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第2話
「よかった無事で」
枕元に理香子がいた。
「ずっといてくれたのか」
理香子が頷いた。
やはりそういうことか、医者は俺の彼女の理香子を妻だと勘違いしていたのだ。だが、俺も38歳だし、理香子も次の誕生日で34歳になる。そろそろ潮時なのかもしれないなどと思った。
「このギプスはいつ取れるのかなぁ」
「最低でも3週間はかかるらしいわよ」
「そうか」
「何か買ってこようか?」
「そうだな、飲み物がほしい」
「わかった」
理香子が病室を出ていった。
俺は三角巾で吊った左腕を見た。
ギプスをした左手を動かしてみた。
左手が異常に重い。
それに自分の手ではない感じがした。
指先の感覚もおかしい。
重いのはギプスをしているから当然だとして、感覚の異常は神経がどこかで切れたままなのかもしれない。
今すぐこのギプスをはずして自分の左手を確かめてみたいという誘惑に駆られた。
その時、廊下から悲鳴がした。
「な、なんだ」