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ルーキスinオルトゥス ~奇術師の隠居生活~  作者: ブロンズ
第八章:フォール編

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第18幕:輝く威光で不定を融かせ




「―――何故、我が何の準備もせぬまま無謀な戦いに身を乗り出すと思う? 阿呆が」



「そのような愚、そのような負け戦など……、このクラウス・フォン・ビスマルクが成すものかよ」

 


 異質だった。

 今までまるで脚光の当たらなかった役に、突然スポットが当たったような。

 いや、まさしくそうだ。


 現状、サーバにおける最強のPL達。

 人界の最高戦力12聖天。

 人界三国の均衡を保つ光の御子……。

 およそこの世界の主役級と言える存在等が舞台で活躍する間に、裏方として動いていた筈の存在が、壇上へ躍り出て全てを攫う。

 この状況、この現状すら、或いは全て「世界のシナリオ」通りだったんだろう。


 シナリオ通りという事は、つまり順調であるという事の意。

 今回で言えば、全ては彼が思い描いた通りだったんだ。



「―――――ォォォ」   


  

 彼の覇気に何を感じ取ったか。 

 今まで全方位無差別攻撃を行っていた妖塊が、此処へ来て初めて空間を震わせ、発声器官不明のままに鳴く。

 まるで何かに反応したかのように。



「―――退……避ぃぃぃッ!」

「「……!」」



 そのまま、一方向へ―――次々と、侯爵様へ向け放たれる触手の雨は……言うなれば、何だろう。

 まるで、何かを取り返そうとしているかのような……。

 


「させませんよ―――、パルテノ」

「フォディーナ侯爵閣下へ矛を向ける……即ち帝国に刃を向けていると心得てください、怪物」



 巻き込まれた罪のないPLさん達が塵芥と吹き飛ぶ中、大地を平らげて尚余りあるほどの災害の一撃たるそれらは、鏡合わせのように出現した黄金の防壁に迎撃され、衝突した直後、銀光に両断される。


 断面も鮮やかだ。



「―――……さて」



 首尾は完璧……私達は空気。

 そんな状況で彼が虚空から取り出したのは……うん?


 青色で半透明の―――ボーリングのボール?

 大体そんな感じ。

 本当にまん丸で、本当に三つの穴があって、持ってよし、投げて良し……いかにも投擲しやすそうな形をしている―――ボーリングボールだよね?

 ガラス質の青色……淡いサファイアみたいで凄く綺麗だけど……あれ、何処かで……。



「……なんぞ?」

「老後の楽しみか何か?」

「お貴族老人会でボーリング大会?」

「マイボール持参はガチ勢だろ」



「―――異訪者らの攻撃、通らぬ様子。間近で見させてもらったぞ。して、陽の御子よ」

「……はい、フォディーナ侯爵さま」

「かの神の防壁は……、結界か?」

「……では、ないと」



「うん……? ね、そこって重要な所なの?」

「案外」

「防御魔法なのか、結界魔法なのか、はたまた別の守りなのか。種別が全く違うからって事だろ」

「対応の仕方も変わってくるんです」



 重要らしい。

 先程から皆の攻撃が神様本体にはまるで通らないアレ。

 てっきり、リアさまが使うような結界的なものだと思っていたけど、そうじゃないみたいで。



「なれば、やはり」



「……不定の神よ。異形の化生(けしょう)よ。貴様の防御は異物を除くための自動迎撃機構とみたが。なれば、()()()()()()()は果たして弾く事が出来るか?」



 太い太い筋肉質の首をぐるりと回し、肩を回し。

 まるでマウンドに降り立ったかのように足を上げて手を振りかぶる彼は……。

 


「タウラスよ! 打てぇぇぇ!!」

「御意に……ッ!」



 やきう始まったね。

 ストライクはストライクでもベースボールの方だったみたいだ。

 丸太のような剛腕から繰り出された青ボールは放物線すら描く事なくギュンと飛び、前線に居たタウラスさんの下へ……。


 そのまま、掬うように放たれた大槌による期待大の一打。



「「!」」



 特大のホームランは、違うことなく真っ直ぐにスラ神様へ吸い込まれ……ぁ。

 弾かれない……?

