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ルーキスinオルトゥス ~奇術師の隠居生活~  作者: ブロンズ
第三章:トラベル編

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エピローグ:小さな迷宮お宝三昧




『―――夏休み――――っ! ……良いわねぇ。昔を思い出すわ』

「だろう、だろう?」



 私達も、色々とやらかしたからね。

 方々を駆け回って引っ掻き回して。

 

 迷惑極まりない三人。


 本当に反省すべきで。


 今となっては全部思い出だけど。

 世界を飛び回ったり、大企業に就職したり、無職……仮にも教育者になったりと。


 人間、何があるか分からないものだよね。



『トワからVRでゲームしてるなんて聞いたときは驚いたけど。楽しんでるなら、良かったわ』

「本当に楽しくてね。サクヤも、是非やってみると良い」

『――私が?』

「そう、君が」

『……未だ手に入れるのも難しいような大人気ゲームよ? ――でも、コネで貰うとして、自分が強くなるよりは、誰かのプロデュースがしたいわねぇ』



 予想こそしていたけど。


 君はそう言うだろうね。


 

「………で。ねぇ、ルミ。何か騒がしくない?」

「そう思う?」



 それは、当然さ。


 実際賑やかだし。



「――ぐるるるるるるるるッ」

「ステイ、ステイ」

「お爺ちゃん、スイカは一昨年(おととし)たべたでしょ?」

「毎年食わせろ風物詩ィィ!」



 縁側を戦場として。

 熱と光を遮る軒下で行われる睨み合い。


 皆が狙うは冷たいスイカ。

 あれ程見飽きたなんて言っていた割に、出されれば飛びついていくよね。



「――それは、俺のもんだぁぁぁぁあ!!」

「「貰い」」

「あああああああ!?」



 で、ちゃんと人数分均等にある筈なのに。

 どうして、何時も取り合いになるんだろう。


 思えば、昔もそうだったけど。

 三連のプリンを用意していたのに、エナたちは三人で取り合うし、トワとサクヤも私の分を巡って喧嘩するし。


 本能なのかな。


 本能で生きてるのかな。



『―――ふーん? スイカの取り合い。ふふふ。本当に、楽しそうで良かった』

「こっちは問題なしさ。――そろそろ帰って来る?」

『いえ、もう少し、もう少しだけ色々と満喫してから戻るわ。ユウトたちには宜しく言っておいて』


「うん、承ったよ」

『じゃあ、またね』

「手すきな時に、何時でも連絡してね。じゃあ――っと」



 ……………。



 ……………。



「うめ、んめ……っぷぃ。電話終わった? サクヤさんからでしょ?」

「早く会いたいですけど」


「まだ掛かりそうだって」


「――ん、戦利品美味しい……ねぇ、優斗。そのサクヤさんって、どんな人なの?」

「完全無欠、完璧超人」

「――おう……おう?」

「大体何でも出来る天才だけど、自分じゃなくて他人を強化するのが好きな人だな」



 実際そうなんだけど。

 聞いてて、意味が分からないね。



「………何か、アレだね。トワさんもオルトゥス開発チームの凄い人だって聞いてるし……というか、ハクホウワークスの社員さんだし」

「上世代の幼馴染やべぇな」



 トワを頭脳の天才とするならば。


 サクヤは肉体面での天下無双で。


 私とは比べるべくもないし。

 本当に、ヤバいと言えるね。



「―――ふふっ、本当にね。あの二人は、とんでもないんだよ」

「「……………?」」

「自分を勘定に入れ忘れてません?」



 さてさて、何の事やら。


 携帯をポケットに収め。

 伸びをしながら立ち上がった私は、前払いの報酬を粗方食べ終えてしまった子たちに向き直る。



「さぁ、おやつ休憩は終了だ。引き続き、倉の整理を手伝ってもらうよ?」

「「はーい!」」



 そう、今は休憩時間だったんだ。


 何時ものお礼にと、皆が何でもしてくれると言ってきたので。

 長らく手付かずだった整理をやって貰ってるんだよ。



 ―――で、意外なことに。

 


