第131話 習慣のように
球技大会の翌日。
加賀見は例の告白をきっかけに男子と交際を始めた。
関係は初めてながら良好のようで、あの無表情だった加賀見が笑顔を見せるようになった。
徐々に男子とデートする機会も多くなり、彼氏が嫉妬しちゃうからと俺と接する機会も次第に減っていくようになり、俺の生活も充実するようになりましたとさ。
……ってなればいいのに。
「何、アンタも私に告白したいことあるの?」
今日も変わらず女子四人が俺の席の近くに集まり会話している。そのときに球技大会での告白をもったいなくも断ったという加賀見をじっと見ていたら、妙な因縁を付けられた。
「俺と関わらないでほしい、という告白はもう何遍もしたつもりだが」
「断る」
一蹴する加賀見。
例の告白においてもそんな断り方してないだろうな。してたら俺にとっては仲間が増えて嬉しいけども。
例の告白なんてどこ吹く風か、加賀見は至って平然と振る舞っていた。
コイツにとっては面識なんて1、2度しかないほぼ他人なだけに、あまり気にならないのかもしれない。
別のクラスだから毎日顔を合わせる心配もないわけだし、なおのこと。
「あ、あはは、それにしても葵ちゃん達も揃って同じ日に告白されるなんて、ビックリだよね」
安達が話題を変える。
何でも先日の球技大会において葵・奈央・深央の一年勢は全員男から交際を申し込まれたのだそうだ。
「まあ、そうですね」
「変わった噂だよねー。告白がまず成功するなんてさ」
「全く。ほとんど交流ない人からいきなりそんなことされても戸惑うだけですよ」
口々に告白されたことへの感想を述べる三人。やっぱこの三人気が合うんじゃないか。
「まあ今回で失敗例が一気に増えたし、さすがに噂も落ち着くんじゃないか」
俺が知ってるだけでも例の噂に則った告白は去年で1件、今年で4件告白が失敗に終わっている。
他の奴らの告白で成功してるケースもあるかもしれないが、有名どころの女子達に宛てた告白がいずれもその調子ならその情報は早く広まりそうだし、やっぱり当てにならないと噂が自然消滅してもおかしくないように思う。
「春野先輩が今年は告白されなかったのは意外でした」
葵が言う。
「あ、あー。私はね」
「コイツが協力してたから」
日高が説明するかと思いきや、なんと加賀見から指摘が。何だおい、やけに乗り気だなこの話題に。
加賀見が俺に顔を向けているのに対し、
「協力、ですか?」
今度は葵から俺に質問が飛ぶ。
「ああ、簡単に言うとボディーガードみたいな」
「粉掛けてくる奴が心折れるぐらいイチャイチャして、て頼んだんだよ♪」
日高、ここで説明入れるのか。
「フ、フリ! あくまでフリだから!」
春野、あんまり大仰な反応するな。
「……へー」
「楽しそうですね」
「僕らも今度頼もっかなー」
一年達のテンションが心なしか低く感じられた。
「せーんぱい。お待ちしてましたよ」
放課後。加賀見よりも、いや校内でも屈指のモテっぷりを発揮してるであろう美少女が俺の下駄箱の近くで待ち構えていた。
「ゴメン、今日はもう時間切れだ」
「さっそく意味不明なこと言わないでください」
「すまん、言い直す、今日はもうタイムオーバーなんだ」
「一部を英語に言い直してどうするんですか」
いや日本語の聞き話しが苦手なのかと思って。現に俺が日本語でいくら関わらないよう要望を伝えても通じない節あるしさ。
「もう何度か一緒に帰ってるんですから慣れてくださいな」
「何でそれが習慣のようになってるのか俺には未だに理解できてなくてな。悪いが説明してくれるか」
「メンドくさいんで嫌です」
ねえ、この子ホントに俺の後輩? 出会って結構早いうちから敬意が全然感じられない態度を取ってきてるんだけど。
「今日はちょっと喫茶店に行ってみますか」
「いや、それはマジで止そうぜ」
「え、どうしてですか。喫茶店にトラウマでも?」
「そうではなく、本当にこの学校の連中の目に付くぞ」
何を今更、なんて思うかもしれないが、下校時に学校の近くで屯するなんて普段よりずっと同校の生徒達に目撃される可能性が高い。
一緒に下校するのはもうしょうがないとしても、その時間はできる限り短縮したいのだ。例えムダな抵抗だとしても。
「うーん……」
葵もさすがに考えている。おお、いいぞ。そのままやめる方向で。あと下駄箱に立ち止まってるのもやめて一旦人目の付かない場所に非難させてくれ。俺オンリーで。
「あ」
「あら」
昇降口でなく、校舎の方から二人分の声が同時に聞こえた。
「ん?」
やけにくっきりとした声音だったので、葵とともに声のした方を振り返ると岸姉妹が立っていた。
……ここって一年用の昇降口だったっけ?
主人公と葵の会話、書いてて楽しい
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