 すんなりと、どころか触手も防御するつもりがないみたいに抵抗一つなく……どうしてこうもあっさりと。



 ………。

 呆気なさに反し、変化は歴然だった。

 それまで黄金色に輝いていた巨大スライムが。

 神様の色が、ボーリング玉と同じ青色へと染まっていく―――まるで力が抜けていくかのように……急速冷凍のように。



『――――ナニを……』



 ―――と……空間そのものにこだまする声は、恐らく神様と同化しているアートルム君のもの。

 意識が混濁しているような、ややろれつが回らないような。


 余裕綽々だった時とはまるで違う声色は。



『ナニを、シタ!? ビスマルク……!! ボクのシレイガ、カラだが……ウゴカ、ない』


 

「そうか、ご苦労。……まだまだ残弾はあるぞ。掘り尽くさんばかりに根こそぎ、精製しておるからな」



 攻守交代とばかりに、余裕を浮かべる侯爵様。

 彼の手の中には、また新しい青ボールが。



 ―――やっぱりあれって……。



「ね。かなり大きいけど、蒼晶石……、鉱山都市のイベントで掘った換金アイテム、だよね?」

「「ぁ」」

「そうじゃんあれじゃん!」

「あの時の全然文面読めなかったやつじゃん! 思い出した!」



 そうだ。

 色々と美味しい思いが出来たイベント……テツ君が激レアアイテムを掘り当てたあの件で、結構たくさん掘れたイベント専用のアイテム。

 採掘の依頼主も彼だったし、かなり大規模な採掘だったから確かに大量入手できただろうけど。


 あれが、どうして……。



「「―――うげッッ!!?」」



 と。

 戦場のあちこちで悲鳴に近い叫びが上がる。



「―――……マジ……? 皆、コレッ―――“看破”、かんぱぁ!」




――――――――――――――――――――

 【素材名】蒼石晶(特塊)


 RANK:―


【解説】 

鉱山都市でのみ産出する固有の鉱石。

純度の高い魔力を含み、機器の動力源となる。


地底の神々が一柱。

不定神アスラ・シャムバラの肉体、その破片。


有する属性は水。

不定形を象徴する流動の神を構成した魔力塊。



【用途】 

換金用イベントアイテム

――――――――――――――――――――




 ……。

 あ、そういう。



「蒼晶は、大地に溶け落ちた神の残骸。元より神の肉体であるのだから、拒絶される謂れもない。手を加えて不活性化したとて、吸収は、無類」



「火山と、同じよ。目覚め、活性化したというのならば……再び不活性化すれば良い。化石に戻してやれば、大人しく地の底へ再び戻るであろう」

「「―――――」」



 解説もする、結果も出す。

 圧巻だ。

 僅か一、二分の間に空間の支配者になっちゃった。

 12聖天さんや御子様たち……彼等ばかりに目が行きがちだったけど、伊達に帝国の大貴族張ってないね、鉄血候様。



『ナン―――、ダト……』



『フザケルナ、タヌキが!! こんなコザイクでカミをタオセルト―――』

「倒す? 愚かな」



「打ち倒す必要など無し。滅ぼすか、滅ぼされるか、その二択しかないという方が愚かなのだ、人のふりをした戦争脳の化生めが。化生と話す程我も暇ではないのでな。人間には人間のやり方があるという事だ」



