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ルーキスinオルトゥス ~奇術師の隠居生活~  作者: ブロンズ
第八章:フォール編

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第15幕:レジェンド・レイド結成




「我が話すべき事を大方代弁したな、聖女」

「暫し姿を見せぬと思っておったら、そのような大事に身を投じていたとは……」

「ずっと、戦い続けて……。やはり。やはりルミエールさまは光を齎す者だったのですね、ステラさま」

「私はずっとそう思ってましたよ? リアさま」



 ………。

 困ったね。

 今更、全部口から出まかせでしたなんて言えない雰囲気だ。

 話してる最中、歴史に詳しい人から「素人質問で恐縮ですが」が飛んでこないかずっと心配だったんだけど。


 

「―――大方は、聖女が話した通りよ。方針は決まっておる。その手段も、為すべき者達も。今この場にいる。なれば、我が語る必要は最早あるまい?」



 で、のらりくらりと全部他の人に説明させちゃったわけだ。

 ちゃっかりしてるね、鉄血候様も。


 けど、本当に良いのかな。

 良いっていうのは、彼等NPCの中でも最高位に位置する存在。

 最強PLさん達も真っ青な存在が一緒に来てくれるという事前提で考えちゃっているし、何ならそう話しちゃったことについてなんだけど……。

 けど、ヨハネスさん達もそうだそうだって言ってたし―――あ、あとね。



「えぇ、と。ステラさまとリアさまも同行……で?」

「―――勿論、です……! ルミエールさまが仰った通り。何より、世界の為に」

「私達はその為に居るんですから!」



 こんなに小さいのに。

 相変わらず覚悟がキマってるみたいだ。

 会った事ないけど、もう一人……王国所属の月の御子さまもそうなのかな。



「そして、本当にアルバウスさまたちも?」

「……12聖とは、本来三御子の守護者として任命された者たちの総称。御子らが赴くのであれば、同行せぬ道理は存在せぬな」



 感情を感じさせない表情で言葉を連ねるアルバウスさま。

 本当にそのつもりなんだ。

 お弟子さんは未だ戻ってこないみたいだけど、ずっと座って話を聞いていた皇太子様はささと席を立つ。



「と、いう事か。爺やの悪だくみで未然に解決するならばと思っていたが、そうもいかぬらしい。なれば、三国の協定により、何より人間種の繁栄の為に。我らが動かぬわけにもいくまい。帝国の剣パルテノ。帝国の盾リオン。任を与える。―――寝ぼけた神を再び無明の水底へ沈めてこい」

「「御意に」」



 剣聖、刀姫、天盾が同行を了承した。

 となると、もう一人。 

 残る一人の主であり、今クエストの敗北条件に名前の挙がっている鉄血候様も皇太子様に合わせて席を立っており。

 仁王立ちもすると二メートル近くある体躯の彼の肩へ、意外にも二回り背の低いタウラスさんがマントを掛ける。

 


「二代目タウラスは当然として……、此度の任、我も同行させてもらうぞ。良いな? 聖女」

「「!」」



 いや、私の了承はいらないけど。

 危なくないかな。

 鉄血候様が死んだらクエストが失敗になっちゃうし。

 何なら帝都で待っててもらっても良いのに。

 


「大事ない。我の背には、常に影がある」

「……………」



 と、後ろでそうだそうだと頷くタウラスさん。

 影、とはタウラスさんの事なんだろう。

 確かに12聖の傍って一番安全な場所とも言えるかもしれないし。



「王国から白。帝国から金と銀、そして紅……であるか。ふーむ?」


 

 発言こそプシュケ様だけど、「確かに」とオルド枢機卿へとじろりと向けられる視線。

 うん。

 いないね? 皇国所属。

 話通りなら彼等は三国に四人ずつ存在する筈なんだけど、枢機卿さまは表情を変える事無く言紡ぐ。



「……本来であればリア殿下の護衛として紫紺の斧槍、或いは黒鉄の機銃を付けるべきだったのですが……帝国へ参ったこと自体、何分急なお話であったもので。理解いただけると幸いです、皆皆様」

