3話 正体不明の黒い物体
名前と星の記号が表記されている。この星は依頼を達成いていくと増えていく。星の数が多いほど、より稼げる依頼を受けることができるが難易度も上がる。最大は星5個。レベルは自己申告制だ。PT組むときに力試しをするから嘘を書いてもすぐわかるため、本当の数字を話すようにしておく。冒険者カード、それと銃ギルドへの地図を貰い冒険者ギルドから出る。
「銃ギルドについて詳しく教えなくてよかったんですか?」
「もし彼が銃使いとして冒険者をやっていくとなると、アレ以上に辛いことが起きるだろう。手荒いが体験しておいた方がいい。辞めるようならそこまでの男だったってだけさ」
「そう、ですかね」
もう夕方だ。ギルドの宿屋で食事をして、部屋に入る。疲れていたのでそのまま寝た。朝起き、朝食を食べ銃ギルドへ向かった。地図を見ると銃ギルドは宿屋から近いことがわかる。遠い場所へは街の中でも馬車で移動するとか。本当に大きな街なんだな。
ギルドに近づいていくごとに建っている家が減り、壊れかけの空き家、鬱蒼とした木々、鳥の激しい鳴き声と、危なそうな雰囲気が漂ってくる。この辺りは怖いな、本当に街の中なのかと疑ってしまうほど。
目的地に到着。そこには入り口に小さな小屋が1つと、廃墟になった屋根のないお城が。本当にここか? 地図を見直すがここで間違いなさそうだ。小屋の中を見ると女性が1人いるのがわかった。どうやら受付のようだ。
「キラン様ですね、冒険者ギルドから聞いております。受付のメジュです、よろしくお願いします」
もうじき担当者が来るから廃墟内で待っていてくれとのこと。小屋を出て廃墟に入る。苔むした壁、壊れた柱、自由に伸ているツル。こんなところで待ち人をすることになるとは。
それにしても俺以外いないようだ。いくらハズレクラスといえど、そこそこ人がいると思っていた。途中にあった剣士ギルドは非常に活気があった。向こうは巨大で立派な建物、こちらは廃墟。それだけ人がいないってことなのかな。
廃墟内をうろついていると異変に気がつく。壊れかけた壁にいくつか奇妙な傷がある。反対側まで貫通しており、中には長い距離をえぐられている場所も。ここで何がおこなわれていたんだ?
壁の傷を見ていると不意に後ろから地響きとともに轟音が聞こえた。驚き後ろを振り返ると、そこには棒状で黒い物体が壁を貫き、飛び出している。さっきまでなかった、音はこいつか?
警戒しながら見ていると少しずつ壁を削りながらこちらに向かって動き出してきた。なるほど、こいつが壁の傷の正体か。いや、納得している場合ではない。徐々にこちらに近づいてくる。得体の知れない物体だ、逃げなくては。
走って逃げる。すると棒も同じくらいの速さで大きな音を立て壁を削りながら追いかけてくる。どう考えても危険な物だ。追いつかれたら何が起きるかわからない。
前方に壁のない場所があった。あそこからなら壁の反対側を見れるかも。壁のない場所から反対側を覗き込んだ。そして背筋が凍った。
「反対側も黒い棒だけ!?」
反対側にもとてつもなく長い黒い棒が見えただけ。一体この棒は何なのか。正体不明、しかも俺を追いかけてきている。この黒い棒に戦慄する。
前に振り向き直ると首のない石像が目に入った。そうだ、この世界に来るときかなり力を上げたんだった。もしかしたらあの石像くらいは持ち上げられるかも。石像を棒に叩きつけて動きを封じよう。
石像に向かって走る俺。持ち上げてみる、軽い、これなら作戦通り行けそうだ。石像を持ち上げ、下部を抱えて黒い棒に思い切り叩きつけた。
だがまるで生き物のように急に進路を変える黒い棒。上に向かって円を描くように、俺が叩きつけた石像をかわしながら接近。石像の人物部分は地面に叩きつけられ粉々に。黒い棒は俺の真横に。そしてその正体を知ることになった。
「これは銃口? ということはとてつもなく長い銃!?」
銃身部分で壁を削って進んでいたのか。そんなでたらめなこと。とにかく逃げなくては。しかし、石像を叩きつけた状態で体勢が悪い。すぐに動ける状態ではない、ここまでか。
「そこまで! いやー、頑張ったね。反撃したのは初めて見たかな」
黒い銃の反対側から声が聞こえてきた。拍手をしながらゆるい声でこちらに近づいてくる女性。身軽そうな戦闘服、先端に玉がついている装飾が派手なナイトキャップ、腰には短銃。
「……悪かったな」
もう一人、女性の声が壁の向こう側から聞こえた。いつの間にか黒い銃がなくなっている。壊れた壁の隙間からこちらへ。帽子のつばが鋭く尖った嘴のように伸びて垂れ下がっている特徴的な羽つき帽子をかぶっている。狼を模したであろう目の周りの部分のみを覆う金色の仮面。軽装の騎士のような服装、マント。短銃。二人が横並びになると、ナイトキャップの女性がこちらにウインクし、2丁の銃を器用に回しキスをしてポーズを取る。
「ようこそ! 銃ギルドへ!」