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エピローグ

 劇の(まく)()りて、そして私達の文化祭は終了した。劇の評価がどうなるかは分からないが、私なりに思いを込めた作品を書き上げられて、個人的には満足している。今は、ただ劇の打ち上げを楽しもう。私はクラスメート達と一緒に、教室でジュースを飲んで笑っていた。


恋人「お疲れ様、天才(てんさい)脚本家さん」

私「お疲れ様は、そっちでしょ……ナレーションを頑張(がんば)ってくれて、ありがとうね」


 私は彼女と二人、教室の片隅(かたすみ)に移動して、身を寄せ合うように話す。あぁ、この小さな空間が私は好きなんだなぁと実感した。(そば)に彼女が居てくれる、今の空間が。


恋人「白雪姫ちゃんは、やっぱり可愛(かわい)かったわね。カーテンコールで、感激して泣いちゃって、その姿にファンが()()にそうになってて面白(おもしろ)かったわ」

私「かぐや姫は演劇部員だから当然として、シンデレラも演技で頑張(がんば)ってたよねぇ。かぐや姫が感心して、『やりますね、シンデレラ』って()めてたし」

恋人「それでシンデレラも、『お前こそ大したもんだぜ、かぐや姫』って、(たが)いに認め合ってたしね。あの二人、友達になるんじゃないかしら」


 これまでクラスで怖がられていた金髪のシンデレラちゃんは、劇に感動したクラスメート達からラインの交換(こうかん)をねだられて、「う、うん……」と(おう)じていた。そこは「てやんでぇ!」では無かったようで、これから彼女がクラスに馴染(なじ)んでくれたら良いなぁと思う。


恋人「演劇部部長の私としては、かぐや姫が調子に乗り過ぎないようにしないと。劇は(みんな)の演技で()()つのよ。一人だけで(えら)そうに演じてる内は、まだまだ役者として未熟(みじゅく)だって事を分かってくれたら良いんだけど」

私「大丈夫じゃないかな。シンデレラとの共演で、かぐや姫も成長したと思うわ……それで、脚本を書き上げた、私への報酬(ほうしゅう)に付いて話し合いたいんだけど」

恋人「報酬? そんな事を言ったかしら?」

私「もう! 今度のデートの事! 『うんと楽しませてあげる』って約束してくれたじゃない!」

恋人「冗談よ、冗談。ちゃんと覚えているから安心して」


 同い年のはずなのに、いつも私は恋人から、子供のように(あつか)われて翻弄(ほんろう)される。そして私は、そうされる事が大好きなのだ。


恋人「それで、行きたい所は、もう決めてるのよね?」

私「うん! ディズ〇ーランド! チケットは取ってるから、一緒に回って!」


 御伽(おとぎ)(ばなし)に付いては、少し不満もあるけれど。昔も今も私は、あの夢の国が大好きだ。シンデレラ城で同性婚の挙式をするのが私の夢である。(すで)に、そういう前例はあるのだ。


恋人「幸せ一杯(いっぱい)って顔ね。そんなに(うれ)しい?」

私「貴女と一緒だからよ、分かってるくせに。うーんと、楽しませてもらうから」


 もう私は、劇の事も教室の風景も、頭に無い。月まで届きそうな(ほど)に浮かれてしまった私を、いつも私の恋人は冷静に受け止めて、地上へと()ろしてくれる。こんな調子だから、私が彼女から子供(あつか)いされるのも当然なのだろう。ふと、気になって(たず)ねてみる。


私「ねぇ、私って子供っぽい? (あき)れて愛想(あいそ)()かさないでね?」

恋人「いいじゃない、子供っぽい貴女が好きよ。ずっと、今のままで居て」


 再び私は、天まで打ち上げられる。今夜は満月で、()()りた私は、自分で地上に戻れそうもない。祭囃子(まつりばやし)狂騒曲(きょうそうきょく)が、エンドレスで私の頭の中で鳴る。「高い高ーい」と持ち上げられて、私は恋人の前で子供に戻る。どうか私を優しく()()めて。

完結です。

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