表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルーキスinオルトゥス ~奇術師の隠居生活~  作者: ブロンズ
第二章:マニュアル編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/299

第12幕:大乱の開戦

―――――――――――――――

【World Quest】 始まりの進撃



【概要】

現在、魔族軍の先遣隊が襲来中。

人間国家の重要都市4か所を襲撃しています。

プレイヤー間で協力し、総力を挙げて撃退しましょう。


個人の挙げた戦果に応じて【ギルドポイント】及び【戦果ポイント】を獲得可能。

【戦果ポイント】の引き換え対象賞品は、クエスト終了後に公開されます。



【勝利条件】

・敵軍の殲滅(main)

・敵将個体の撃破(sub)


【敗北条件】

・防衛戦線の壊滅

・参加プレイヤー8割の死亡


【備考】

・本クエストは【人界領域】【秘匿領域】開始のプレイヤー専用です。

・参加プレイヤーは、都市周辺に待機中のみカウントされます。

・一度死亡した場合、再参加は不可となっています。


―――――――――――――――




 間違いのない、警告文。

 勝手に表示されるんだ。

 この場の皆が、目の前に表示されたであろうシステムウィンドウとにらめっこ。


 魔族…その先遣隊?


 敵軍に、敵将個体?


 重要なワードが幾つもあって。

 大きく歓声が沸く事で、うなぎ上りに興奮が高まっていく。



 でも……ちょっとおかしいね。



 表示が入ってから少し経つけど。

 相変わらず、平原はPL以外の動作が少なく…静寂。


 それらしき敵の姿なんて。


 それこそ、何処にも……ッ!



「……おい。冗談じゃねぇぞ」



 それは、誰の言葉だったか。

 声に呼応するかのように、次々と空を見上げるプレイヤーたち。



「「―――ッ!!?」」



 彼らが次に放った一言は。

 おおよそ彼と同一のものだっただろう。


 彼が、彼らが…私たちが。

 

 その先に見た物は。



 ―――空を埋める程の飛行物体。



 爬虫類を思わせる鋭い大牙。 

 太く発達した顎は強く長く。

 広く大きな飛膜を有する翼は、蝙蝠など及びもつかない巨大さ。


 そんな怪物が数十…いや。


 もしかしたら、数百…?


 竜と呼ぶべき魔物の群れ。

 それらの背に跨るようにしてこちらを睥睨しているのは、魔族と呼ばれる者たちだろう。距離があるから詳しくは分からないけど、全員が真っ黒な鎧を纏っていて、如何にも敵役だ。


 そんな中でも、一際大きなを放つ飛竜。


 黒麟の竜に跨っているのは。

 これまた異彩を放つ黒騎士。

 騎士は、プレイヤーたちに見える距離で右手を上げると、そのまま不振り下ろし……わぉ。



「――何だ? 今度は何だッ!?」

「揺れて…地震?」

「なわけないだろ。ありゃ、どう見ても……」


「どう見ても、何です? 見えませんが」

「いや、ありゃ……うん」

「お前等、ゲームの中でまで現実逃避すんな。アレは……はははッ」



 黒騎士の所作の後、間もなく。


 平原を揺らす、大きな地響き。


 その発生源は、見ればわかる。

 目視できる距離へ来たのは。

 大地を揺らしながら現れたのは……魔物の群れだ。


 今日までに、鉱山都市周辺で見かけた魔物。

 それと、ほぼ同一の種類の個体たち。

 それだけなら、まだ新鮮味は少なかっただろうけど…次から次へと、ソレ等は雪崩のように押し寄せてきて。


 陸の魔物に、空の魔族軍。

 地上の魔物だけで、数千にもなるような数なのに。


 ――なんと…もはや。


 それは、まるで最終戦争の様相。

 全ての終わりと思える大軍勢で。

 こんな初めての…最初のワールドクエストに持ってくるだなんて…こんなの。


 ――最高じゃないか。


 ――流石、トワだね。



「凄く楽しくなりそうだね? みんな」

「……えぇ? 無理でしょこれ」

「いい最終回だったな」


「もうちょっとです、諦めないでください」

「始まってすらいないんだけど」

「――というか、システムリソースどうなってんだよ。後の事考えてんのか?」



 絶望も含まれている。

 呆れも含まれている。

 でも、皆の表情は興奮を隠しきれていない。


 だって、ゲームだから。


 出来る限り大胆に、大仰に。

 ロールプレイを楽しむ世界感なのだから、湧き上がる感情を抑える必要などなく、皆が両手を広げてこの状況に歓喜・感嘆の息を漏らす。


 そして、投げるべき賽は。


 既に、投げられているから。



「――俺が一番槍だぁぁぁッ!!」

「「ひゃっはーッ!」」


「突っ込むなバカ共!」

「盾持ちは前に出ろ!」

「遠距離はもう撃ってくれ。狙撃手派生は高みの見物決め込んでる連中を落とせー!」


「ヌーブ! エアプ! 指揮官ヤメロ!」

「届かねえよあの距離じゃ!」

「取り敢えず、魔物を狙え。上の連中は無視だ!」



 ――そら、始まった。


 終ぞ……否、いな。

 開戦(はじまり)の火蓋はあっさりと切られ。

 最前線にいたプレイヤーの一団が迫りくる魔物の群れを待たずして前へと突っ込み、重装備の者たちが盾を構える。

 味方を巻き込まぬよう、遠方へと放たれる矢と魔法は、雨の如く。 


 両軍の最前線は滝の如く。



「……後ろの方に居て良かったね」

「ああ、ちょっくら機を伺って、それから攻めるのが賢明だろう。焦りと興奮で突っ込みたくなるのも分からなくはないが、コンティニュー無しだからな」

「流石、リーダー」

「おう、頼りになるな」



 こういう時。

 冷静な人物が一人いるだけで違うモノ。


 ユウトはそういうのに向いているからね。



「――でも、展開早いよ? コレ」

「あぁ、すぐ落ち着くだろうな」

「では、私たちも行きましょうか。――正面、で良いですか?」


「OK。いつも通りの陣形で、固まって行くぞ。――じゃあ、ルミねぇ」

「うん。生きて会おうね」


「そら、突撃じゃぁぁあ!」

「将太、モヤシが突っ込むの止めてくんない?」



 様子見は、あくまで様子見。

 戦いに来て、何時までも見ているわけにはいかないから。


 雄叫びをあげ。


 ―――彼らも、走り去っていった。




  ◇


 


