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ルーキスinオルトゥス ~奇術師の隠居生活~  作者: ブロンズ
第三章:トラベル編

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第11幕:フレンドのためならエンヤコラ




「「――コラ、エンヤコラ」」



 僕はテツ……PLネーム「テツ」だ。


 一応、今年入学した高校一年生で。


 学校では目立たない生徒。

 自宅では生粋のゲーマー。


 そんな、ごく普通の学生だけど。

 大人気VRMMOの【オルトゥス】は、サービス開始からプレイしている。


 古参と言って良いかな。


 戦闘は超苦手だけどね。


 戦いが不得手な分、普段は専属の鍛冶屋に引きこもって、ひたすらに【二次職】のレベルを上げている。

 それもこれも、僕が鍛冶の魅力というものに憑りつかれているからで。


 あと、過去のトラウマとかで。


 一緒にゲームはアレなんだよ。


 特に、こういうゲームは。

 妬み、(そね)みとか。

 奪い合いだとか。

 過去に元友人たちとプレイしていたゲームでも色々あって、結局ソロが良いという結論になったんだ。


 別に寂しくはなかった。


 実際、毎日が楽しくて。


 一人の鍛冶職人として。

 ひたすらに鎚や金床、鉱物と向き合う楽しい時間、僕だけの世界が広がってるんだ。



「「エンヤコラ、エンヤコラ」」 



 そんなある日の事。

 お客さんとの何気ない話で、【採掘天国】なるイベントが鉱山都市で開催されるのを知ったんだ。


 激レア鉱石の鉱脈。


 換金アイテム多数。


 そんな美味しい話を。

 僕が見逃す筈もなく。

 ピッケル片手に、勇み足でソロ採掘へと乗り込んだわけ――なんだけど。



「エンヤコラ――っと」

「「エンヤコラ!」」

「エンヤコラ……っと……すみません。この掛け声、意味あるんですか?」

「「さぁ?」」

「気分とかですね」



 何だろうね。


 この状況は。


 いつの間にかソロプレイじゃなくなってて。

 周りには複数の元気なPL。

 皆と共に、僕は仲良く()()労働に従事していた。



「――テツ、疲れてないか?」

「あ、うん。大丈夫…」

「休憩もしっかりね~」

「あ、はい。じゃあ、ちょっとだけ」

「水分補給……は、必要ないんでしたね」



 すっごいフランクなんだけど、彼等。


 落ち着いた黒髪の青年。

 大人っぽい雰囲気のギルドリーダー「ユウト君」


 熱血系っぽい容姿で。

 しかし、肉体的にはか弱い術士らしい「ショウ君」


 眼鏡が似合いそうな容姿。

 秀才感が漂うけど、力強い腕力の「ワタル君」


 元気いっぱいの少女。

 学生だったらクラスの中心に居そうな「ナナミンちゃん」


 和風美人っぽい少女。

 でも、何故か頻繁にコケる「エナリアさん」



 彼等は、同じギルドらしい。



 ―――そして、もう一人が。



「エンヤコラ、エンヤコラ」



 ルミエール…ルミエさん。

 僕の数少ないフレンドの一人にして、この掛け声の元凶だ。


 このゲーム【オルトゥス】のPLは、皆が平均以上の容姿に設定されることが多いらしいけど、そんな中に在っても一際輝く金色の長髪と、蒼の瞳。


 これはゲームだけど。


 もしも現実に居たら。


 一目惚れ間違いなしの容姿で。



 ……うん、良いよね。

 


 なんていうか、何だろ。


 凄く不思議な人なんだ。


 表情の変化は乏しいけど。

 その他の部分から優しさが滲み出ているようで。

 なんてことない触れ合いだけ切り取っても、本当に良い人だというのが分かる。


 共同採掘に誘ってくれたし……ね。

 なんだかんだで、凄く楽しいんだ。

 


 さて、そろそろ。


 休憩は終わりだ。


 折角誘ってくれたんだから、恩の一つでも返せれば。

 僕、まだ一回も鉱石掘り当ててないけど。



「――よし。じゃあ、やりますかぁ」

「今日も元気に始めましょう」

「オーケー。さぁ、続きだよ。エンヤコラ――」

「エンヤ……あれ?」



 僕も掛け声に合わせて。


 先程まで掘っていた穴。

 

 そこそこ深くなった穴を、再び掘り始めようとした―――刹那。


 ピッケルの先に。


 岩石とも違う硬い感触。


 急いで得物を放り出し。

 丁寧に、丁寧に表面に飛散していた砂を取り除くと。




「………これ―――えっ?」

 




 ―――燃えるように紅い鉱石が顔を出していた。

 



  ◇




――――――――――――――――――――

 【素材名】竜骸晶(りゅうがいしょう)(焔)


