険に晒されているかもしれないというのに、このまま呑気に寝転がっている自分をガレスという男は許せない。


「……俺もつくづく馬鹿だなぁ」


そう一人呟くと、ガレスは手早く支度を済ませてホテルを後にした。


・・・


 日が落ちた赤い砂漠で対峙するのは同じクオリアシリーズの二人。

一人は黒い肌の逃亡者、クオリア・オニキス。

二人目は鮮烈な赤い肌の追跡者、クオリア・ルビー。

ツインテールに纏めた髪が特徴的な、橙色のチャイナドレスを見に纏った背の低い少女だった。

ルビーがオニキスの前に腰に両手をあてて仁王立ちで立ちふさがり、声高に警告した。


「やっと追いついたわ!オニキス!いい加減観念して『メタトロン』を返しなさい!」

「ルビー……見逃してはくれませんか?」


オニキスはルビーと戦うのに抵抗があるのか、乗り気では無い様子だ。


「……だぁーかぁーらぁー!アタシの任務はメタトロンの奪還なんだから、アンタが勝手に持ち出したメタトロンを返せば話は全部丸く収まるのよ!!」


 確かに乗り気ではないらしいが、頑なに要求を拒むオニキスに対してルビーは苛々を募らせる。


「……残念ですが、それは出来ません」


 戦いたくは無いがメタトロンも渡さないというオニキスの態度に、ルビーは自分の頭をガシガシと掻いた。

その様は言う事を聞こうとしない兄弟に手を焼いているお姉ちゃんといった風だった。


「大体なんでアンタは急にそんなもんを持ち出したのよ……!」

「……ごめんなさい、それも言えません」

「ハァ……もういいわ……全く、変な所で強情なんだから……今朝は痛み分けだったけど、今度という今度はアタシも本気でやるからね!」


 そう言ってルビーは中国拳法の構えを取った。

ルビーが気を発すると、周囲に紅蓮の炎が巻き起こる。

対するオニキスは背中に尖った橙色の結晶が連なって出来た羽を展開すると同時に両手にエネルギーを漲らせていつでも重力球を撃ち出せる体制をとった。


「いくわよ!」


 夜の鉄血砂漠でクオリア同士の死闘が始まる。

オニキスは自分の兄弟であるクオリア達との戦いに身を投じて行く事になる。

これはまだその最初の戦いに過ぎなかった。

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