「……ぅ」



 続き、じろりとリアさまに向く視線。

 貴賓席で堂々とあの問答があったんだから、皆大方の事情は知っている筈で。


 黙って出てきちゃったの根にもたれてるみたいだね、当然だけど。



「重ね、12聖だけが力ではありますまい。此度は殿下と無色の聖女殿がおられる。それで納得しては頂けませぬか、皆様」

「え?」

「ふえ?」

「―――えぇ、そうですね。ルミエールさまと私が居ます。ならば、釣り合いとしては問題ないのではありませんか?」

「「……………」」



 皆が目を瞬かせる。

 私もステラちゃんと一緒に首傾げたよ。


 私、いつの間にか皇国所属になってたみたいだ。

 もしかして市民権貰えるのかな。



「―――ふむ。枢機卿猊下、陽の御子よ。我も、今更異訪者に関し、国に所属する事の是非に関してとやかく言うつもりはないが……しかし、ソレは聞き捨てならぬな」

「全くじゃな。元よりそ奴はわらわの館の客人で……」

「はて、これは異なことだ。聖女はわが帝国に拠点を構えていると聞こえていたのだが。違うのか? 爺や」

「いえ、確かにそうであったと。何より、最初に知り合ったのは―――」



 あーやめてーわたしのためにあらそわないでー。

 形はどうあれ力って責任が伴うんだね、やっぱり。



「ルミ」

「あ、ハクロちゃん。お帰り。人波に押し流されてたのかな?」

「ん。年波には勝てない」



 それ意味違うね。

 いや。それより、彼女はまだここで話したことを知らないだろう。



「ね、ハクロちゃん。これからちょっと皆で迷宮に向かうんだけどさ。アルバウスさまたちも一緒に」

「……ん」

「私の護衛頼めないかな。報酬は弾むよ?」

「―――やる」



 報酬に期待大なんだろう。

 師匠の名前が出た最初の方でちょっとテンション下がってるみたいだったけど、持ち直してくれたみたいだ。

 けど、どうなのかな。

 或いは。



「今回の敵はね、神様なんだ。ゴッドだよ」

「強い?」

「恐らくね、未だかつてなく。彼等も行くわけだし―――つまり、本気が見れるかもしれないんだよ?」

「………!」



 口元を隠しながらちらとアルバウスさまを伺う。

 ……一緒って聞いたときはあんまり乗り気じゃないのに、そういう所ではやっぱり見てみたいんだ。


 素直じゃないんだよね、やっぱり。



「ふふ……まぁ、そういうわけでありますので。此度も宜しくお願い致します、ルミエール殿」

「やっぱりヨハネスさんも来るのかい?」

「勿論。私が行かずして誰がカメラ役を担うので?」



 来るんだ。

 スクープだし。

 今大会で実は彼も強かったっていうのは分かったし、私の百倍は役割ありそう。

 


「―――ホッピーさんは? 一緒じゃないのかな」

「私は非戦闘要員ですので。戦場カメラマンはそちらの阿呆に。階下も―――えぇ。団結の強い彼等の事。自ら率いて行くのは容易な事でしょう」

「モールトにもその辺は伝えてありますからね。それくらいは働いても会いましょう」

「もーるとさんって?」

「もう一人の編集長です。場内のPLを纏めるのを任せたのですが」



 確かに騎士王くんとかなら天性スキルのカリスマとかで簡単にPLを纏めたりもできるのかな。

 ロランドさんとかはそういうガラじゃないかもしれないけど。


 見た感じでは、場内の彼等は統率が取れた様子で何かを決めており。



「じゃあ、後はヨハネスさん達が号令をかけて……ところで。帝都から鉱山都市までそこそこあるけどさ? 私達は一瞬で行けるから良いとして、NPCの皆さんってどうやって向かうのかな」



 徒歩? 馬車かな。

 それとも帝都で流行ってる例のお車……四連装車?