 「ヒトの真似事をするのならばあくまでやり抜け」……と。

 言葉を切った彼は大きく息を吸う。



「タウラス!!」

「御意に―――属性付与、蒼き浄化の焔よ。魔力食らいて燃え盛れ」



 再び放たれた青ボールを、今度は大槌で叩き潰すタウラスさん。

 砕けた蒼晶。

 その破片が空間を舞い、皆の武器へと吸い込まれる。


 ……。

 刀身に、槍先に、鏃に、拳に……。

 蒼い炎が灯り、涼やかに燃える。



「―――ワタル君。拳って熱くないの?」

「……むしろひんやりしてますね」

「蒼炎かっけー! 何で俺には無いの!?」

「術師は……どうなんだ? ……属性、蒼炎……イベント専用属性? 贅沢だなー」



「皆―――今が好機である! ヤツの不死性を剥奪した。今ならば……!!」

「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」」



 狼煙が各地に上がる、格好良い炎に皆のテンションも上がる。

 これは、俗にいう確定演出―――成程、ここから勝利への進撃が始まるって訳―――。



「……お?」



 何か今真横をガラスが飛び散ったような……。




『ォォォォォォォォォオオ―――――』




「ぐッ……ぅ!? 攻撃はやッ!?」

「流れ弾ヤベェしこの物量はマジで殺しに来てるだろ!?」



 今までの攻撃は果たして何だったのか。

 慟哭に震えるように鳴く神様……癇癪染みた触手攻撃は先の倍以上の速さで、急に方向を変えたり、針状だったり、分裂したり……単なる質量攻撃に収まらない多様性をもって襲い来る。


