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ルーキスinオルトゥス ~奇術師の隠居生活~  作者: ブロンズ
第四章:アクティブ編

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92/279

第12幕:ノーモア賭博




――――――――――――――――――――

◇ 攻略クエスト情報(7/10更新) ◇




【概要】

 city questが発令されました。 

 対象のPLは、王国古代都市のイベントに参加できます。


 詳細情報unknown


 古代都市来訪で個人公開されます。

 



【備考】

・発令現在、【古代都市:アンティクア】を解放(アンロック)しているPLが対象となります。

・本クエストは【人界領域】【秘匿領域】開始のプレイヤー専用です。

・一度死亡した場合、再参加は不可となっています。

――――――――――――――――――――



 

 運営から送られてきた最新情報。

 私には、よく分からないけど。


 

 ……………。



 ……………。



 沈黙の長さを考慮すると。

 やっぱり、それだけ衝撃的な事なのかな。



「――古代都市で、クエスト……!?」

「ヤバいでしょ、これ」



 そして、静寂の後には。


 その話でもちきりだし。


 概ね、出された結論は満場一致みたいだ。



「―――まぁ、行くっきゃないって事で」

「さんせーい」

「……賭けは中止で良い?」

「おう。仕方がないな、これは」

「あーぁーー、残念」



 ……賭け………?