 スポーツカーでドライブって感じかな。

 偉い人達がぎゅうぎゅう詰めで載ってるのを想像すると面白いよ。

 


「「―――ぁ」」

「あ?」



 その辺の事は話してなかったみたい。




   ◇




「いやぁ、残念だねー。王様の相手として決勝に上がってくるのはロランドさんだと思ってたのに。相応しいのは彼だけだと思ってたんだけどなぁぁ、残念だなぁ」

「俺たちも決着つけられなくて残念だなぁ、すまねえなぁ、けど、別にギルドに対して負けたわけじゃねェし? 相手仮にも12聖だしぃ? 一つ、ギルド連合最強の座は不明って事でェ」

「それが良いでしょう、それで良いでしょう。ここは上下など抜きに……」

「「敗北者は黙ってろ」」

「王様と戦う前に逃げ出した妖精公子さまはお口チャックでお願い」



 円卓の盃、古龍戦団、妖精賛美、轟の一矢、おさかな天獄……。

 ギルドランク一桁台。



「まさか、鳥野郎と一緒に迷宮探索なんて」

「まさか筋肉魔法少女どもと共になど」

「因果ですねェ」



 本気狩ステッキ、グリルド・チキン、北部防衛遺跡攻略探検隊……。

 迷宮攻略ランキングトップ3。

 

 本当に、軒並み揃ってる。



錚々(そうそう)たるって言葉でも表現しきれないな、これ。ついさっきまで全力で殺し合ってた同士が隣り合っているって事実も」

「二度はないかもね」

「やっぱり協力は難しいんだ。……敵でも味方でもないって言えばそうだし、利害関係で流動的に動くし。損得で簡単に裏切ったりもするしね?」

「そうそう」

「自由がモットーだからね、私ら」



 ………。



「「何でこっちくんの?」」

「んう?」



 何でって―――何で?



「一緒に観戦できなかった分、こういう時くらい皆と一緒が良いかなって思ったんだけど……ダメだった?」

「「ダメじゃない!」」

「ダメじゃないです」

「あぁ、ダメとは言ってない」



 じゃあ何が嫌なのかな。

 どうして私の後ろを―――。



「ルミエールさんの動いた方向にその人達付いてくるからじゃないかなぁ? うん」



 只のお友達だよ?

 ちょっと一人でもレイドボスみたいな人達四人と、ちょっと凄い力を持ってる御子様二人と、ちょっと今回のキーキャラクターな侯爵さま一人が付いて来てるだけなのに。



「何がダメなのかな」

「全部でしょ……。―――あ、あの……」

「……………」

「えーっと……騎士王さん、ですよね? 試合見ました。凄かったです。ところで何か? 私に何か?」

「―――名前を聞いても良いか、令嬢」

「……クオンです」

「クオン。覚えておこう」

「あ、結構です」



 あ、これバレてる。

 騎士王くんはね? 一度会った相手の事は絶対に忘れないし、姿形が違くても「あ。アイツだ」って気付いちゃうんだ。

 しょうがないねこれは、怖いね彼は。



「―――騎士王さま? 俺たちの仲間に何か。というか近いんですが」

「クエストの泣き所を近くで護衛するのは当然だろう」

「じゃあ鉄血候の隣へどうぞ?」

「誰かの助言通り、直接関わる事にしただけだ。気にしてくれるな、誰か」

「……言わなきゃ良かった」

「まぁまぁ、仲良くしようよ。僕達の仲でしょ? ユウトクン」

「団員募集中、団員募集中。そこの君たち歓迎」

「強いやつ歓迎」



 賑やかだ。

 賑やかって事はつまり、とても楽しいって事だね。



「でも、最上位のギルドが軒並み……ほぼ軒並み来てるんだから、やっぱり凄いよ。こんな機会もうないよ? 二度と」

「ないって言えば、レイド機能使うのもな。暫くはないだろ」



 レイド機能は、ギルドを介さない協力関係を結ぶ際によく用いる「パーティー機能」と同系統の戦闘システム。

 発展形と言えるらしく。

 その人数上限は、通常のパーティーシステムのはるか上を行く……。

 ただ、経験値自体が発生しないから、本当の意味で大規模な戦争の為だけに用意された機能なんだって。


 でも、その機能ですらあの会場にいた全員をメンバー化するのは不足らしくて。

 現状の大迷宮最下層である80層まで歩を進めているギルドないしパーティの数も高が知れてるから、彼等の募集枠へ会場に残っていた者達から選抜されたメンバーが一時的なレイド組として加入している状態。

