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ルーキスinオルトゥス ~奇術師の隠居生活~  作者: ブロンズ
第七章:セーブ編

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第3幕:行きつく先の看板




 私の名前は歌川麻里、都内の大学に通う二回生。

 音楽、料理……そういった道に進むことも一時は考えないでもなかったけれど……、多くの本物を知ってしまった事で、結局は趣味の範囲に落ち着き。


 選んだ道は、ごく普通の、平均的な普通大学生。

 そろそろ将来に不安が生じて来る年頃でもあり。


 充実しながらも、様々な不安を抱える毎日。

 そんな私が出会ったのが、オルトゥス。

 偶々父親が趣味の懸賞で当たったのが、VRハードだったONで、付属していたソフトがこれだった。


 でも、偶然に出会っただけのオルトゥスは、空いていた私の隙間にピタリと入り込んで。

 諦めた筈の夢、空想にのみ存在していた筈の趣味。

 それらを自分の職業として、胸を張り……大手を振るって宣言する事の出来る世界。


 小規模ながら、気の合う仲間たちと過ごす日々。

 現実の諍いを暫し忘れる事の出来る大切な時間は、いつしか私にとってかけがえのないものになって……。


 そう長くは、続かなくて。

 普通だった私は、何時の間にかそうではなくなっていた。


 きっかけは。

 私が、何の間違いか一つの「特別」を得てしまった事で。



 自由の象徴であったはずの世界は。

 いつの間にか、私を縛り付ける、閉じ込める大きな檻になっていて。 



 ……………。



 ……………。



「―――ここで、良いんですよね?」



 東京と千葉の境に存在する都市部。

 電車で一時間も掛からない距離感にあったため、来ること自体はすぐに出来たけれど。


 果たして、あの人の。

 いつだって掴みどころのない、彼女の真意は?

 「例えマリアさんが地球の裏側からログインしていたとしても、すぐに会いに行くよ」

 あの、これって……。



「まさか……、告白……? コレが!?」



 良いんですか? 良いんですの?

 確かに、現代は東京オリンピックや未知のウィルスが世間を席巻していた時代と比べて、男女格差の是正や同性の愛に寛容な風潮が浸透しているけれど……おっと。


 私は冷静、私は冷静。

 母や父、学友やゲーム友達に言われるように、私は思い込みがやや強い傾向にある。

 時に、クールダウンする必要が……、そうだ。



「そもそも、あの人……―――ヤバヤバではないですか? この状況」



 デート云々以前に……、待ち合わせしたは良いものの。

 駅構内がすぐ傍、バスターミナルからは常に人が流れ込み、ショッピングモールもすぐそこにそびえ立つ広場。 

 中心には時計塔も存在し、いかにもここで集合してくださいといった空間は。

 何人もの若者が、絶えず待ち人を探すようにキョロキョロを辺りを見回していて。


 ……本当に、会える?

 だって、待ち合わせに際して決めた事と言えば、時間と場所のみ。

 互いの連絡先も、その他諸々何一つ決めてはいなくて。


 今更ながら、どうして場所と時間以外何も決めていないんです?



「確か、あの時は―――」



 今になって当時を思い出すけれど、そうだ。

 お誘いが意外過ぎて、嬉しすぎて。

 顔も見た事がないゲーム仲間とリアルで会うという危険さえまるで考える事無く、予定合わせに夢中になり過ぎて、現実で会えると認識した高揚感で、完全にハイになってて。

 もし電車が遅延したらとか、寝坊したらとか……。


 そういう考えが、すっぱりと抜けていた。

 或いは、互いに「遅刻は無いだろう」という信頼感があった? 


 ……信頼?

