第125話 有名
去年のクラス編成だと加賀見が一組、俺と安達が二組、春野と日高が五組とバラバラに分かれていた。
しかし今年は全員まとめて同じ二組。
したがって基本的には団体が固まって動くことも多かろうと思いきや、
「じゃ、また後でね」
「うん」
「テニス一緒に見に行こー」
春野と日高は同じクラスの友達が他に多かった。
二人はミユマユ以外の友達が出ているバスケの方をこれまた別の友達と一緒に観戦するとの約束があるため、一旦俺達と別行動することになった。
安達と加賀見は元々友達が多いタイプではない。
二人して基本は人見知りであり誰かの紹介で友達をどんどん増やすのが苦手なクチだった。
そういうわけで春野や日高が同じクラスにいる他の友達を二人に紹介しようとしても
「あ、別に」
「お構いなく」
と遠慮しており、春野と日高は休み時間でも時々安達・加賀見とは別のグループとつるむようになった。
ちなみにそのときの安達と加賀見はどうするかというと、二人で固まるのは当然として俺の元へやって来るのだ。
そしてそれは今日も例に漏れず。
「んじゃ、私らは先にテニス見よっか」
「そだね」
「はいはい」
「返事は1回」
「はい」
俺はミユマユと三人での行動を余儀なくされていた。
俺としては、この三人で固まるよりは春野・日高も加えて五人で動いた方がマシだ。
一人きりで過ごせるのが一番いいのは言うまでもない。
しかし、安達と加賀見は大体俺への風当たりが強いというか、強引なところがあるというか、こちらの意思に構わない言動がしばしば。
一方で春野と日高は話し方一つにしても俺への配慮をそれなりに感じ、加賀見の行き過ぎた言動を抑えてくれることも多い。言わば常識人なのだ。
今こうしてミユマユと行動することはなかなかの苦行であり、えも言われぬ不安を感じてもいた。
ひとまず気持ちを切り替えよう。
「あ、ジュース買ってくるか? 俺三人の分買いに行くぜ」
「大丈夫。既に水筒持ってるから」
「私もー」
「じゃあ俺の分だけ買いに」
「なら一緒に行こっか!」
「なぜ?」
「一抜けしようとしてるのわかり切ってるから」
気持ちを切り替えても俺が苦行から解放されることはなさそうだった。
「それともミユか私の分でも飲む?」
ふと加賀見が自分の水筒を俺に向けた。
俺をからかうときにいつも出てくる、不敵な笑顔が今日も炸裂していた。
「え! ちょ、ちょっとマユちゃん……」
安達、その反応はピュア過ぎないか。加賀見と結構な付き合いになるのにまだ慣れないか。
「遠慮する」
「そう」
冷たくあしらうと、加賀見もこれ以上は何も言わず俺に向けた水筒を自分の口元に持ってきた。
所在なさげに立っていると
「あれ、ジュースいいの?」
「何かどうでもよくなった。気が向いたときに買ってくる」
「買うときは私達に言ってね!」
俺を監視する気満々のコイツらに閉口したので、ここいらで話題を変えることに。
「とりあえず座れる場所行くか」
「そだね」
「少し疲れてきたし」
「立ったり歩いたりしてるだけなのに」
「ミユ、それ結構な運動」
「この大会の種目に出る人達が聞いたら怒ると思うよ」
いや、怒らないんじゃない? 鼻で笑うだけで。
「ちょっといきなりな話になっちゃうけどさ」
三人でベンチに腰掛けて間もなく、安達が話を切り出した。
「いきなりだなおい」
「まだ本題に入ってないよ」
「ミユ、ひょっとして転校……?」
「そんな悲しい話じゃないから安心してマユちゃん」
俺や加賀見の冗談をいなしつつ、安達が改めて本題へ。
「奈央ちゃんと深央ちゃん、何か有名みたい」
ほう。とうとう二年の間でも名が広まってきたか。
一年で噂になっていることは葵から前に聞いていたが、俺も葵も岸姉妹がいる手前、休み時間の雑談では特に触れなかった。
だから安達にとっては新鮮だったのだろう。
「リンちゃんも葵ちゃんも有名だし、私達のグループ有名人だらけだよ」
「つまり、お前も有名になりたいと」
「いや、それは特に」
さいで。
「時間の問題じゃないか。そんなグループで一塊になってればおのずとお前らのことも注目されるようになると思うぞ」
あるいはもう既になってたりして。
「それだと黒山君が一番アレじゃない?」
「ウチらのグループで唯一の男子。さぞ目立ちそう」
「それについては常々危惧しているよ」
今のところ俺が他の奴らからカラまれた覚えはないが、いつそうなるかわかったものではない。
「そんな大事にはならないんじゃ」
「それに黒山ならそういうの難なく解決しそう」
「バカ言うな」
現在進行中の障害すらまともに突破できてないこの俺がそんなマネできるか。