 ……見渡しの良い位置取り。


 戦場を俯瞰しながら。

 私は一人丘の上で佇んでいた。


 周囲に誰もいない訳じゃない。

 未だ機会を伺い続けるプレイヤー、一度体勢を立て直すために転進してきた者たち、そして、幾人かのNPCも目に見える範囲で駆け回っている。


 一応、最終防衛ラインは。


 このさらに先……後方で。


 しかし、プレイヤーがどうこうできるものじゃない。

 私たちはあくまで替えの利く傭兵として集められただけの、駆け出し冒険家という扱いだろうから。


 実際、戦場は押され気味。


 というより、コレは。

 バランスの配分がおかしいのかな。


 最初のクロニクルだし。

 或いは、見誤った?

 いや、まさか…トワに限って。


 でも、魔物の数量が(おびただ)し過ぎる。

 増してや、数の暴力は圧倒的で。

 熟練のPLであろうとも、飲み込まれれば敗退は秒。


 よしんば、魔物が弱体化していても。

 あの数を粗方倒しきる頃には、相当数のプレイヤーがリタイアするペースで。


 そこから、更に。

 様子見の敵たち。

 上空の彼等と戦闘に移行するのとしたら……あぁ。



 ――そう、まるで。



 ――まるで、勝たせる気が無いみたいだ。



 上の敵が、魔物より弱い筈はない。

 ましてや、敵将など最たるもので。

 釣り下げられた人参に向かって、必死に走る無知の兵隊(プレイヤー)。それを指揮するは、未だ情報の少ない帝国や王国の政府。


 彼等の目的も不明。

 手持ちの兵隊は後方支援に徹していて。


 

「――あぁ、凄いね。これは、戦争そのものだ」

「行かないのか?」

「うん。ちょっと様子を…んう?」


 

 声を掛けたのは誰だろう。

 とても、可愛い声だけど。


 知人は、皆前線へ行った筈で。

 記憶を確かなものと感じながら、声の方へと目を向ける。



「「……………」」



 にらめっこしたのは女の子。

 トワに劣らぬ小さな身体で。

 この世界でも、殆ど目にしたことがない…つまり、かなり珍しいであろう銀色の髪。


 半眼でこちらを見上げ。

 首を傾げる少女の姿。

 彼女は、本当に親友そっくりで。



「――うん。私は戦闘が不得手なんだ。だから、もうちょっと機を見てから動こうかな」

「そうなのか?」

「そうなんだ。君は…もう行くのかい?」



 私の言葉に頷く少女。

 その動きに合わせて、背負った武器…不釣り合いなほどに大きな剣が揺れる。


 これも、ゲームならではだね。

 現実だったら、間違いなく。

 彼女は重量に押しつぶされるか、剣にぶら下がっていた筈。


 にしても、面白い子だ。

 ずっと無表情だなんて。

 感情を読ませない表情…所謂鉄仮面で、少女は口を開く。



「もうそろそろ、良いかなって」

「ふむ。機を見るに敏…中々の選択だ。じゃあ、右翼側に行くのが良いんじゃないかな」

「……なんで?」

「君はソロのPLなんだろう? 現在の戦局で言えば――」 



 ……人界戦力の割合は。


 左翼が四割程度で。


 右翼が三割程度で。


 後は、正面が…三割程度。

 一見すれば左が優勢かつ安全に見えるけど、よく見れば、パーティーやギルドと思われる統率の取れた隊は、正面と右翼に偏っている。

 連携の取れた彼らは、ポイント獲得のため、最も効率よく敵を狩るだろう。

 

 その分、取り零しや。

 旨みの薄い箇所には目を向けない筈で。


 だからこそ、そこに入れば安全に少数を相手できる可能性は高く。

 逆に、ソロプレイヤーが多い左翼側は統率に難があり、乱戦なので流れ弾も、何処から敵が来るのか分からない危険もある。



「――あと、パーティー(かれら)の隙間を少しでも補強するために、自由に動ける人材が必要だと思うんだ。君が一騎当千したいなら別だけどね?」

「おー!」



 目を輝かせて万歳をする少女。


 どうやらお気に召したようだ。



「じゃあ、右に行ってくるな」

「うん。危ないから――気を付け…て……ね」



 ―――行っちゃった。

 

 彼女のレベルはかなり高いようで。

 常人では、まずあり得ない俊敏さ。



「……さて。私はどうしようかね」



 戦局は先の解説通り。

 だが、私が行ったところで…だ。

 無策では、間違いなく踏みつぶされて終わり。それこそ、味方の流れ弾が掠めただけでもアウトかもしれない。

 だって、魔法防御ゼロだし。



「……うん。決めた」



 最前線に行かない程度で。

 回復アイテムの支給と。

 後は、虫の息の敵を狩るお掃除作業といこう。


 なに、大丈夫だろうさ。

 資源はこれ以上ない潤沢さなんだから。


 そうそう万策尽きた…なんてことにはならないよ。


 そうと決まれば、いざ前線へ。

 先程の少女を追いかけるように、私は右翼側へと歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