 彼女が、私を? ……ふふふっ。

 


「……十二時……まだある」



 そう、遅刻はなかった。

 ただ、あまりに早く着き過ぎてしまっただけ。

 まだまだ待ち合わせの三十分以上も前で、相手の来る気配など無くて当然の時間帯。 


 所在なさげに、自信なさげに。

 聞いた話では、そういう人こそがキャッチーやらナンパやらというものに引っかかる事、対象とされることが多いらしく。

 ……そうだ。

 ここは一つ、気を確かに―――ロールプレイをしている時の私のような、自信に満ちた姿勢で……。


 

「Hello」

「へ?」



 ハロー、ハロウ。

 日本人が冗談めかして言うような偽物とはまるで異なる、あまりに流暢な挨拶。

 その声に振り向けば……間違いなく私を瞳に収めた人物が居て。



 あ……あっ、が、外国人さん!?

 どうしよう、どうしましょう。

 話しかけられて初めて気付くような、中性的かつ地味な服装に身を包み、大き目のボストンバッグを持った女性は―――旅行中?

 彼女は、気付いてからはどうして今まで意識する事すらなかったのかと思う程に、目立たない筈がないと思うような容姿で……。

 

 うわ、肌白……髪すっごく艶やか……腰ほっそ……。



「あ、あ、えーーと……れ、レッミースィー、プリーズホールドオン……」

「ワタシ、二ホンデニホンゴベンキョウシテルニホンジンネ」

「あ、あぁ……良かった。日本語も―――なんて?」



 ―――日本語を勉強してる日本人?



「ってぇぇ! 只の日本人じゃないですか!」

「あ、バレた」



 まさかの在日日本人。

 初対面の相手にここ迄ボケ倒す外国人が……うん?


 私、この声を何処かで。

 というより、この声、この髪色、瞳の色、身長身体つきを何処かで……。



 ……………。



 ……………。



「あ、あの……。もしかして」

「やぁ、マリアさん。ううん、初めまして……かな?」

「ルミエールさんッ!?」



 え、ウソ!!



「本当にルミエールさんなんですか!?」

「私だよ? いやぁ、早いね。待ち合わせまで後三十分もあるのに、もう居るなんて」

「それはこちらの台詞ですけれど……何で私が分かったんです?」

「―――んう?」



 いや、そんな首傾げられても。

 というか、あなたこっちでもその特徴的な声出すんですね。



「だって、マリアさんはマリアさんだろう?」

「哲学……!」



 自信満々に声掛けて、あんなボケまでセットで供しておいて。

 もし人違いだったら、とか。

 そういうのを考えない辺り、余程の自信があったのか、それとも何も考えていなかっただけなのか、只の哲学者なのか。

 間違いない。

 この人は、間違いなく。

 居る、私の目の前に―――本物の、ルミエールさんが。 



「あ、そのコート、ニットとデニムによく映えるね。着やすそうだし、良く似合ってるよ。妖精さんみたい」

「有り難うございます。……ルミエールさんは、本当にルミエールさんなのですね」

「うん? うん、そうだとも。私は私さ」



 いや、だからそういう話じゃなくて。

 貴女、本当に何一つ……アバターとまるで変わらないじゃないですか。

 最早、コスプレの類ですらなく……ファンタジーゲームの登場人物が、革や粗雑な布の装備を現代風にイメージチェンジした、本当にそれだけにすら思える。


 私でも、分かる。

 彼女の髪色、瞳……それらはコンタクトや色染めの類ではなく、純粋な……生まれたままの色で。


 本当に外国の方?

 在日の二世さんとか……はぁ。



「肩の力、抜けちゃいましたわ」

「お腹減った?」

「……えぇ」



 何処まで行っても、どれだけゲームで仲が良くても、親友の間柄でも。

 所詮は、初対面の相手だと。

 心の何処かでは張りつめていた筈の、籠っていた筈の肩の力が急速に抜けていく。


 ……あと、お腹も減った。

 そんな私をエスコートするよう、自然に歩き出す彼女。



「じゃ、行こうか」

「そうですね。因みに、どちらへ?」



「すぐそこにそびえ立つショッピングモールだよ。お昼、まだだよね? 良い喫茶店を知ってるんだ」




   ◇




「でも、マリアさん。向こうと全然向こうと変わらないね。安心したし、助かったよ」



 貴女に言われたくないです。

 改めて確認したけれど、貴女、こっちでもまるで表情変わらないじゃないですか。



「因みに、どの辺が変わらないとか……」

「動きとか、手の振りとか、細かな癖とか?」

「変わる筈ないですわね、変わってたら別人ですわね」

「あ、それもそっか。では、改めて。私は月見里留光。年齢は伏せておくけど、現在は教職者って所かな」

「あ……教職」



 無職なんだの名乗っておいて、リアルではバリバリ公務員?

