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第122話 納得したモード

 翌日。

 俺は今日も自身のクラスの教室で女子達と会話していた。

 面子は安達・加賀見・春野・日高の同級生四人と、葵・奈央・深央の下級生三人。

 前者のグループだけでも一杯一杯なのに最近は後者のグループとも相手をする羽目になり、それはもうストレスフルな状況だった。胃に穴空いたら訴えてやる。


「そーそー、奈央ちゃんと深央ちゃんに聞きたいことがあるんだ!」

 春野が後者のグループに属する後輩に話を振ってきた。

 そう、春野、いや他の面々の興味の的はナオミオこと岸姉妹だ。

 日高曰く春野は興味のある対象のことをとことん知ろうとする癖があるらしい。

 これからどんどん彼女達のプロフィールを探っていくことだろう。

 持ち前の明るさと親しみやすさを兼ね備えた雰囲気に、岸姉妹も先輩からの質問にかしこまらず

「何でしょう?」

「僕に答えられることならいーですよー」

 と軽やかに受けていた。いいぞ岸姉妹、印象は悪くない。


「中学の頃の黒山君ってどんな感じだったの?」


 春野は俺の期待の裏を行った。

 いや、何だそれは。

 中学時代の話について過去に女子四人と俺との雑談の中で挙がったことはあった。

 そのときに誰からともなく俺の分も聞かれ、

「いや特に変わったことはなかったぞ」

「ホントに?」

「ああ。特に友達らしい友達もいなかったし、基本一人で過ごしてた」

「ふーん……」

 確かそんな感じのやり取りを交わして終わった。

 つまり俺の中学時代なんて変哲のないものだと春野も知っているはずなのだが、ここで改めて俺のことを聞くのはどういうことだろう。雑談だしそのときのことを忘れたのか?

 でも俺が目の前にいるのに他人へ俺のことを聞くのはよくわからん。

 岸姉妹への質問なんだから岸姉妹のことを聞けばいいでしょうに。


 ともあれ、岸姉妹はその質問に答えることに。

「どう、と言われても……」

「今とそんなに変わらないかなー」

 そうだな。俺も今と昔の自分にそんな違いはないと思うよ。

 今も昔も、モブになりたいのは変わってない。

「その変人っぷりも」

「やたらと陰に隠れたがってるところも」

 後者については同意だが、前者については同意しかねるぞ。

 俺ってそんな特徴に上がるほどの変人か? 今のお前らの方がよほど変人だろ。

 あと何で他の女子達もわかるわかるとばかりに頷くのか。君らも岸姉妹から(ついでに俺から)見たら変人の類だかんね?


「二人がこの男と出会ったのってどんなきっかけ?」

 加賀見、なぜそんなことが気になるんだ。

「基本、人と関わらない、部活にも入りそうにないコイツが学年も違う貴女達とどうやって接するようになったのか気になる」

 俺の反応を見て俺が疑問に思ってることを察したように説明してくれた。いやまあ実際は岸姉妹への配慮が大部分だろうけどさ。

「やっぱそうだったんですか」

「中学でも僕ら以外と仲良くしてる様子なかったもんねー」

 岸姉妹との付き合いは短い間だったが、それでもかつての俺の様子は忘れていないようだった。

「先生との出会いですが、先生から声を掛けられたんですよ」

「え」

 葵の表情が余裕の感じられるものから急に別のものへと変わった。

 女子四人も岸姉妹の話を聞く姿勢にやや真剣さが増したように見えた。なぜか。

「二人して暇してたら突然だったよねー」

「確か、俺と付き合っていい女にならないか、とか言ってませんでしたっけ」

「プッ!」

「黒山君……?」

 笑いを堪えるごとく吹き出す日高。

 それホントなの、と確認したげに俺を呼ぶ安達。

 うん、これはダメだ。即座に訂正させてもらおう。


「違う。当時俺は主人公みたいに面白い奴を探してたんだ」

「何それ?」

「それはそれでよくわからない……」

 女子四人と葵が混乱してきたようだが知るか。このまま説明を続けることにする。

「だが俺達の通ってた中学にはそんな突飛な存在は一人として現れなかった」

「それはまあ」

「主人公みたいな人ってそもそも基準が曖昧だし」

「そこで、俺はコイツら双子に主人公みたいな奴になってみないかと持ち掛けたんだ」

 岸姉妹との初対面を端的に説明したところ、

「うん、やっぱ何それってなる」

「何か黒山君ならやりそう」

「らしいっちゃらしいよね」

「ですね」

 さっきのような謎の真剣さは薄れ、周囲は納得したモードになっていた。何だコイツら。


「なあ、それよりコイツらに聞きたいことがあるんだろ。もっとコイツらのことを知ろうとしなくていいのか?」

 さっきから俺の話ばかりだったので促してみる。

「もちろん、奈央ちゃんと深央ちゃんのことも聞きたいな」

 春野がすかさず回答。いや最初に質問してきたの貴女なんですがね。なのに何で貴女から最初にそういう質問しないのさ。

「ええ、構いません」

「いーでーっす」

 となったところでちょうど予鈴が鳴った。

「あ、時間だ」

「すみません皆さん、それでは」

「また明日の業間でお願いしまーす」

 奈央、深央、葵がそそくさと教室から出ていった。

 あれ、結局俺の話だけで終わった?


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