 たった一瞬で、また大勢が倒れる。


 ある意味では、規則的な攻撃であるからこそ受け切れるというものもある。

 精鋭である彼等だからこそ、相手の動きに規則性を見出して戦う。

 件の大会もそう。

 どちらが先に適応し、相手を凌駕するかの戦いだった。


 だからこそ、予測できない、本能から来るような出鱈目な攻撃の方が怖いものもある訳で……手負いの熊、お腹を空かせて見境のない獅子の方が当然に怖い時もある。



「コントロールできてないのかな? アートルム君は。もう私達はここに隠れてようね? ショウタ君」

「ウッス。出たら死ぬぅ」



 むしろ良く生きてるよね。

 まともな防御手段もなく、回避型でもない火力特化のロマン砲だろう? 君。



「既に理性のない上位存在と。普通の状態だったら神様って呼んで良いだけどな。狂乱状態のトワさんとか―――只の産廃だし」

「産廃は言い過ぎです。実質只のおこちゃまくらいです」

「駄々っ子ね。どんなに優秀な人も、意思なくなったらああなるって典型」



 言いたい放題、言いたい放題。

 ひとしきり談笑する皆は、やがて各々の武器を手に。



「さ。魔物狩りなら……得意分野だ。な?」

「「応!!」」



 こういう所で、対人と対魔物の戦いどちらを重視していたかが明瞭になる。

 あの子たちは特にその気が強いみたいで。


 動きが目に見えて変わる。

 不規則な振り下ろし、圧し潰し、全てにたちまち対応し始める。



「ところで、さ。あの青い炎も。やっぱり、神話の通りなら、だけど……」

「―――詰まる所、火属性派生が一番有効って事でおけ?」

「多分ね、多分」

「古事記とオルトゥス神話にもそう書いてあるってな。―――将太。あれ、やるぞ。爆弾出してくれ」

「おん? 良いの?」

「分かるよ、優斗。隠し玉はこういう時に使ってこそ、でしょ?」

「ロマンですね。待ってください、いま鏃入れ替えます」



 秘策ありって感じだ。

 今に彼等は己が武器を構え、将汰君が虚空に指をびしりと走らせる。



「アトミック―――、お前に決めたぁ!」



 そして、紅の光と共に現れる……ふよふよ浮かぶまん丸。

 呼び出された精霊さんは彼の頭にピトリと腰を落ち着け。



「グッドボーイ、アトミック。そのままフレイムエンチャント!」



 彼の言葉を受け、珍しく言うことを聞くらしいアトミックちゃんが強く輝きを増す。


 ユウトたちの持つ片手剣が、短剣が、鏃が……金色の炎に包まれる。

 一目で普通じゃないと分かるソレは。

 多くが青に染まった空間において、その輝きはあまりに眩く……元々あった蒼の炎と交じり合い、幻想的とさえ言える光景だ。



「ふへへッ。火属性派生へアトミックの属性付与スキルを使うと、こんな風にっすね。聖なる炎……何と陽属性!」

「おぉ……!」

「迷宮攻略の最中で見つけたんだー!!」



 リアさまと同じ属性。

 精霊さんを使役している人はプレイヤー人口に対してあまりに少なく、彼等の性質上戦闘に向いているとも言い難い。

 私も照明係君は名前の通りだし……見たことがないのも道理だ。



「それじゃあ……下がっててな、後衛さんたちは」

「あとは僕達がどうにかします」

「ふふ……なら、私達は全力でサポートするだけさ」



 地面を蹴り、一瞬で跳び去っていく彼等。

 不安定な足場にも拘らず動きはあまりに速く、今に触手を駆け上がり、軽業師のように宙を舞う。



「―――“焔閃・斬鬼零落”」



 蒼と金色の交じり合った炎が烈波となって一閃に轟く、一陣の風と突き進む。



「恵那は援護頼む」

「任せてください―――“矢車一矢”」


「七海と航は一緒に来てくれっ」

「あいあいさーー。登山だ登山」

「おーけー、直に叩こうか!」



 あの子たち、一対一の対人よりチームワークを生かした迷宮攻略の方が得意だったのかな、やっぱり。

 ステータスに迷宮特攻って書いてありそう……触手足場に飛び回り、遂には神様へ乗り上げ成功。



「はははッ! 君たちそれ足場にしちゃうかぁー! 負けていられないね、これはッ。最速は僕だし! ―――老師!! こっちも強化!」

「「下さいな」」

「……良かろう。属性加護、筋力上昇、筋力狂化……すべて持っていけ」



 時を近くして、蒼炎に包まれた剣を手に飛び回る青騎士くんを筆頭に―――続くPL達も、火属性派生の攻撃を開始する。

 戦場はまさに青々キャンプファイアー時代。

 狼煙の熱を剣先に灯した彼等が次々と攻撃を攻略し、本体へ肉薄、叩き始める。


 適応力の高さは流石で。



「―――……ステラさま」

「はい、リアさま。……熱き焔で鉄を討ち、輝く威光で不定を融かせ……これが―――」



 御伽歌の再現……成程ね。

 マリアさんも一緒に居て欲しかったなぁ。



「“光華耿々・初灯り”」



 で、私も私のやれることをやろうか。

 勢いを増す攻撃。

 こちらが受ける損害も多いけど、与えるダメージだって大きく上昇。

 やっぱり多いのは、火属性を主とした属性攻撃。

 





「オオオオォ、オォォォォォォォ―――――!!?」






 巨大な妖塊が大きく揺らぎ、空間を震わせる。

 ダメージ通ってる……。



「御子よ! 今である!!」



「はいッ!! ―――ステラ様! ルミエール様! このまま封印します!」

「わ、分かりましたぁ!」

「―――?」



 え、なにそれ私知らないよ?

 一緒に頑張ろうってテンションで言われても本当に知らないんだよ?