 ただのお掃除の筈なのに。


 皆、凄く嬉しそうだよね。



「――だって、スゴイじゃん!」

「久しぶりに倉入ったけど、軽く探しただけで古そうな巻物とか、よれよれの登録証付き刀剣あるしな」

「ロマンの塊ばっか出てくるし」

「凄く楽しいですよね」



 年代物だけは多いからね。

 昔から、整理整頓が苦手な家系だったのかもしれない。



「というか、ルミさんかねもですよね?」

「かねも」

「――金持ち……?」



 今日日聞かない方言だ。



「こんな古風な家にもなると、昔ながらの家業とかあったんじゃないですか?」


 

 現金なショウタ君とは別に。

 ワタル君は、そちら方面で興味津々な様子。


 歴史が大好きらしいからね。


 こんな骨董も好きなのかな。



「うん、遡って調べた事はあるよ。確か、昔は――加持僧か、陰陽師に連なる一族だったとか?」

「「おんみょうじ」」

「――って、どんだけ昔ですか? ソレ」



 確か、だけどね。

 今はコレと言った財もないし。


 この地方に暮らしているから。


 大分昔に、何かやらかして。

 こちらへ流されちゃったんじゃないかなって思うんだ。


 

「昔は、一族の家財とか入っていたんだろうけど。倉の中身も、多くは博物館とかに寄贈しちゃったから、残っているのは価値の低いものばかりさ。だから、その辺は心配しないで整理に勤しんでくれたまえよ」

「「アイアイさー」」

「女性だからマムじゃない?」



 ガラガラ、ゴロゴロと。


 埃舞い、虫が逃げ出す。


 流石に子供たちのフィジカルは凄いね。

 もう、終わらせそうな勢いだよ。 


 整理の為、一度雑貨を運び出して。


 再び迷宮へ潜っていく冒険者たち。



「―――ルミさん? この潰れたおにぎりみたいなの、なんすか?」

「それは、馬の鞍だね」

「こっちの長いのは?」

「昔の物差し――尺じゃないかな。一尺もないから、儀礼用で――多分、象牙製」



 出てくるでてくる戦利品。


 保存状態とか大丈夫かな?

 本当は、然るべき収蔵庫で適切な管理が必要なモノだけど。



 安物だろうし、大丈夫か。



 やがて、皆で倉へ足を踏み入れて。

 外に出していたモノを、大体の分類別により分けていくんだけど。


 うん、埃っぽい。



「何か、視線感じんだけど―――ヒッ」

「――生首?」

「ルミ姉さん。あの顔は……?」

「木製の作りモノだね」



「―――じゃあ、これはっ! これはなにっ?」



 次にナナミが持ってきたのは―――重箱のような木製の箱?

 あれは確か……あぁ、そうそう。



「それは、コトリバコだね」

「――てー、なに?」

「鳥さん入れんすか?」


 

 エナの方が詳しいんじゃないかな。



「確か、都市伝説的な呪いの道具……で…す……へ………?」

「「え」」



 青くなっていく子供たちの顔。


 こっちの保存状態も心配だね。


 お腹冷えちゃったのかな?

 アレだけ沢山スイカを齧ってたから。



「「ひゃあぁぁぁぁぁぁ!!」」



 不意に、ナナミが箱を放りだしてしまい。

 偶々着地点に居たショウタ君が放りだし、ワタル君が放りだし。


 どうやら、彼等は。


 爆弾ゲームの気分らしい。


 

「―――何でこっちまたぁ! ――わたし、いらない!」

「遠慮しないで!」

「あげます!」

「――おい、将太。パスだ」


「いら―――ん!!」



 そんなこんなで押し付けているうちに。

 