 子供たちに変な影響与えてませんよね?


 ……いや、与えてない方がおかしい。

 絶対与えてる。



「マリアさん?」

「っと、失礼。私は歌川麻里。大学の二年生ですわ」

「おぉ。マリアさん、まだ大学生だったんだね。若いって、良いね」



 まるでご老人のような事を言いつつ、私の対面でフレッシュジュースを飲むルミエールさん。

 

 入った喫茶店は、何故ショッピングモールに? と疑問符が出るような個人の小さなお店で。

 カジュアルでありながら、不思議な重厚感があり。

 雰囲気的な、格式の高さが伺えて。


 ……正直、彼女にピッタリのお店。


 窓際の、外が伺える四人席。 

 どうやら、何故やら……雰囲気の良さに反し、お客さんは私達以外は居なくて。


 もしかして、あまり評判良い店ではない?

 今更ながら……ルミエールさんの紹介って、安心できるやら出来ないやら。

 彼女って基本果物ばっかりだし、前にプレゼントでくれたのも激辛な種の入った果物だったし……。


 ―――激辛専門店?

 料理の類は、まだ確認していないけれど。

 角眼鏡に、灰色の口髭……スマートかつ寡黙な、如何にもなマスターが厨房へ隠れてからは、何かが焼けるような香ばしい香りが店内を漂い始めて。


 初めてのお店だからと、ドリンクや食事も全部彼女に任せてしまったけれど……。

 そもそも、メニュー表がまだ運ばれてきてない。


 率直に、不安しかない。

 他の事で紛らわせないと。



「呼び方は……今まで通りで良いですわね。所で、ルミエールさん。そのお荷物は?」

「ん、これかい?」



 歩いている時から気になっていたけれど。

 彼女が傍らに置いているパンパンに詰まっていそうなボストンバッグは、明らかにショッピング用といった風ではなく。

 初対面で勘違いした通り、旅行客にすらも思えて。



「お色直しの道具? ほら、コートとか」

「……今日、寒くなるんでしたっけ?」



 コート折りたたんで入れる位なら、着て来ればいいのに、と。

 やはり、彼女は凄く不思議で。

 首を傾げつつも、私もまたジュースをストローで吸いつつ、美味し……お話に華を……美味し。



「良いお店だろう? ここ」

「えぇ。凄く雰囲気も良くて―――勘違いしちゃいそうですわ」

「んう?」

「いいえ、何でも。さ、本題は早めに伺いますわ」



 このオフ会について、彼女がどう思っているかはさておき。

 気になるけどさて置き。

 聞けることは早めに聞いておくのが私のポリシーで。



「そうだね。本題としては……キャッチ、スカウトに近いのかな」

「え」

「マリアさん、私のお店で働かない?」



 でも、すぐ聞かなければ良かったと後悔。

 まさか、ルミ―エルさん。


 貴女、私をそんな目で……。

 


「お店。それは……、その……」

「あ、いかがわしい所じゃないよ? 身体を使ってるのはハト君達だけだし」



 別の意味でいかがわしいですわ。

 ルミエールさんの事、どうせ「あにまるせらぴー」とか言って……想像しやす過ぎる。

 でも、ハトさんと言えば―――つまり、ゲーム内での話という事でもあり。


 夜のお店で働こうなんて言われなくて、一先ず胸を撫でおろし。



「私ね? 今、すごーーく壮大な計画を遂行している最中なんだ」

「壮大な、計画」

「そうそう。それを完遂する為には、色々と策を講じる必要がありそうで―――んう?」



 話の最中。

 対面に座る彼女の肩がピクリと揺れ……不意に立ち上がる。

 本当に突然の出来事で、私は目をぱちくりと瞬かせて。


 ……何で斜め上見上げてるんです?

