24話 悲しい歴史
挨拶をしてテーブルを挟み対面にある椅子に座る。その姿が非常に気になるがあまり視線をちらしていては失礼だ、ここは我慢して。
相談というのは、魔法ギルドの今後の方向性について。最近冒険者になったばかりの俺がと言うと、君が素直に思った意見でいいと優しく説き伏せる。新人の、しかも関係がないギルドの意見を取り入れようなんて出来た方じゃないか。
時は魔法使いギルドが出来た頃に遡る。創始者は魔法の扱いに長け、人々から好かれる立派な人で、いつも肩パッドを身に着けていた。創始者を見て育った後継者が引き継ぐときに真似をして肩パッドを身につける。こうして受け継がれていくことになる。ここまで聞くと人と歴史を重んじる素晴らしいギルドに思えるが、さて。
おかしくなり始めたのは10代目の後継者を決めるとき。甲乙つけがたい2人の優秀な魔法使いが後継者候補となる。意見が真っ二つに割れ、なかなか決まらず、下手をすると戦闘を起こしそうなほどに言い争いを来る日も来る日も続ける魔法使い達。そんな中、候補者の1人が長めの肩パッドを身に着け皆の前に現れる。
「あ、あれは創始者様?」
目立つ部分を強調した服装、一瞬創始者と間違える魔法使い達。そして初代のことを思い出す。この時に争いの愚かさを諭し、我に返った彼らは争いをやめた。後継者は彼に決まった。
争いを止めた彼は絶賛された。この話が受け継がれ、事あるごとに肩パッドの長さが長くなっていく。そしていつしか肩パッドが長いほど偉いということになっていった。
「大人しくしろ!」
「うるせえ!」
後ろの扉が豪快に開く。中に入ろうと扉を開けた男を門番が飛びかかり押しつぶした。見たところ一般の男性だが、何故このようなことをしたのか。取り押さえられながら男は叫ぶ。
「俺の娘が、魔法使い志望で将来有望だって言われていた俺の娘が、帰ってきたときには夢破れ暗い性格になっちまった。力にステ振りをお勧めする魔法使いギルドなんて必要ないんだよ!」
男は泣きながら門番に引っ張られ部屋を後にする。魔法使いなのに力に振る? 魔法使いなら魔力一択のはず。それに重い肩パッド……。
「!! ラヒャウさん、まさか!」
「察しが良いようだな」
肩パッドの長さはとどまることを知らず伸び続けた。そしてついには普通の状態では肩パッドが持ち上がらない所まで来てしまった。
彼らは力に振り始めてしまう。こうして更に伸び、力極振りの魔法使いが現れるように。いつの間にか魔法の力よりも肩パッドの長さで長を決めるようになる。
となると、当然魔法使いとしては弱い。流石におかしいと思った人達がもう1つギルドを作る。それでギルドが2つあるわけだ。こうして徐々に歴史あるこの魔法使いギルドが廃れ、現在までの状態に。異様に長いとは思っていたが、まさか力に振ってまで伸ばしていたとはな。
「どう思う? 私たちは間違っていたのだろうか」
こんなことを聞かれたときの俺の答えは、「遠回りをしただけさ」。基本的には、人は過ちを犯す生き物だと考えている。それから過ちを犯した後も人生は終わるわけではない。反省、調整して生きていく。間違っていたと否定をしたところで元には戻らない。胸に秘め生きて行くしかない。そして今回の件は。
「間違ってます!」
胸を張って言える、力極振りはねえな! つーか途中でおかしいって気づけよ! 時には取り返しがつかないこともある。NOを突きつけるのも優しさだ!
「そうか、ありがとう」
長が顔を仰ぐように上に向ける。目からは大粒の涙が流れた。男の涙をまじまじと見るものではない。挨拶をしてその場を後にしギルドに戻る。
後日、魔法使いギルドは閉鎖され、その長い歴史に終止符を打つことになった。力法の腕輪は彼らがよく買っていたようだった。オークションの履歴を見ると徐々に安くなってきていた。人が減ったのが原因だったようだ。
意外と笑い話にはならないんだよな。人は流されやすい生き物。いつ俺達もおかしな流れに巻き込まれるかはわからない。1人今は無き魔法使いギルドに思いを馳せていると、ルフラが受付小屋へ。
「仕事を頼みたいのだが。帽子が長い魔法使いの村があってな」
「お断りします」