「「式句詠唱」」



 二人が手を取り合い……私を延長コードに手を取り合い、空間には巨大な魔法陣が出現する。


 同時に、抵抗するように全方位へ放たれる触手の雨。

 今までのがゴムパチンコだとするのなら、さながら機関銃。

 なりふり構ってられないみたいだけど、最早回避という行動すら厳しく。


 パルテノさんやリオンさん、タウラスさんが攻撃を広範囲で打ち墜としてくれているからPL側の被害が軽減されているようなものだけど、それでも痛すぎ―――。



「おっと」

「―――ひょわ!!? ヤバい壊れる死ぬ!」



 リアさまが封印とやらに集中し始めてしまった今、防御の為の結界が更新されずに罅が増していく。

 流石に触手さん、ちょっと本気すぎ……―――あ、割れ……死……。



「白刃、さざれ」

「「……!」」



 丁度私の鼻先までちょんと迫っていた円錐の針が全て、全て目の前で両断される。

 私達の右左を、次々分かれていく触手さん。



「―――無事か、全員」

「「……………」」

「有り難うございます有り難うございます有り難うございます」



 流石の集中力だね、御子って。

 二人共、凄い青ざめた顔でブツブツ呪文唱え続けてる……、この状況でもやめないのもかなりの精神力だと思うんだ、震えてるけど。


 ―――おぉ、よしよし。

 ビックリしたよね? よしよし。

 このまま頑張って詠唱続けてね、お礼は私が伝えておくからね



「アルバウスさま」

「……うむ。其方に何かあればあ奴と主がうるさいのでな」

「うるさいで済むからお得ですよね、異訪者」

「……であるな。異訪者―――げに恐ろしき成長性よ、まこと……な」



 数十メートル級に巨大な封印の魔法陣が鮮明さを増す。

 上から押し潰すようにして不定神さまへ迫り―――抵抗しようにも、全方位から集中砲火される攻撃により神は触角を次々に破壊されてしまう。

 

 如何に強大な生物でも、無数の軍隊アリに沈むのは珍しい事じゃないんだ。

 これは、もう……。



『―――ふざ、けるなぁぁぁぁ!! 神は復活した、復活したんだ! 完全な目覚めが……、あの光を……地底から登った光を引き摺り戻す―――僕達の宿願を、こんな馬鹿げた話が―――』



 自分の意思で動かせない身体は不要と断じたんだろう。

 アートルム君が神様の天辺から飛び出してくる―――けど、丁度そこは……。



「ん、出てきた、悪いやつ」

「待っていて正解であったな―――」



「“絶剣・夢殉”」

「“炎天大征”!!」



「―――な……!!?」



「王断」

「炎刃滅却ッ!!」



 神様の身体上で飛び回って暴れていた最上位のPLの強襲に次から次と切り裂かれ、彼は断末魔を上げる事すらなく溶けて消える。

 鉄血候が言うように、本当に人間なのかすら怪しかったね。

 興味深いこと言ってたし、本音を言えば出来ればもうちょっと聞いていたかったけど……。



「―――――」



 鳴く。

 今に、神様は……。



「――――――――――」



 今までとは比にならない程の、地響き。

 もう、私じゃ立っているのもやっとな―――あ、支えてくれるの? 有り難う。

 

 両側から抱きしめてもらって何とか固定……あ、違う?



「ぁ……、ぁぅ……、ぅぅ……ッ!」

「強大……過ぎてッ。もう―――」



 ……これ、二人も倒れないようにしがみついてるだけ……?

 しかも、この地響きは。



「「―――――」」



 大勢の見守る中―――不定神さまの頭上にあった魔法陣が砕け、消え去る。

 もしかして……封印失敗しちゃった?


 緊張の一瞬。

 果たして、本当に目覚めちゃった?

 使い果たしたというように動けずにいるステラちゃん達を尻目に……あれ程の攻撃を受け、未だ健在にすら見える巨躯は……ゆっくりと。


 ………。

 大迷宮の、更に奥深くへと……ゆっくり、と。



「これ―――……逃げて、る?」

「多分……。なんで?」



 まるで光を嫌うかのように、ゆっくりと巨体を引き摺っている。

 奥へ、奥へ……退散している?

 

 

「そういえば―――神話でも、最後には地底へ帰ろうとしてたんだっけ。……もしかして神様。最初から、目覚めてどうこうって気なんてさらさらなかったのかな。封印以外に、もっと経済的な方法で何かできたりしないかな? お茶とか誘って―――」



「―――ならば、私達が……」

「このまま、閉じます!!」


 

 え、閉じ……。

 互いの掌を合わせ、腕を突き出す二人。

 巨躯を引き摺る神様と、ソレを後押しするように塞がりゆく洞穴、空間……。



「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」

「絶対金輪際二度と戻ってこないで!」



 あ、お話だけでも……。



 ―――ズズン……、と。

 最後に岩戸が閉じられ……一帯には戦いの残滓すら感じさせないような静寂が訪れる。

 




『―――――――――Quest Complete』





 やがて現れたソレは、紛れもなく。 

 これって……不定神さまの復活を阻止できた……って事で良いのかな。

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