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ルーキスinオルトゥス ~奇術師の隠居生活~  作者: ブロンズ
第四章:アクティブ編

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第11幕:そのヒカリを求めて




「ホ――ホ……ホホ……ホ―――?」

「「……ホ?」」

「ホホ……ホ―――?」



「――何か、やたらツンツンしてない?」

「気になるんですかね」

「AIの仕様とかだろ」

「確かに。ああいうのが浮かんでると、餌だと思って(ついば)もうとするのはあるんじゃないかな」



 私達の見ている前で。

 空中に浮かぶ橙の球へと、次々に特攻するハト君達。


 珍しいから興味があるのか。


 ただ、餌だと思ってるのか。


 それは分からないけど。

 ともかく、そんなモノだから、足元は常にわっちゃわっちゃしていて。


 

「――ひゃぁ……!」

「くすぐったいですね、もふもふ」

「ふふ――ふふふッ」

「ルミさん……?」

「笑ってんのに表情変わらんのはどうなんすか?」


「気にするな、いつもの事だ」



 私達自身、ずっと動き回ってるから。

 当然に付いてくる使い魔の羽がこすれて、足元がくすぐったいね。


 思わず声が漏れて。

 笑みがこぼれてしまうよ。


 片手じゃ足りない数の鳥と。


 周りを浮かぶ、橙色の精霊。


 とても奇妙な一団は。

 魔物の気配が完全に無くなってしまった空間をゆっくりと歩く。

 

 

「また、静かな階層だね」

「えぇ。ここのボスも――ええと……何だっけ?」


「クレイ・ゴルド。金ぴかの泥人形だったな」


「あ。そう、ソレ」

「ここら辺も、ボス倒しちゃったから、もう出てこないんだよねぇ」



 このゲームでのレベルの上昇速度は、非常に緩慢。


 とにかく上げにくいから。


 根気良さが必要なんだね。

 

 彼等は、TPとの差を埋めるため。

 ゲーム時間の殆どを、経験値効率がそこそこな迷宮で過ごしているらしい。



「俺達は、そんな日常でしたけど……。ルミさんは、ここ最近何やってたんすか?」

「会えなかったですし」

「全然遊んでくれなかったし!」


「おや……。そういえば、言ってなかったね」



 言うのを忘れてたけど。


 かなり根にもたれてた。


 一応、メールでやり取りはしてたけど。

 やっぱり、直接会ってへいとコントロールするのも必要だったみたいだね。



 で、何をしてたかと言われれば……。



「実は、アンティクアに行ってたんだ」

「「…………ぇ?」」



 ……………。


 

 ……………。



 ―――んう……?



