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入学デビュー、失敗!(1)

 4月1日。八部江(やべえ)高校入学式。俺、金村彼方(かなむらかなた)は本日朝4時に起き、3時間みっちり支度を整えたあと、余裕を持って家を出た。

 なぜそんなに気合が入っているのか?当たり前だ。入学式、同級生との初顔合わせ。高校デビューを目指す俺にとって、今日がどれだけ大事か!!

 俺は高校で変わる。中学時代、史上最高のアホと呼ばれ続けた俺は当然、公立高校受験に失敗。それでもどうにかもがいた結果、巷でちょっとやばいと言われている、私立八部江高校に受かることができたのだ。だが私立となったおかげで、中学からの知り合いは一人もいない。これは……チャンスだ!誰も俺をしらない高校で、優等生として名を馳せてやる!

 そして優等生になるにはどうしたらいいか考えた結果、見た目が大事だと気がついた。(急に頭が良くなるのは無理だし。)だから髪も七三分けにセットし、視力2.0だけど伊達メガネもかけた。なんか本を持ってれば賢く見えそうだから本も持っていく。流石の俺もマンガはダメだと知っている。だから小遣いを貯めて、本屋で分厚い本を買った。六法全書って書いてある本だ。高かった……しかし中身はよく分からんが、分厚いからすごいはず!!それと二宮金次郎って人が頭いいらしいから、真似をしてじいちゃんが持ってた栗拾い用のカゴを借りた。買ってきた六法全書はずっと持っていると重いから、疲れたら中に入れることもできる!あとは自分の頭の良さを目立たせるために「IQ7億」って書いたハチマキをすれば……。

 完璧だ……自分の発想力が恐ろしい……ここまでやれば、誰もが俺を秀才と認めるはずだ!早起きしすぎて目がバキバキなのが難点だが、それすら気にならないファッションセンス!事実、登校途中の今でも、周囲からの視線を独り占めしている!!


 「ね……ねえ、あれ……」

 「うちの制服、だね……」


 同じ学校だと気づき噂するヤツもいる!とても驚いた表情……「こんな頭の良い人が同じ学校に!?」心の中はそう喜んでいるに違いない。これは有名人待ったなしだ!


 こうして俺はるんるん気分のまま、ついに校門前に到着した。


 「おはようございまーす」

 「はい、おはよう。新入生はあっちねー」


 そこでは先生らしき若い女性が立っていて、登校してきた生徒達と挨拶を交わしていた。

 アイサツ、ダイジ。オレ、シッテル。中学時代、挨拶を重要視していた俺は、鼓膜を破るほどの大声で挨拶しまくった。結果、"二足歩行式鼓膜大量破壊兵器"と不名誉な称号をつけられてしまい、ついには生活指導の先生に「頼むからお前はもう挨拶をしないでくれ」と土下座で懇願されはしたが……ま、それは昔の話。今の俺は秀才になったのだ。大声など論外。なぜなら、頭のいい人はデカい声を無闇に出さないものだからだ。たぶん。なので、他の方向から攻めた挨拶をしなければ。しかもこれは入学一発目の、記念となる挨拶なのだ。


 「えっ、おい……」

 「なんだ……あれ……?」


 周りも俺の秀才オーラに気づき、ざわつき始めている。さて、どうするべきか。

 ……やはり優等生らしく、ここは俺が知る最上級の上品な挨拶をしよう。よし、先生!これが生まれ変わった俺の挨拶だ!我が優秀さに打ちひしがれよ!!


 「先生!」

 「はい、おは……えっ……」

 「……おはようございますわ♡」


 ズボンの裾を軽く持ち上げて、お上品な言葉で挨拶。さながら気分はお姫様♡

 どうだ!?これぞ二足歩行式大量鼓膜破壊兵器の生まれ変わった姿!!事実、先生も俺の優雅さに釘付けで言葉を失っている!!


 「……えーっと君は……」

 「はい、金村彼方ですわ♡」

 「そっか……彼方くん」

 「なんでしょうか先生♡」

 「ちょっと、職員室いこっか……」

 「……へ?」


 ……こうして、俺の波乱の高校生活は幕を開けたのだった――。



 

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