 RANK:A


【解説】 

竜種の体内で生成される純粋な魔力塊。

圧縮された根源の炉心。


竜種は死しても魂は消えず。

その力は太古の地層で鉱物へと変質し、竜骸晶となる。


【用途】 

売却用/武器・工具の素材となる。

――――――――――――――――――――




「「……………」」



 人の目を(はばか)るような沈黙。

 ただ、ひたすらに沈黙が広がっている人の輪。


 テツ君が掘り上げた鉱石。


 それは明らかに未知の品。


 ナナミの鑑定画面を皆で見つめ。

 忙しなく目配せを交わし。

 まるで……まるで悪いことを隠すかのように、皆で沈黙を貫いて。



「――ねぇ、コレってさ――?」



 しかし。


 やがて、一人が重々しく。


 辺りを伺いつつ口を開き。



「……ヤバい、ヤバない?」

「ヤバいですね」

「聞こえない方が良いよな」

「あぁ。それは間違いないが……声を潜めて一斉に行くか」




 「せーの――っ」




「「――激レアアイテムだこれ―――っ!!」」



 やはり、間違いなくて。


 トンデモナイ物らしい。


 両掌の納まるサイズで。

 紅玉のように輝く楕円形の宝石。

 向こう側は見えないけど。

 何処か引き込まれるような感覚があって、まるで内側で炎が燃え盛っているような…不思議な鉱石。



「竜骸晶……聞いたこと無いよ」

「だな。しかも、コレは――」

「属性付きの更なる希少種。武器素材系の中には、稀にそういうのがあるって聞いたけど……元々がAランクでそれって、取引価格も凄いけど――まず、現環境じゃTPでもそう簡単に手には入らないよ、絶対」

「「ほぇ~~すっご」」

「本当に分かってる?」

「じゃあ、とにかく凄い鉱石って事なんだね」



 眉間にしわを寄せてパネルを覗く彼等。

 激レアアイテムの魔力と言うべきか、皆がソレを凝視しているみたいで。


 鉱石を手にするテツ君は。


 我を忘れて放心していて。


 でも、何だか……。

 変な事を考えてないよね。

 段々と、その表情が何かを決心するモノに変わっていき。



 ……………。



 ……………。



「―――あの、良ければコレ受け取ってくれませんか?」

「「え」」



 それが過ぎのち。


 意外な事を言う。



「ほ、本来なら、僕が手に入れるようなモノじゃないですし……。誘ってくれたお礼と言いますか、何というか――」

「「ノーセンキュ!!」」

「………え?」

「え、じゃない。当然だろう、それは」



 ユウトの言う通り、当然だ。


 何を言い始めるかと思えば。



「これは、もう君の物だろう?」

「でも、僕はちょっと――」

「気負う必要なんてない。俺たちは、その程度で妬む様な育ちの良さはないからな」

「ふひひ…育ち悪くてサーセン」

「ま、分かんなくはないけどね」

「こういうゲームだし、僕たちも皆妬みとかは経験してるし。テツ君も、そういうのがあったんでしょ?」


「……………はい」



 平等じゃないのがオンラインゲームだから。


 その辺は割り切るべきだ。

 彼の優しさは美徳だけど。


 今回は相手が悪かったね。

 

 やっぱり、ゲームは楽しむモノ。

 それは自分だけに限った話だけじゃなくて、仲間皆が楽しめるように動いている彼等がそういう選択をするのは当然なんだ。



「さぁ、早くしまってくれ。今にも手が伸びそうだ」

「――え? ……えぇ――っ!?」

「じゃあ、私も」

「俺も」

「私も」

「僕も」

「――え……えーと……?」

「く――ふふッ――さぁ、テツ」

「――あ! ……じゃあ、僕――が?」

「「ドーゾドーゾ」」



 また、随分と古いノリだね。


 彼等も知らない世代なのに。

 どういう所で仕入れてくるのやら。


 でも、心配が払拭されたように。

 嬉しそうに鉱石を撫でるテツ君を見ていると、此方も嬉しくなってきて。



「――でさ、どうしよっか?」



 ブツが手に入ったのなら。


 次は望むべき展望だろう。


 これをどうするか。


 どう加工しても自由だし。

 必要なら売却だって良い。

 完全に所有者であるテツ君の権利であり、彼自身が決めるべき事だ。



「……選択肢は色々あるが。その辺、どうすんだ?」

「えぇと――折角だし、コレで鎚を作ってみるとか、ですかね?」

「――あぁ!」

「槌――かぁ」

「そういう手もあるんですね」



 そっか。


 説明には、確かに「武器・工具の素材」とあったね。

 鎚だって作れる可能性が高い。


 そして、工具が出来れば。


 彼の実力も伸びるだろう。


 そうなれば、きっと……。

 二次的な利益を楽しみに、私たちは彼がアイテムを仕舞うのを確と見届ける。

 


 見届けた、丁度その時だった。




「―――諸君! 作業は捗っているだろうか―――ッ!」




 広い採掘場にこだまする声。


 威厳を感じさせる男性の声。


 声の方向へと。


 私達…PL達は視線を向け。

 その視界に映り込んだのは――大柄で高級将官の様な服を着こんだ、如何にもな貴族さんだった。

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