ワクワクドキドキ、勧誘会!(6)
生徒会長が変態という秘密を抱えることになった俺たちは、校庭に出ていた。というのも、もう日暮れになってきて、最後に清花が気になっていた帰宅部を見ようと外に出てきたのだ。
「……つってもよぉ、帰宅部が"ある"って何なんだろうな?帰宅部って普通、部活動としてあるんじゃなくて部活に入らないで帰るやつら全員のこと言うんじゃねえのか?」
「だな、俺もそこんとこよく分からん。まあでも八部江高校ならあってもおかしく無い気はするけど」
「……んん?おい、あれ見るべ!きっとあれが帰宅部だべ!」
「何だよ、そんな興奮して……」
鏑木が言ったほうを見てみる。そこにいたのは、ビブスを着た女子学生。胸にはデカデカと《八部江高校 帰宅部》書かれている。そしてそいつは、学校周りの塀を宙返りで軽々と飛び越え、中と外を交互に行き来していた!
「えっすっご」
「すげーべ!帰宅部ってこんなことできるんだな!」
賞賛の声が聞こえたのだろう。バッタみたいに飛んでた人はピタッと校舎側で止まると、こちらを向いた。
「いやいや、こんなもんじゃないですよ帰宅部は。僕なんて下っ端、エースの先輩なんかこれの3倍早く飛びますから。"八部江の真っ赤な流れ星"と言ったら帰宅部界隈で知らない人はいないくらいです」
「そんなどこぞの赤い彗星みたいな」
「しかし最近は近隣校も力をつけていましてね、我々としても新たな戦力が欲しいのです」
「あ、それなら清花が帰宅部になりたいって……」
「ホントですか!?ならぜひ!!」
「な、清花?……あれ?清花さん?」
「……ちがう」
「ど、どうしました?」
「ちっがーーーう!!!アタシは!!こんなスポ根みてえな帰宅じゃなくて!!早く帰って遊びたいんじゃい!!」
「それは……つまりそれだけ早く帰宅したいんですね!?すごい意気込みですね!!」
「ちゃうわい!!」
「でも早く帰宅したいんだべ?」
「だからって練習するのはちがーう!!やだー!!楽して帰宅したーい!!そもそも!!帰宅するだけなのになんでこんな部活になってんだ!おかしいだろ!!」
「え!?!?おかしくないですよ!!世の中の帰宅ってこんなもんです!!!僕のお父さんも『今日は早く帰るぞ〜』って帰宅のプロ意識を持ってますし!!」
「それはただ早く家で休みたいだけだろ!!!」
「そうなんですよ!その人間の本能を剥き出しにするのが帰宅という競技の魅力なんです!!!」
「いやだから何で競技になってるのぉぉ……」
「よかったな清花、帰宅部楽しそうで」
「ニヤけてんじゃねえカナタ!!」
「あー!!卍は!!!卍固めはやめて!!」
「けどよー、結局どこか入んなきゃなんねーんだから、清花も決めなきゃいけねーべ?」
「ぐう……しょうがない。帰ってからちゃんと決めるか……」
「あのー、帰宅部に入る話は……」
「悪りぃ、それはない」
「そんなぁ〜……でももし気が向いたらきてね!待ってるから!」
「あいあい」
こんな感じで俺らの勧誘会巡りは終わった。俺は生徒会に、鏑木は園芸部に、清花はまだ未定。それぞれがそれぞれ、新しい場所へ。どんな活動になるかな。楽しみだ。
あとそれはそれとして。帰る途中、車と同じ速度で返っていく、頭に赤いバンダナを巻いた滅茶苦茶オタクっぽい小太りの八部江高生がいた。多分アレが八部江の真っ赤な流れ星っぽい。もしくはターボババア的な妖怪のどっちかだろうな……。