 最上位ギルドである事と迷宮攻略ランクは無関係だから、騎士王くんとかロランドさんは普通ならば一緒には来れないんだけど。

 これで、攻略済みでなくてもスムーズに最下層に行けるのだとか。


 

「そう考えると、凄いね」

「―――何がですか?」

「エナたちさ。たった五人のギルドでここまで来たんだろう?」



 個々の能力と、チームとしての能力。

 そういう意味では、この子達が一緒ならどの業界でもやっていけるのかも。

 末は博士か大臣かって……よく言う例えだけど、将来が楽しみだね。



「―――っと。ここだ。ここが現状の最奥って事になってる……なってた筈なんだが」

「前に来た時は土砂崩れみたいに塞がってた筈なんですけど」



 ユウトたちが足を止めた場所は……完全に大穴空いてるね。

 つまりこれは……。



「上限突破。深層解放―――ってこと?」

「なのか。興奮してきたな……ん?」

「何かあるんだけど」

 


 見えない壁?

 皆が先に進もうとすると、押し戻されるみたいだ。

 と、ここにきてタウラスさんを伴った鉄血候様が進み出て―――わっ。



「「―――――」」



 タウラスさんが戦鎚の持ち手をしならせ、打撃面を叩きつける。

 瞬間的に震度七強くらいあったかも。



「―――ヤバ過ぎだろ」

「あれ喰らったら100回は死ぬね」

「俺なら500回だわ」

「じゃあ私なら千回?」

「張り合うところなんですか? それ。……あれ受けても壊れないんだ、見えない壁」


「……ふむ。これは、大規模な結界であるな。個人で張れるものではない。重ね、個人が解除できるものでもない」

「では、私がどうにかできるやもしれませんね」



 この辺はイベントNPCが一緒に居ないと開かない仕組みだとか、色々あるのかもしれないと。

 今度はリアさまが進み出て。

 


「……行けそうです」

「「え」」



 タウラスさんの一撃でもビクともしなかった不可視の壁へ、ひたと彼女の小さな両掌がソレに触れると、見えなかった壁が半透明の板みたいになって―――ゆっくりと、手元から広がるように溶けていく。

 さながら、太陽に照らされたバターみたいに。





『―――――解放』





『―――――周辺難度EX 浸透領域シャンバラ』





 同時に頭の中に響く、いつもの音声アナウンスは。

 いーえっくす。

 いーえくっすだって、いーえっくす。



「周辺難度にもあるんだ。帝都周辺でもBランクだよね?」

「レベルボーダーで40から50前半だな、ソレの場合」

「嘘でしょ? EXって、うそ……魔族領域でもAなのに……」

「クオンちゃん?」

「―――ぁ」



 お口チャックね。

 騎士王くんがグリンってこっち向いてたよ。

 そもそも全身鎧の兜ってそんな風に動かせたっけ?


 

「……EXにも色々幅があると思うけど、このゲームだと高すぎって感じになるよね、多分。ハクロさんとかルミさんのあれ見てると」

「マリアさんのもね」



 恐らく、そうなんだろう。

 で、シャンバラっていうと―――仏教における理想郷の名称だ。

 神様の膝元としては確かに合ってるのかな。



 ………。

 道は拓かれた。

 その一歩目を踏み出すのが誰か、皆迷っているみたいだった。



「皆の者、準備は―――いや」



 

「征くぞ」




 今更聞くまでもないだろうと。

 敢えて言葉を切った鉄血候様は先頭に立つまま、武器もなく歩き出す。

 護衛対象なんだから下がっててほしいって顔を皆がしていたのは内緒だ。


 

 ………。

 ……………。



 ………。

 ……………。





『警告……、封印破綻。再構成……、確認』





警 告(ワーニング)―――警 告(ワーニング)……確認』





『位階―――大神級』








『大神顕現 地底の水―――――創世の妖塊(スライム・ジェネシス)

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