先生が、やべえ!(3)
結局あの関西弁数学イケメン変態先生は、授業が終わるまで、掛け算をする都度悶えていた。なぁにこれぇ。
でもインパクトはあるせいで、授業内容は無駄に記憶に残ってるんだよな……狙ってやってるとしたらすごい。絶対に狙ってないだろうけど。
続いては理科の授業。そういや八部江高校の授業って、数字1・Aと数学Ⅱ・Bとか、現代文か古文とか、分かれてないんだな。次の理科も、物理なのか生物なのか……。時間割を見ても何も……?
あっ!よく見たらそれぞれの教科の下に、見えるか見えないかのちっちゃい文字で(全部)って書いてある!!いいのかそれで!!!学習指導要領とか、なんかそういうので決められてるんじゃないの!?大丈夫なのかこの学校!!!
そんなヤバいことを発見したと同時に、授業のチャイムが鳴らされた。
(きいいいんこおおおんかぁぁぁんこおおおおん)
「ひっひっひ、それじゃあ、授業を始めようかねぇ」
さてさて、理科の先生は……腰の曲がったヨボヨボのおばあちゃんだ。割烹着みたいな服を着て、頭は黒○徹子や湯○婆みたいな、王道のオニオンヘアースタイル。柔和な表情をしていて、なんだか優しそうだ。
「わたしゃ、毒濃千恵子だよ。今年で82になるババアさ。コレからよろしくねぇ」
「よろしくだべ、婆ちゃん先生!」
「いっひっひっ……アンタが鏑木俊太かい。葵先生と羽佐間先生が、アンタの噂しとったよぉ。いい子だってね。……そんなアンタにプレゼントだ。ほれ」
そう言ってドクダミ先生は、毒々しい紫色の謎の液体が入ったフラスコを、何処からともなく取り出して鏑木に手渡した。
「なんだべこれ?」
「いーひっひっ……飲めば分かるよぉ」
えっ、飲んでいい液体なのそれ?明らかにヤバい色してるよ?……あー、バカめ鏑木。アイツグイグイ飲んでるよ。なんでそれをその勢いでうまそうに飲めるんだよ。……いや、待てよ?本当に美味いのでは?……気になってきた。もしかしたらジュースの可能性もあるもんな。よし、俺も貰えるか聞いてみよ。
「先生!」
「ん〜〜?アンタは金村彼方だね?天谷先生から聞いてるよぉ」
「本当ですか!ありがとうございます!ところで、俺もその液体飲みたいんですけど……」
「いーっひっひっ……そうか、アンタも飲みたいのか。……実験台は多い方がいいさね(小声)」
ん?なんか小声で今聞こえたような……。
「ええ、是非とも!」
「いいねぇ、気に入ったよアンタ。特別にアンタにも飲ませてあげよう」
そう言って、先生はまたどこからかフラスコを出してきた。よーし、いいだろみんな〜〜、授業中にジュース飲めちゃうんだぜ俺ぇ〜〜!
では、早速一口。
ごくり。
うーん。
なるほど。
「まっっっっっっっずっっっっっっ!!!」
口の中に入れた瞬間、草を食べてるような臭みが鼻を抜けて、舌から感じるのはえぐみと苦味と痺れのみ。味と言える味は皆無で、コレは液体じゃなくて個体なんじゃないかと錯覚してしまうくらいだ。
なんで鏑木はこれゴクゴク飲んでんの?アイツの舌はコレを美味いと感じてるのか?そう思ってると、鏑木は空になったフラスコを置いた。
「……ぷはーっ、まずかったべこれ!!!」
よかった。舌は正常だったみたいだ。
「婆ちゃん!変な物飲ませないでくれよ!残したら悪いと思って全部飲んだけんど、こんな不味い飲み物、オラ初めてだべ!」
鏑木、飲み干す理由めちゃくちゃ偉いやんけ……。
「そうです毒濃先生!なんでこの世の終わりみたいなジュースなんか……」
「ひっひっひっ……大丈夫、すぐにわかるよぉ」
「わかるって何が……ぐっ!?」
「うおっ……なんだべ……?」
体が異様に熱いっ、なんか身体に異変が起きてる気がする……!
「ぐあっ……」
「ううっ……」
俺と鏑木は呻き声を上げ、その場にうずくまる。
「おいっ、大丈夫かカナタ!シュンタもしっかりしろ!こんのクソババア!アタシのダチに何飲ませやがった!!!」
騒然とするクラス内で、清花が俺らを心配している。
「ひっひっひ……そろそろかねぇ」
「何言ってんだ、二人に何かあったらタダじゃおかねえぞ!」
清花が凄んだその時。ふっ……と、熱が急激に下がっていくのを感じた。鏑木も同じみたいで、俺と目を合わせ、不思議さにパチクリと瞬きをしている。それにしても、さっきまでのしんどさから解放されたおかげか、いつもよりも身体が軽い気がする。特に下半身なんかが主だって──。
んんんんんんんん???あれ????
待て、嘘だろ……?
おいおいおいおい!!!
その現象は、向こうにも起こっていたようだ。今にも泣きそうな顔で、自分の体の変化を嘆いていた。
「婆ちゃん先生……!あんまりだべ……!」
「シュンタ!カナタ!無事か!?おい!何も変化ないか!?」
「大アリだべよ!!!こんなの、死んだのと同じだぁ!!」
「おいババア!!!よくもやってくれたなぁ!!!」
「ひっひっひ……」
「何笑ってんだテメェ!!」
「いーひっひっひ!」
「そうだべ!!俺の大事な……」
「大事なチン○ンを消すなんて!!!」
「……え?」
「ひーっひっひっひっ!成功のようだねぇ!」
「すごく、違和感があるな……これ……」
「……カナタ、ちょっと確認させろ」
「えっ、なにを」
言うや否や、パンッと音が響いて、清花は俺の股間に掌底を当てた。
「本当だ……玉も竿も無くなってやがる……!」
「……お前!!!あったら今ので無くなってたわ!!!見てみろ周り!!!男子みんなドン引きしてるよ!!!」
「しかしまだ改良の余地があるねぇ。いずれは股間だけじゃなく、全部女の子にするまでにしたいね」
「ば、婆ちゃん先生!!俺の相棒は!?相棒はもう永遠にさよならなんだべ!?」
「棒だけにってか。やかましいわ」
「ひっひっひ。いいや、この授業終わりくらいまでには元通りになってるはずだよぉ。まあ言うじゃないか、かわいい子には旅をさせよってねぇ」
「俺のはかわいい子じゃなくて勇ましい子ですが?」
「オラのだって、とてもビッグな子だべ!」
「二人とも言ってる場合か。……ったく、先に言ってくれよ毒濃先生。危うく先生にブチギレるとこだった。今回はタマタマ運が良かったけど。タマだけに。」
「いーひっひっ。ごめんねぇ、あたしゃイタズラが好きなもんでねぇ。みんながあまり萎えないようには気をつけるよぉ〜。股間の扱いと同じように。」
「やーい♡彼方くんの玉無しザコ♡実質女の子♡ところで毒濃先生女の子に生やす薬も作ってくださいお願いします」
「なんだとメスガキ……いやちょっと早口で何頼んでんの怖い何する気ほんと」
「いいよぉ〜後でね〜」
なんちゅう先生だ……見た目は優しいおばあちゃんなのに、今までで一番のクレイジーババアかも知れない……!!