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9話 ねぐら

 ドネさんか、明日会って話をする人だ。男達は喧嘩を止め、背筋を伸ばし突っ立つ。あんなに必死に姿勢の良い立ち方をしようとしている人を始めてみたかもしれない。一体何が起きているんだ。


 広場に聖女の一団が入ってきた。その中心に色付きメガネをかけた聖女がいる。仕草、雰囲気から色気が漂うとても妖艶な女性だ。彼女は男たちに微笑みかけ優しく語りかけた。


「喧嘩はいけませんよ、街の人達が怖がります」

「はいっ、ドネ様!!」


 ドネさんに注意されると冷や汗を流しながら素直に返事をする男2人。滑稽な光景に見えるが、男の怯えようからただならぬ状況であることがわかる。解決後、今度は広場の外から大きな声がした。


「酔っ払った冒険者が暴れてるぞー!」


 戦いが日常のこの世界では、血の気が多い人間が多い。毎日のように何処かで喧嘩を見る。日夜魔物との殺し合いをしているんだ、負けん気が強くなるのは仕方がない。妙に納得していると、ドネさんたちが走って現場に向かっていった。気になったので追いかける。現地につき暴れている冒険者に近づき説得を試みるドネさん。


「ハッ、俺は誰だろうがぶっ殺す!」


 しかし話は全く通じず、格闘家の男が殴りかかる。かわしながら外衣を脱ぐ。胸元が大きく開いた服装をしている。目のやりどころに困る服装だ、家族と一緒に映画のセクシーシーンを見てしまった気分。流れるように近くの聖女に服を渡しそのまま反撃。


「ブレッシングヘブン」


 ドネさんがスキルを発動。懐に潜り込み、左の拳で胸部に強打、反動を利用し回転しながら飛び上がりかかとを延髄のあたりに叩きつけた。すると暴れていた冒険者は手を組み、頭を垂れ祈りを捧げたような格好になり動かなくなった。


「祈りなさい、自分が天国へ行けるように」

「こ、このやろう!!」


 4人の冒険者仲間が一斉に襲いかかった。


「クロススリーパー」


 伸ばした腕が青白く光る。突っ込んできた冒険者の首を、アッパー気味に腕をぶつけ刈り取る。3回転した後地上に叩きつけられた。冒険者は十字架を模した形となり仰向けで地面に埋まり気絶している。祈るか仰向けになって冒険者達は全滅。とんでもなく強い。見たところ冒険者たちは強そうな装備を身に着けている。そんな冒険者を一瞬で片付けてしまった。


「私を殺す気はなかったようですから手加減しておきましたよ。まあ数日は体が動きませんけどね、ふふふ」


 外衣を着て去っていくドネさん。暴れていた冒険者達は聖女達がどこかへ連れて行った。来て早々、えらいものを見ちまったな。恐れられている意味がわかった。明日彼女には喧嘩を売らないようにしなくては。


「やっぱ怖いなドネさんは」

「普段優しいからなおさらそう感じるんだ」

「技も強力で、苦しみもがきながら数日間過ごすことになるとか」


 隣の話し声が聞こえてきた。なんだか怖くなってきた。まあ悪さをしにくわけではないから大丈夫だろう。


 宿で一泊して聖女ギルドへと向かった。昨日確認した入口へ。大きな門の前に聖女が2人が立っている。彼女達は門番かな。


「ドネさんの依頼で参りました、銃ギルド所属のキランです」

「お聞きしております、少々お待ちください」


 門兵の1人が中に入っていった。少しして聖女を1人連れ戻ってきた。


「お待たせしました。ギルドの中へどうぞ」


 中に入る。外の広間で聖女たちが修業をしていた。


「遅い! それでは相手の攻撃を弾けないぞ!」


 熱心な指導だ。真剣に拳や蹴りを打ち出す聖女たち。ギルドの建物に入る。銃ギルドとは違い広い場所だ。それどころかうちは廃墟だけど。


 内部も多数の修行場がある。天井から足をつっての訓練、高所で縄一本の場所を渡る訓練、熱した床を歩く訓練。これはいよいよ聖女のねぐらって感じがしてきた。聖女が教鞭を振るっている。ここでは教育もしている。ある部屋では生徒達に水をかける聖女達がいた。


「実際はなかなか助けてもらえない。ならどうするか、自分で解決できるように力をつけるんだ、これが一番!」


 ここでは貴族も平民も関係なしに同じように接する。ギルドの教育を施された聖女はわがままを言わなくなり芯の強い女性に成長するそうだ。むしろ貴族のような上流階級ほど人気があるのだとか。たしかにわがままいっぱいに育っちゃうと、大人になってもそのままだったりするからね。自分の子にはなかなか厳しく接することが難しかったりするものだ。


 随分と歩いたな、3階にある部屋に通された。中にドネさんが居た。


「初めまして、キランさん。話は聞いています。彼女たちとは付き合いが長くてね。大丈夫、秘密にしておきますよ」


 にこやかに挨拶をするドネさん。こちらも挨拶、少し緊張しちゃってるな、声が上ずる。美人だからってのもあるがそれだけではない、底しれぬモノを彼女から感じる。

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