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第135話 順番決め

 黒山と深央が下校した当日の昼休みにて、葵・奈央・深央は第一校舎の裏にいた。

「何か気味悪いね、ここ」

「まあ、だから人はあんま来ないんだよね」

「確かに」

 軽く雑談を交わした後、深央が用事を切り出す。


「それで、順番はどう決めましょうか」

 昨夜、グループチャットで話題にした黒山との下校の当番制。

 その順番についてこれから具体的に決めるところだった。

「とりあえず皆の希望をまず聞こーよ。カブんなければまずはそこだけ決定ってことで」

「そうだね」

「そうですね」

 せーの、と三人が希望する順番を述べる。


「一番」

「一番」

「一番」


 皆一緒だった。

「……」

 そして、皆一様に黙り込んだ。

「ホントに?」

「ここで嘘吐く理由なんてないでしょう。まさか奈央は実は違うのを希望してたんですか?」

「いや、マジ」

「私もマジです」

「うん、私もできれば一番がいいかな……」

 三人とも簡単には譲らなかった。


「まあ、順番なんて大した問題じゃないですし」

「うん、いずれは回ってくるわけだしね」

「そーそー」

「二番でも三番でもいいんじゃないですか」

「そうだね。深央ちゃんはどう?」

「そうですね……」

 深央・葵・奈央で話し合う。

 表向き順番にこだわらなくてもいいのでは、という流れにはなっているが誰も「私は二番や三番でいいよ」とは言いださない。


「じゃんけんで決めるのはどうですか?」

「え、じゃんけん?」

「わざわざ?」

 そこまでして揉めるようなこと? という雰囲気が会話に生まれる。

「私もどうかな、て思いますけど何かこのままだと決まりそうにないっていうか……」

「うーん……」

「何かねー」

 三人とも、ここまで来ると理解していた。

 互いに順番を早々に譲る気はない、と。

 だからじゃんけんなりクジなりでさっさと白黒付けた方がいいのはわかっているが、たかが「先輩と一緒に帰る順番決め」にそこまでするのは気恥ずかしかった。

 余談ながら岸姉妹は黒山と同じ高校に通うべく、親に頼んで興信所まで利用して黒山のいる高校を探していたわけだが、それでもこのときは妙に踏ん切りが付かなかった(なお、黒山達はその事実を知らない)。


「胡星さんに順番決めてもらうのは?」

 奈央が提案する。

「いや、それは」

「絶対バカにされるよ、それ」

 即座に深央と葵が反対。

 黒山相手だと何でそんなの自分らで決められないのかとツッコんでくるのが目に見えていた。

 そんなの、どう説明しろというのか。

 それに、黒山に順番を一任して納得のいかない結果になったら、クジとかで決めるよりも何か嫌な気分になりそう。

 葵にも、深央にも、そして発案した後に奈央も大体そんなことを考え、没になった。

「んー、それじゃ……」

「じゃんけんってことで……」

「仕方ないですね……」


 結局、そんなどこか消化不良な空気の中じゃんけんで決めることになり、深央が一番、奈央が二番、葵が三番ということになった。



「……というわけで私が最後になりました」

『報告ありがとう。別に頼んでないが』

 とりあえず今日も黒山にメッセージの通話を発信してみた。いつも通り歯に衣着せぬ口ぶりだった。

 さすがに前述の一部始終を洗いざらい話したわけではない。要点をかいつまんで黒山に説明した形だ。

「先輩、今日は深央ちゃんと話したんですよね。楽しかったですか?」

『一人で帰れればな、て思った』

「もう何回も聞いたセリフですね」

 孤独を好むところも変わらない。この調子なら岸姉妹と恋仲になることもあるまい。

「まーもうどうすることもできないんですから。いい加減慣れましょうよ」

『いやこの世の摂理みたいに説いてるけど、お前らがこの下校での当番制とやらを今すぐやめればそれで済む話だからね?』

「あれ、知りませんでしたか? 摂理ですよ、この世の」

『これが⁉』

「では先輩、また明日」

 変にツッコまれる前に通話を切る。さすがに他の先輩(特に加賀見)に対してこんなことをするのは恐れ多いが、黒山ならなぜか躊躇なくできた。

 雛も同じ感じで黒山と接していたのだろうか。……きっと以前の作戦会議みたいな、ざっくばらんな感じだったんだろう。


筆者は今感想、評価ポイント、ネオページの応援チケットが一番欲しい

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