表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/28

先生が、やべえ!(1)

 (キーン、コーン、カーン、コーン)


 お、チャイムが鳴った。隣のメスガキは相変わらずフスーフスー言ってるけど……とにかくそろそろ授業が始まるな。今日の一限目は国語。そういや、どんな先生が担当なんだろ?

 そんなことを考えていると、ドアがガラリと開いた。


 「はいはーい、それでは授業始めるわよ〜♡」


 と言って手をはたきつつ、一人の人物が、大きなお尻を蠱惑的にフリフリしながら教室に入ってきた。服装は白スーツで、学校内にも関わらずヒールを履いていて、高い背をさらに高く見せる。またその大きなお尻のためなのか、ズボンはピッタリとしていて窮屈そうだ。髪は紫色に染めサラサラとしていて、肩まで伸びている。

 その新たに教室に入ってきた異質な存在に、俺は目が釘付けになった。


 「私の名前はぁ、中島葵(なかじまあおい)っていいます。ぜひ葵先生って呼んでね♡」


 それは先生の甘ったるい声に恋に落ちたわけでも、女性らしい身振り手振りにドキドキしたわけでもない。そうじゃなくて──


 「はい!葵せんせー!」

 「あら、あなたはたしか〜……そう、鏑木俊太ちゃん!これからよろしくね俊太ちゃん♡で、何か質問かしら?」

 「そうそう、入学式ん時から気になったてたことがあるんだけんど」

 「なになに?遠慮せずに言って?」

 「葵せんせーって男なの?女なの?」


 「……強いていうなら乙女よ!」


 濃い化粧をして長めのつけまつ毛を瞬かせる()が、ゴリゴリの()()()さんだったからだ。


 「ま、言いたいことは分かるわ俊太ちゃん。きっと、あなた以外の何人かの生徒も困惑していることでしょう」


 たぶん、何人かじゃなくて全員だと思うけど……。

 

 「でもね、そんなことは些細な問題なのよ。今は多様性の時代よ。私みたいな人もいて当たり前。だから皆には色んな価値観を知って欲しいって、校長がオネエの私を雇ってくれたのよ」

 「そうだったんだべか!深い理由があったんだべなぁ」

 「ウフ、そうでしょ?だからね俊太ちゃん、無作法に性別聞くのも、実は今の時代、あーんまりよくないのよ?」

 「うっ、ごめんなさいだべ……」

 「いいのいいの、学ぶまでは分からないんだから!そしていま学んだのだから、コレからを気をつければいいのよ!」

 「わかったべ!!」

 「素直でかわいい子ね♡」

 「ありがとう葵のおっちゃん!」

 「ぶっ殺されたいんかこんガキャア!!」

 「ヒィッ」

 「……アラ、いけないいけない。平常心平常心っと♡いーい?葵先生と呼ぶのよ?」

 「はい……葵せんせい……」


 地声メチャクチャ野太いな、びっくりした……しかし今のは鏑木が悪い。


 「さ、気を取り直して。早速授業進めてくわよ!まずは……おっ、ちょうどいいのがあるじゃない♡"みんなちがってみんないい"これをやっていくわよ!では音読!!リピートアフタミー、『みんなちがってみんないい』エビバディセイ!」

 「「「み、みんなちがってみんないい!」」」

 「『男も女も関係ない』エビバディセイ!」

 「「「お、男も女も関係ない!」」」

 「『恋は誰でもギャラクシー』エビバディセイ!」」

 「「「こ、恋は誰でもギャラクシー???」」」

 「『男の子も女の子もかわいいもんはかわいい』!」

 「「「男の子も女の子もかわいいもんはかわいい!」」」

 「『かっこいいもんはかっこいい』!」

 「「「かっこいいもんはかっこいい!!」」」

 「『あなたはあなたで私は私』!」

 「「「あなたはあなたで私は私!!!」」」

 「ってことは、みんなちがって〜?」

 「「「みんないい!!!!」」」

 「フゥ〜〜!あなたたち……上・出・来♡」

 

 ……こうして、何とも癖の強い授業は次第に教室を熱狂の渦に巻き込んでいった。まるでライブのように……。

 こんなのが全教科にいるのかこの高校…………やばい、ワクワクしちゃうじゃんか……!

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