 私の言葉に。

 ポカン……と口を広げ、首を傾げ始める五人。


 皆だって、行ったことあるだろうに。

 何故、私が行っちゃいけないんだろう。



「……あの。どうやって、最前線に?」

「レイドさん達?」

「なのか? 俺達も、当初はめっちゃ苦労して行ったんだが」



 成程、納得。

 皆は、無職が行けた事が不思議だったみたいで。


 実際、そうなんだろうねぇ。


 魔物とか、強そうだったし。


 何より、最後。

 ボスさんは、特に油断ならない相手に見えた。

 何度も経験して慣れているとはいえ、一人で戦えるハクロちゃんが異常なんだ。



「でも、そうなると。今度は、皆で散策出来るんじゃない?」

「「ありあり」」

「古代遺跡とかの話かい?」

「はい。あの都市は情報が多いので、調べ物が捗るんです……! 特に、遺跡! 月神ディクシアの謎とか、アリステラ、リアソールの関係とか、御子の伝説とかが――」



 急に早口になるね、ワタル君は。

 どうやら、彼の個人趣味が爆発してしまったようで。


 これには皆も苦笑い。

 私は興味があるから、その言葉を熱心に聞き入っていたんだけど。


 ちょん、ちょん……と。


 後頭部に違和感を覚え。



「……ねぇ。ルミさん――後光差してる」

「ん? ……お、確かに」

「ありがたやー」



 いつの間にか。

 頭にアトミックちゃんが乗ってたみたいだけど。


 私からすれば。


 ままある事で。


 いつものハト君が、精霊さんに変わっただけなんだよね。



「違うよ? アトミックちゃん。君の保護者さんは、あっちさ」

「帰ってこい、アトミック」


「自走式帰巣爆弾……?」

「どんな兵器だよ」

「名前……もうちょっと、どうにかならなかったんですかね」



 私が迷子を誘導すると。

 ホワホワは、ふわふわとショウタ君の元へ戻っていく。


 頭の上が好きなのか。


 彼が誘導してるのか。


 またしても、頭頂部に行くんだね。



「――ほら、見てみ? 俺もお釈迦(しゃか)様」

「禿じゃね?」

「ハゲっぽい」

「ハゲじゃん」

「禿じゃありませんーーー!」

「でも、案外良いかもです。髪がないのも光で隠せるかもしれませんし?」


「だから、はげてねェって! それ逆効果だし!」



 頭が光っている様子から連想されたのか。


 四人が一人を揶揄う。


 丁度、その時だった。



「……でも、まぁ、確かに。これはこれで、持ちネタとしては良いかも―――へっ……?」

「「え?」」



 今まで呑気に地面をつついていた存在。


 彼等は即座に反応し、飛翔を開始する。



「いや、なに……? なんでハト……?」

「「ホ」」



「ホホホホホ?」

「ホッホッホ? ――ホホホ」

「なんで俺ばっかり……っ!? お助け~~~~ッ!」



 ツンツン。


 ツンツン。


 それは、指ツンツンとは似ても似つかない。

 (くちばし)って、凄く硬いからね。


 標的は、逃げる。


 とにかく逃げる。



「―――イテッ! イテェ!」

「「ホ」」

「―――痛くないけどイテェ!」

「「ホ」」



 でも、ショウタ君は敏捷が低いから。

 普通に追いつかれては、簡単に突っつかれている。



 ……何で襲われてるんだろ。



「ルミねぇ。そろそろ、可哀想だと思うんだが」

「痛そうだし」

「命令止められます?」


「うーん、私じゃないんだよね」

「「え」」



 襲えと命じた覚えもないし。


 そんな事をする理由もない。


 もしかしたら。

 アレ、皆で私を守ろうとしてくれてるのかもね?



「そう言われてみれば――あれ。アトミックちゃんを狙ってませんか?」

「頭の上を……ねぇ?」

「ハトポッポたち、何時もルミねぇの頭に登ってるし、取られたと思ったんじゃない?」



 あの子たちがショウタ君の頭を狙うのは。

 そこに居る、橙色の存在を倒すためなんだね。


 でも、攻撃通らないし。


 全部すり抜けてるから。


 結局、彼の頭に当たって。

 私の目には、まるで髪の毛を(むし)られているように見えるよ。



「――なあ。あれ、マジで禿げないか?」

「本当に頭光るじゃん。……ぺかーって」

「「………ふっ」」


「嫌だ! まだ禿げたくない!!」



 流石に可哀そうだね。

 まだ学生の身で、(きら)びやかに光るなんて。


 放し飼いは、良くない事。


 しつけは大事だから。 

 使い魔を律するのは主の義務という事で、未だ襲い掛かり続けるハト君達に声を掛けようとしたけど。


 

「こうなりゃ――行けェ! アトミック!!」



 その前に。

 ショウタ君が、予想外の行動に出た。



「ちょっ……!」



 精霊さんは気儘(きまま)という話だけど。


 今回は、言う事を聞いたようで。


 標的が動いたことで。

 襲撃者も矛先を変更。

 今度は、ワタル君が逃げる番だね。



「ホホーーホーー!」

「ナニソレッ! 今迄そんな動きした事ないよね!?」

「ホーホホーー?」

「というか、ハトの動きじゃないし!」


「鳥って、あんなグルグル回転できるの?」

「主に似たのかね」

「……凄いです」

「いや、限度があるだろ、あの動きは。……運営の遊び心か?」



 マシンガンハトポッポ。



 自らの身体に回転を掛け。


 次々と嘴を繰り出す彼ら。


 しかし、対するワタルくんも。

 流石に前衛として戦い慣れているからか、その全てを危なげなく回避する。


 目を見張るような、頭を護る攻防。


 熾烈(しれつ)な戦いが繰り広げられる中。



「……んん……? 何か、メール来たみたい?」

「一斉に来ましたね」

「なら、運営からか」



 見世物の中だから。


 私達は目を離せず。

 何重と鳴り響く通知音に、皆を代表してナナミが確認を始め。



「―――運営から、緊急クエスト告知―――?」

「「え………?」」

「え? ―――あいたぁッ!?」

「「ホホ……ホ」」



 それは、今迄あまりなかったことで。


 とても気になるモノだね。


 すぐさま全員がパネルを開き。

 ワタル君も、激しく突かれながら画面を開き。


 アップデート情報とにらめっこを始めるユウトたち。

 それにつられるように、私もまたパネルを開いて確認を始める。





――――――――――――――――――――

◇ 攻略クエスト情報(7/10更新) ◇




【概要】

 city storyが発令されました。 

 対象のPLは、王国古代都市のイベントに参加できます。


 詳細情報unknown


 古代都市来訪で個人公開されます。

 



【備考】

・発令現在、【古代都市:アンティクア】を解放(アンロック)しているPLが対象となります。

・本クエストは【人界領域】【秘匿領域】開始のプレイヤー専用です。

・一度死亡した場合、再参加は不可となっています。

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