「エナ。賭けって、何の事だい?」

「はい。ルミ姉さんに褒めてもらった回数を競ってて、皆でアルを賭けて――ぁ」


「「………………」」

「……エナドジィ」

「エナドリみたいに――」


「――みんな?」


「「……はい」」

「褒めるのは、いけないコトだったのかな?」 


「「……………」」

「私は、もう、皆を褒めちゃいけないのかい?」


「――違います!」

「もっと褒めて欲しい!」

「何なら俺も撫でて欲しい!」

「………僕も」


「―――航……?」


「じゃあ。子供うちでお金を賭けるのは、ダメだよ。――ね?」

「……ゴメンなさい」

「「……スミマセン、ルミ先生」」


「うん、許すよ」

「……良いの?」

「元より、私たち同士で賭けをしてたからね。お金が絡まないなら、どれだけ勝負したって良いさ。その方が、やる気が出るだろう?」



 締めの言葉に。

 皆、元気に返事をしてくれたけど。


 私、何時の間にか賭けの対象にされちゃってたんだね。


 道理で、今日は。

 ……今日も、皆張り切っていたわけで。



「ところで。シティクエスト――都市クエストって、どういうモノなのかな?」

「「ぁ」」



 皆、あれ程の衝撃を受けてたのに。


 何故、吹っ飛んじゃったんだろう。


 思い出した様子の五人は。

 しかし、首を捻って、どう言うべきかを考えている様子で。



「――あーー、えーーと?」

「実際は、俺達も初めてで」

「伝聞とか、世界感とか。公式のちょっとした謳い文句が初出の用語なんですけど」



 公式さん曰く。

 重要都市には、その都市ごとの物語があり。


 これは、一種のクロニクルの扱い。

 世界その物に影響こそ与えないけど、価値は計り知れないもので。


 大規模な都市全土へ影響を与え。


 都市そのモノの情報を改変する。


 言わば、都市のアップデート。

 改良であれ、改悪であれ。


 PL自身も、自身の活躍を記録としてオルトゥスの歴史に刻むことができ。


 勝ち馬にさえ乗れれば。


 大きな戦果をあげれば。


 それこそ、貴族位さえ夢じゃなく。

 国家の核心に属することだってできるようになるかもしれないと。



 それだけ、価値あるクエスト。



 それが、都市クエストらしい。



「―――まぁ、そういう訳ですから」

「急いで向かわないとな。乗り遅れたら、大損だ」

「行かないと情報開示されないって載ってたし」

「戦闘条件も分からんし」

「作戦を立てるには、早く行ってクエスト情報の確認をしないといけませんね」



 ……ふむ。



「―――じゃあ、ルミねぇ! ―――は――どう……する……?」

「「……………ぁ」」



 不意に、ナナミが元気にこちらを向くけど。


 その声は尻すぼみで。


 これは、アレだよね。


 一緒に行こうって言おうとしたんだろうけど。

 ちょっと考え直したんだ。


 護れるかが不安だろうし。

 皆が名を挙げるには、全力で戦わなきゃいけないだろうし。



 五人の為を思えば。



 答えは一つだよね。



「私は、遠慮しておこうかなぁ」

「……ですよねぇー」

「む……むむぅ……」

「確かに。今回は、護れる自信がないな」


「興味がないわけじゃないけど、行って何をするのかって言われたら――ね? 私、只の的だし」



 助っ人は別の人に頼むと良い。


 ……なんせ、あの都市には。

 私が及びもつかないような力を持つ、眠れる竜が居るから。


 皆も知っている子だし。


 もしかしたら。

 戦いに協力してくれるかもね。



「――じゃあ。皆がお偉いさんになったら、養ってね?」

「オーケー!」

「分かりました」

「分かるな。働かせろ」


「んじゃ、俺たちはお先に上戻りますけど」

「この先、進んじゃダメだよ? 絶対に進んじゃダメだよ……?」

「振るな、マジでお釈迦だ」



 今は平和な階層だけど。

 次からは、また沢山の敵さんが出てくるだろうからね。


 ちょっとだけ、覗いて。


 手早く帰る事にするさ。


 手を振って皆が歩いていくのは、ボスのエリアごとに存在する転移ゲートで。


 親切設計が光るね。



「―――んじゃ、最速ぅ!」



「七海!」

「速いって!」

「遅れるなよ、ヒンジャックさん」

「おいィ! 走らないでくれよ!」


 

 飛び出したのは、仲間内最速を誇る暗殺者さんで。

 皆、とても素早いから。


 すぐに、都市へ到着しそうだね。


 一人、置いていかれそうだけど。


 

 ……………。



 ……………。



「―――さて、どうしようかな」



 走っていく皆を見送り。

 その声が完全に聞こえなくなる頃。


 賑やかから一転し。


 静寂が訪れる空間。


 何だか、急に寂しくなって。

 独り言の声も、広い部屋に地下してるみたいだ。



「戦闘で試そうと思ってたアイデアが幾つかあるんだけど。何なら、今からその試運転でも……んう?」



 さぁ、どうしようかと。

 取り敢えず、当てもなく静かな階層を歩き出した瞬間。


 ポロロン♪ なんて。

 頭の中に、再びよく聞く音が鳴って。



 ……………。



 ……………。



 ―――メール……?



 先程のとは音が違うこれは。

 フレンドメールに宛がわれている効果音だね。



 こんなタイミングでなんて。

 十中の八九、開催中の限定イベント関係だろうけど。



 盗賊なヒャッハーさん達か。


 大規模ギルドの団長さんか。


 そのどちらかから、お誘いでも来たりしてるのかな?


 

 どれ、どれ……と。

 愉快な文面を期待して、私はメールを覗く。





『たすけて』





 ―――――。



 ―――――。



 目を通した瞬間、身体に力が入る。

 

 ユウトたちが消えた門へと、走る。


 最近は余り激しく身体を動かしてなかったから、どうにもおかしな錯覚があって。


 ゲーム内なのに。


 息が切れる感覚。


 身体の節々が痛む。


 それを幻痛と感じつつ、地上へ戻る転移ゲートへ。

 都市間を結ぶモノより二回りほど小さい装置へと身を躍らせ、滑り込み。




「みんなー、ちょっと待って」




 前を駆けていく団体へと追い付くけど。


 視界には、慌ただしく走るPLが多くて。


 本当に、沢山の人が。

 お忍びの上位PLが、例のクエストに参加するために走っているんだ。


 何とか追い付けたのは。


 ちょっと俊敏と体力が低い子のお陰だね。



「―――ルミ姉さん……?」

「―――必死そうな顔して、どうかしたの?」

「うん……うん?」

「必死な……顔?」


「今更、無職に危機感でも覚えたのか?」



 好き放題言われるけど。


 追い付いたなら、充分。



「私も、用事ができたんだ。同行しても良いかな」

「「え……?」」

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