 巻かれていた紐がほどけて。

 蓋が、カパッと空いてしまって……。


 偶々、倉の隅へ飛び。

 敷かれていたふかふかシートの上へと墜ちたソレは、真っ白な埃を発生させる。



「けほっ――けほっ……七海! 何で投げるんですか! 危ないですよ!」

「だってぇ……!!」

「ボールじゃないんだぞ」

「おい、てめぇもパスとか言ってたよな?」

「人の事言えないよね? 本当に、変なものでも出てきたら――」




『―――我の封を解いたな、愚か者共が』




 ……………。



 ……………。




「「~~~~~ッ~~~~~ッッ!!?」」




 何だろう、この声。


 突然、底冷えするような低い声が響き。

 ガタガタ震え始める子供たち。


 ゲームの中は勇敢でも。


 現実はまた別枠らしく。



「―――うそッ! うそッ!?」

「………ふぁ」

「変な封印解いてる!」

「な……南無妙法蓮華経――」

「お、おい、神社娘。仏教になってんぞ―――で…これは……何だ?」



『何を望む。富か? 名誉か? それとも、復習か?』



 声は、誰に話しかけるでもなく。

 言いたい事だけを、つらつらと紡いでいて。


 やがて。


 壊れたように同じ単語を繰り返す。



『フクシュウフクシュウフクシュウフクシュウ』



「いやあぁぁぁぁ―――!! 呪い殺されるッ!?」

「――のろ……きゅう……」

「落ち着けって!」

「無理無理無理ぃ! 助けてルミねぇ!!」



『―――そう、フクシュウだ。夏休み、良い事だろう。しかし、復習を忘れるでない。繰り返し続けることが肝要なのだ』



「ふくしゅ………ん?」

「ヒイイイィィィィ……!」

「恵那! 神道ぱわーでどうにかして!」

「無理です、怖いです」



 暴れてくれるのは良いんだけど。

 存外に、埃が酷くて。


 あ、ちょっと……む。




『―――何を呆けておるか、人の子たちよ――くちゅんっ』




「「……くちゅん?」」

「―――はぁ」



 うむ、うむ。やっぱり埃っぽいね、ここ。

 皆も暴れてるから、余計に舞い上がるし。


 えぇ……と?


 次の台詞は。




「―――――ルミねええぇぇぇぇ――――――――ッ!!」

「何やってるんですかっ!!」



 あ、バレた。

 初歩的なミスをしてしまったね。



「―――え? ルミさん?」

「……………? ――ぇ……え?」



 呆けていたワタル君とショウタ君も。

 状況が見えてきたようで。



「――ねぇ、優斗。もしかして……」

「ルミねぇの腹話術だ」


「「……………」」



 ちょっとした悪戯心だったんだけど。

 思いの他盛り上がったね。



「ってー事は……?」

「――あのくしゃみ」

「ぐすっ……。……へへへッ。可愛いでしょ、うち等のお姉さん」

「私は、最初から――ぐずっ」



 涙声隠せてないね。


 余程怖かったらしく。

 ナナミとエナは、怖がらせた張本人の胸へ顔を埋める。


 おぉ、よしよし。



「――レベル高すぎません?」

「もう、世界でも取りに行きませんか?」

「んう? ―――出来るかなぁ」



「絶対にダメッ!!」

「もう許しません!」



 でも、抱き着いてる子たちが凄く嫌がってるからなぁ。

 私も、今は目先の楽しみが大事だし。


 もう、世界は良いかな。



「というかさ。ねぇ、優斗。少しは怖がったら?」

「……俺の首筋見てみ?」


「――わぉ、冷や汗びっしょり」

「格好付けてた?」

「ちょっと早めの肝試しって所だな。危うく失神だ」



 実は、コレで怖がりだからね。


 最初、凄く震えてたし。



「じゃあ、肝試しは休みに入ったら本格的にやろうね」

「「ノーセンキュ」」

「ルミねぇのソレは洒落にならん」



 フルフルと、一斉に首を振る小年少女。

 首が飛んでいってしまいそうな勢いだ。


 でも、本当に。


 この子達を見ていると。

 本当に退屈しなそうで。




 ―――楽しい夏休みになると良いね。







ここ迄のお付き合い、有り難うございます。

エピローグという事で、第三章は終了です。


盗賊編

採掘編

海岸編

三つ合わせて旅行編……と。

30話以上と、最長の章ではありましたが、如何でしたか?

個人的には、長いとダレる気がして。実際、海岸都市編はかなりダレてしまった印象があります。



では、予告を。



次章は、〇〇都市での物語を想定。

その前に、三話構成で幕間のようなモノがございます。

宜しければ、このままお付き合い頂ければと。



次章まで、また一週間程御休みを頂きます。

ゆっくりお待ちください……ではでは。



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― 新着の感想 ―
[良い点] コトリバコのくだり好き。 ルミ姉も悪戯好きですねー。
[一言] すごく好きです!
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