先生が、やべえ!(2)
一限目が終わった。凄かった……あのあと葵先生はアイデンティティについて事細かに解説してくれて、授業はすごく捗った。自分のアイデンティティってのが何か、俺は理解できなかったけど……でも先生は「彼方ちゃん、あなたがアイデンティティに悩むこと、それも一つのアイデンティティよ!」と言ってたので良いんだ!!!
で……アイデンティティってどういう意味だったんだ?ま、いいか。
さて続いては数学。しかし、俺は全教科の中で一番と言っていいほど数学が嫌いだ。なんだ1+1=2なのに1×1=1って。真ん中の形傾けただけで答え変わるなよ!!ふざてけんのか!!!が、高校では秀才を目指す俺にとって、コレは避けて通れない道。覚悟を決めて授業に臨むとしよう。
(キーンコーンカーンコーン)
「はいみんなー、授業を始めるから席につきや〜」
(えっ、先生かっこよくない?)
(ね、かっこいいよね!爽やかイケメンって感じ!)
(わたし生徒会長推しだったけど、こっちもいいわね……)
あっ、数学の教師、イケメンだキレそう。何だちょっと若くて整った顔立ちに細目に米○玄師みたいな髪型してるだけでちやほやとかふざけやがって!!!いいなー!!数学も出来てイケメンで!!!羨ましいなー!!!
「えー、僕は数学を担当します羽佐間円です。これからどうぞよろしゅう」
しかも西の高校生探偵みたいな方言使いやがってよぉ!!!女子人気待ったなしじゃねえかおい!!
「かっこいい……」
ほら、清花もホの字だよ!!!どうしてくれんのこれ!!!!
「では教科書開いてー、5ページ」
ちくしょーイケすかないやつだ!にしても、八部江高校にこんなまともにカッコイイ人いたんだな。
「因数分解と展開やね〜。中学の復習も兼ねていくねんけど、みんなはこの式見たことあるかな?こういう風にカッコで括ったのが二つあって、中にxと数字があって……カッコの中に記号と数字が……」
ん?
「こんな近距離の密室で、二人きり……!?」
あっ。
「あかん、xくんは3くんのことより5くんのことが好きなんや!けど、3くんの気持ちもようわこうとる。だから、こうして二人と会うことにしてるんやろうけど、それは悪手やxくん!!ど、どうにかこの部屋からxくんを出して、関係を改善化せな!!」
(えっ、何この人)
(なんかぶつぶつ言ってて怖い……)
(あたしも目が曇ってたな……)
……この先生もやばい人だぁ♡
「そのためにはここの式を展開せなあかん!どうする!ココとココをかけ算すんねん!け、けどかけ算ってことはつまり、受け攻めがアレでアレやんか!キャー!xくんのふしだら!」
すげえな、一人で妄想が捗ってるみたいだ。この人イケメンだけど、話してる内容を聞くに、いわゆる腐男子ってやつみたいだなぁ……しかも数学で興奮するタイプのど変態……。
「うへへ、これは薄い本が厚くなるでぇ……」
「羽佐間せんせー!」
「じゅるっ……ど、どしたん?鏑木くん」
今よだれ垂らしてたぞあの人。
「オラ、せんせーの言ってることよくわかんねえべ……だから、もうちょっと手取り足取り教えてくんねえか?」
「て、手取り足取り!?現役無知男子高校生を!!??」
「???そうだべ?」
「ぐへへ……それはそれで……って、ダメダメ!!しっかりするんや僕!!!尊いものには挟まってはいけないんやぞ!!!」
頭殴りながらなんか言ってるよ羽佐間先生……女子生徒も大体ドン引きだよ……ま、まあ個性が強いのはわかった。本当にキャラ濃い人ばっかだな、ここの先生達……。