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【昼休み】購買決戦

 (キーンコーンカーンコーン、昼ぅ〜やぁ〜すぅ〜みぃ〜♪)


 ついに来た……!昼休み……!高校生にとって学校で唯一のオアシス時間……!がっ、しかし……無い……!俺には……今日……弁当がっ……!だから向かう……購買……!そこは天国……このヤバい高校でも……屈指の……!狙うは……焼きそばパン……コロッケパン……!


 「よーしやっとお昼だべ〜!おーい、一緒に食べよー金村……ってアレ?いねえべ?」

 「あー、カナタならさっき顎と鼻を尖らして『ククク……行くぜ……購買……!』って言ってたな。たぶん弁当忘れたんじゃない?」

 「そっかー、ならしょーがねえべ。じゃあ清花、一緒に飯食おう!」

 「いいぞ!おかず一個交換しような!」

 「やるべやるべ!」



 

 ──来たぞ、購買!一階廊下の北側!……って、すげえ人だかり!!2、3年生の殆どがいるんじゃねえかなコレ。こんなに人気だとは知らなかった……これじゃ、もう売り切れるだろうな……終わった……。


 「ん?暗い顔をしてどうした……おや、君は新入生だな!!!よろしく!!!!」

 「どうも!!!!!!!!こんにちわ!!!!!!!!」


 しまった!反射的に挨拶をしたせいで鼓膜バーサーカー時代と同じ音量で返事しちゃった!!!


 「はっはっは!元気がいいな!!!俺は2年生、体育委員の剛力剛(ごうりきつよし)!!見ての通り筋肉男だ!!」

 

 よかった。鼓膜を筋肉で鍛えてるタイプの人だった。


 「ところで、何をそんなに落ち込んでたんだ!?」

 「それは……購買がこんなに混んでいるので、もう売り切れてしまったのかなと」

 「なるほど!!そういうことか!!!だが安心してくれ新入生くん!!!我が校の購買は、普通の手段では購入できないのだ!!!」

 「と言うと!?」

 「うむ!!!ここの購買、味がすんごく美味しい!!!」

 「すんごく!!!」

 「そのおかげで昔、生徒同士が並び順で口論になったりして終いには喧嘩が絶えなくなってしまったァ!!!」

 「そんなに!!!」

 「そこで、争いが起きないようにと!!!購買ではある一つのルールが設けられたぁ!!!それはぁ!!!」

 「それはぁ!!?」

 「生徒同士の一対一のタイマンによる、購入権争奪戦だぁぁぁ!!!」

 「……ケンカ強くない……終わった……」

 「待ちたまえ新入生!!!勝負はケンカではない!!!」

 「そうなのぉ!?」

 「いいか、まず整理券により与えられた、ランダムな番号二人が前に出る!!!」

 「そしてぇ!?」

 「そしてぇ!!!その番号同士の二人のうち一人が、勝負クジを引く!!!中にはクイズやジャンケンといった、種目が書かれている!!!その勝負を行い勝つと見事!!!購買を利用できるのだぁ!!!」

 「すごいシステムだぁぁ!!!!」

 「そうだろう!!!!さぁ、整理券を取ってくるといい!!!」

 「よっしゃぁぁぁぁ!!!」


 購買にいるその他大勢の方々「(((後ろがうるせえ)))」


 ──2分後。


 「とってきました!!」

 「よし!!!では、そろそろ始まるから待つのだ!!!」

 「イエッサー!」

 

 すると購買の前に、銅鑼を持った一人の……チャイナ服姿の女性が出てきた。

 

 「ではコレより、新年度第一回購買決戦を行います」

 「剛力先輩!彼女は……?」

 「む、君はまだ授業を受けていないのだな。彼女は購買部と家庭科を兼任する先生だ。ま、そのうちお世話になるぞ!!」

 「へー!」

 「……以上で説明を終了します。それではまず……整理券8番!整理券47番!両者前へ!」


 銅鑼が鳴らされ、番号がコールされる……って、47番俺じゃん。


 「先輩!いきなり呼ばれたのでいってきます!」

 「む、俺も呼ばれたので行くぞ!」

 「……え?」

 「む?」

 「つまり相手はあんたってコト……っすね?」

 「はっはっは!そうなるな!お手柔らかに頼む!!」

 「俺の(ストマック)は今、空腹(はらぺこ)苦しんで(ぐーぐーなって)るからよぉ……加減できねっすわ……」


 周りを取り囲む、飢えた目の生徒達。彼らの前で今、決戦の火蓋が切られる!


 「さあ、第一試合!種目は!」

 「引くがいい!!新入生!!!」

 「ではお言葉に甘えて……唸れ!俺の右腕!うおおおおお!!!」

 

 ガサゴソガサゴソ……。


 「これだぁぁぁ!!!」


 「種目は腕相撲!では、レディ……ファイッ」

 「ふんっ」

 「うわぁ」

 「勝者!剛力剛!何にする?」

 「麻婆カレーパンで」

 「はいよ!どうぞ!!」

 「ありがとうございマッスル!!」


 


 こうして、スムーズに敗者となった俺は人だかりから弾き出され、廊下の隅っこで体育座りをすることになった……。


 「……聞いてた話と違うじゃん……体格差とか関係無しだと思ったじゃん……腕相撲って何だよ……そんなの勝てるわけないよっ……!」

 

 腹の音が鳴る。飯にありつけない惨めな敗者の姿だよ、これが……!


 「あれ?金村君、どうしたの?」

 

 そんな哀れな俺に声をかけてきたのは、聞き覚えのある声。見上げると……。


 「天谷せんせい……」

 「わ、やつれてるね」

 「実は購買の戦いに負けてしまって……腹ペコなんです……」

 「あー、あそこは倍率高いよね。そうだ、よかったらコレあげるよ」


 そう言って先生は懐から、とんこつ味のカップラーメンを出してきた。


 「いっぱい持ってるし、よかったら一つ食べて?」

 「あ……あまたにしぇんしぇえ!!!」

 「ほらほら、泣かないの。早く食べないと、昼休み終わっちゃうよ?」

 「あ、ありがとう……ございます!!!このご恩は一生忘れません!!」

 「ふふふ、もうっ、大げさなんだから」

 「素晴らしき豚骨の女神!!!!!!」

 「その呼び名はちょっと」


 その日俺が食べたカップラーメンは、いつも食べるカップラーメンよりも、美味しく感じるのだった……。


 「とんこつくせえべ金村!!」

 「臭えぞ彼方!!!」

 「くっさ♡豚のにおいがする♡」

 

 ……臭いも、普段より強く感じるのだった……。

 

 

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