表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

109/138

第109話 双子の主人公

 その二人は、姿がとても似ていた。

 顔つきは同じ形に整っており、髪型も示し合わせたように内側へハネたショートボブ。

 双子というものだろうか。

 テレビにて双子のタレントが揃って出演しているのを視聴したことはあったが、じかに双子を見るのはこれが初めてであった。

 いや、今目撃しているのは二人だけだが、ひょっとしたら三つ子や四つ子でもあるのかもしれない。


 その二人は人気(ひとけ)のない場所でのどかに過ごしていた。

 互いに何か対話するわけでもない。

 休み時間が終わるのを待っているかのようにぼうっと過ごしているように見えた。

 今の状態では主人公として活躍するには到底目立たない。


 でも、双子がともに主人公を張るというのはいいのでは、と思った。

 世の中にはダブル主人公という設定を採用している作品もある。

 文字通り主人公が二人いる形式の作品だが、一人だけよりも見た目がそっくりな人物二人をともに主人公に据えるとインパクトは大きいのではないか。


 主人公の候補として彼女達に目を付けた俺は彼女達の元へと接近した。

 彼女達は近付く俺に気付いて怪訝な眼差しを送ってきた。

「ちょっといいか?」

 そして、俺がそう声を掛けた瞬間により警戒を露わにした。当然と言えば当然の反応か。

「何ですか?」

 二人の少女のうちの一人が敬語で返事をする。

 ちなみにこちらは相手が同級生か後輩であることは自明なので、タメ口でいく。

 さて彼女達への用件だが、初対面の身の上でまどろっこしく経緯から話しても仕方あるまい。


「物語の主人公みたいな存在になることに、興味はないか?」


 ここは最初から本題に切り込ませてもらう。

「「はあ?」」

 二人が揃って呆けた声を上げた。おお、この反応のシンクロぶり、やはり姉妹だな。表情まで一緒だぞ。

「何言ってるの?」

 先程俺の挨拶に答えなかった方……面倒だな。俺から見て左の方の少女なので一旦「左」と呼ぶことにしよう。

 同じく俺から見て右の少女は「右」と呼ぶことにする。

 改めて、左が俺に問い掛けてきた。

 右は俺の方をじっと睨むように注目してくる。

 とりあえず俺の話を聞いてくれるようでよかった。これで二人揃って俺を無視してどっかに行ったらそれで終わりだった。


 彼女達には俺の方の事情を一通り説明した。

 俺が主人公的な存在を欲しているが、現在学校にそのような存在を見出せずにいること。

 そこで、見込みのある彼女達に主人公みたいな立場になってみないかということ。

 それらを背景含めて包み隠さず説明した。

 彼女達はその説明を茶々も入れず聞き通した。

「バッカじゃないの?」

 結果、俺を見下すような笑いを浮かべながらの左の一言。

 まあ、そうだよな。

 主人公を見てみたいからアンタ主人公になってくれなんて話、もし俺が持ち掛けられる立場なら相手のことを詐欺師かもしくは純粋に頭がイカれてるかのどっちかにしか思わないだろう。

 その上で体よく断りその場を速やかに離れたことと思う。

 だが、俺の目の前にいる女子達はその場を逃げず、俺との対話に臨んでいた。

 今俺とじかに受け答えしているのは左だが、右も俺と左の話をじっと聞き入ってるようだった。


 これからどう説得しようかと考えていると、

「ちょっと面白そう」

 右が乗り気な態度を見せた。お?

「え、ウソだよね?」

 左は半信半疑とばかりに右の意思を確認してきた。

「ちょっとだけなら付き合ってもいいかも」

 おお。これは思ったよりすんなり事が進みそうだ。

 ひょっとして主人公になりたい願望が右には前々からあったのか?

「それって途中でやめられますか?」

 とはいえ俺を完全に信用したわけでもないらしい。右は逃げ道があるのか念を押してきた。

「アンタらが不満に思ったり、つまんなきゃいつでも降りていいさ」

 こちらとしても二人が進んで主人公になりたがることが前提だしな。

 そうじゃなきゃ主人公なんて目立つ前提の役など務まるはずもない。

「いや、私は受けるって言った覚えないんだけど」

 左がそう言い終わるか否かのときに、右が左に耳打ちした。

(奈央、私達はどうせまたこの学校からすぐいなくなる。それなら少しでも変わった思い出作るのも悪くない)

「……」

(この男が私達に妙なことをやろうとしても、常に私達二人で行動すれば対処はできるはず。連絡先とか家の場所とか教えなければこの男と縁を切った後も特に問題ないと思う)

 相当な小声で話しているらしく、右が何と言ったのか俺の耳には今一つ入ってこない。

 耳打ちされた左の方は見る見る大人しくなっていった。

「……わかった。楽しいうちは付き合ってもいい」

 そんな形で承諾を得た。

 左は渋々と言わんばかりの様子だが、右はそんな左を見てなぜかニコニコしていた。


「おう。俺は三年の黒山胡星。アンタらの名前を教えてもらっていいか?」

 さすがに左だの右だの直接呼ばわるのは気が引けた。

「……岸奈央。この子の姉。二年生、です」

 左が右の方に顔を向けつつそう名乗った。

 俺が年上であることが確定し、相手も申し訳程度の敬語を使ってきた。

「岸深央と言います。奈央の双子の妹で二年生です」

 右も続いて自己紹介した。

 何か妹の方がしっかりしてそうだな。


岸右きしみぎ

岸左きしひだり

という名前でもよかったかもしれない


感想、評価ポイント、ネオページの応援チケットください

https://www.neopage.com/book/31548897810429600

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
最後の欄外は流石に酷くないですか(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