第4話
「アリシアが元気で僕は嬉しいです。」
そういって、銀髪碧眼の美少年ことジークヴァルト王太子殿下が笑う。
彼はシュノーラル王国の第二王子だ。愛らしい笑顔。どんな色でも表せない不思議な色の蒼い瞳。
「でも、アリシアは本当に大丈夫なのですか?いきなり消えちゃったりしないですよね?」
そう言いながらアリシアこと私の手を握ってくる。蒼い瞳が心配そうに揺れる。
「はい。もう大丈夫です。心配をおかけして申し上げ御座いませんでした。殿下がお忙しい中、貴重な時間を割いて下さったこと、誠に嬉しく存じ上げます。」
よし。報告の定型文はバッチリだ。話を変えるが、私はジークヴァルト殿下があまり好きではない。いや別に大嫌いと言う訳でも、大好きという訳でもない。オタク仲間だった子はこの笑顔でいつも癒されていたらしいのだが、私としては胡散臭いと言うかなんと言うか。
とにかく、違和感を感じるのだ。
「アリシア、今日の朝ご飯は何でしたか?」
はい?何故急にそんな事を?
「毒でも飲んだのですが?」
何を言っているんだ。この人。
「殿下。何が言いたいのかよく分かりません。」
キョトンとした顔を見せる殿下。それから可笑しそうに笑った。
「ちょ・・・。何でそんなに笑うのですか!?」
「いや。ゴメンなさい。アリシアの返事が報告みたいでついつい笑ってしまいました。あと、今日の情緒は安定しているようですね。安心しました。」
幸せそうに微笑う殿下。そこに私が感じた違和感は無い。
確かに、(ファンディスクでは)アリシアはありとあらゆる人に対して当たり散らすような言い方をしていた。だから、ジークヴァルト殿下の笑顔に違和感があったのだ。アリシアの機嫌を損ねないように。
「殿下。私はもう大丈夫です。今まで沢山のワガママをしてごめんなさい。」
ただ、この気持ちを伝えよう。こんな言葉で片付けて良いものなのか分からないけれど。
きっときっと、アリシアはただ寂しかったのだ。早くに母親が亡くなって、また誰か自分のそばから消えてしまうのでないか。独りきりでおいてかれてしまうのではないか。ずっとずっとこの恐怖が彼女を支配していたのだ。これ以上自分が壊れないように、相手の前に殻を作って、そして、拒絶した。
寂しかった。怖かった。置いてかないで欲しかった。認めて欲しかった。
アリシアは、誰かに愛されたいだけだったんだ・・・。
それが分かると、涙が出て来た。ジークヴァルト殿下が驚いた顔をしている。でももう止められない。
「アリシア。アリシアは、ずっとつらかったんだね。」
殿下の優しい声がよく聞こえた。もう我慢ができなかった。
「ううっ・・。うぁっ・・。ああああっっ!・・・」
沢山の感情が一気に流れ込んでくる。抱きつかれた殿下は嫌な顔ひとつせず頭を撫でてくれた。
「よく我慢したね。もう大丈夫。」
何が大丈夫か。今はそんなものどうだって良かった。
アリシアはかなり時間が立っているのになかなか戻ってこないことを心配したオスカーがくるまで泣いていた。
凄く日にちが空きました。多分設定とかは次のお話で出そうと思っています。
誤字脱字があったら気兼ねなく言ってくれると嬉しいです。
今回もしっかり書いたので長めかもしれません。他の方々はこれくらい当たり前なのでしょうか。
あと、新学期で忙しくなるため更新は亀よりも遅くなると思います。