 何でそのバッグ持ってるんです?



「ゴメンね、マリアさん。ちょっとお手洗いに」

「―――そのバッグは」

「お色直しさ。まぁ、マスターもいるから適当に話しながら待っててよ。彼、聞き上手なんだよ?」



 そう言い残して。

 ボストンバックを片手に去っていく彼女。

 案外力持ちなんですね、ルミエールさん。



「―――いらっしゃいませ」



 と、彼女の姿が見えなくなるとほぼ同じくらいのタイミングで、お店へ新しいお客さんが入って来たらしく。

 いつの間に厨房から出てきていたマスターさんが、渋い声で迎える。


 チラリと一瞥した限り、三人一組のお客さんは私と同年代で。

 やや遊んで良そうな、何処か軽薄そうな雰囲気が漂った……ふーん。


 私の趣味ではあまりませんわね。

 あと、ちょっと場違いでは無くて?

 或いは、見た目でハードルを下げてから礼儀正しい紳士的なギャップを見せつける高度な戦術を……。



「あのーー、お姉さん、もしかして一人?」

「相席しても良い?」

「―――え?」



 自分の世界で妄想を繰り広げていると。

 まさに、その三人の男性が、空いている席には目もくれずこちらへと声を掛けて来て。


 相席?

 周り、席沢山空いてるのに?

 何なら、ショッピングモールのお店とは思えない程にガラガラなのに?


 ―――私、そういうのは好きじゃないのだけれど。


 しかも、男三人。 

 寄ってたかって一人の女性に、なんて……全くエレガントじゃないですね、三十点減。



「すみません。私、連れがいるんです」

「あ、そうなんだ」

「えぇ、ですから……」

「その人も綺麗さんなのかな、一緒でも良いよ? ほら、五人でも隣と席くっ付ければいいんだし」



 しつこい。

 更に二十点減点。

 

 確かに相手も女性……女性? ですけれど。

 ……と、言うより。

 多分、私とルミエールさんが一緒に居た時から狙ってたんですね?

 確かに? ルミエールさんは地味な格好で誤魔化してはいるけれど、凄く綺麗な女性ですし?


 なるほど、成程……。

 二人より一人の時を狙った方が人数で圧し切れるから、そのあとは戻って来たもう一人にもなし崩し的に了承させて、と。

 表面上の、舌なめずりするような笑顔。

 妙な自信からして、常習犯の様子もあり。

  

 ふん。

 この程度の輩、出先では何度も追い返した身。

 彼女と同席する権利があるのは、今は私だけという事を教えてあげましょう。

 ここは、毅然とした態度で……。



「重ねて申し訳ありませんが―――」

「待たせたね、マリくん」

「「……………え?」」



 そっけなく対応しようとした私、今から食い下がる準備万端の三人……その対立構造が一瞬に崩れる。

 さわやかーなイケメンボイス。

 きりっとした表情。

 ベージュのロングコートを纏い、金の長髪を頭の後ろで束ねた丸眼鏡の男性は、これまたさわやかーな微笑を湛えて席の前に歩いてくる。



「―――っと、こちらの方たちは……マスタ、お客さんかい?」

「あぁ。お連れさんの可憐さと君の()()を見て、不幸にも引き寄せられてしまったらしい。相変わらず、罪作りな趣味を持った男だ、君も」

「はははっ、照れるね……」

「褒めてはいないよ」



 ……自然に繰り広げられる、男性と店主の会話。


 それに何を感じたか、一挙に赤面する三人。

 対して、私の隣に回り込んだ男性はあまりに自然な動作で()()()()手を置き……。



「っと、失礼。まぁ、見ての通りデート中なんです。あ、でも宜しければ相席しますか? 丁度、何品か名物を頼んだところなのですよ。この店、良いですよね。時価で値はかなーーり張りますけど、内装も変に格式張ってはいないですし、女性を誘うにはもってこいで」

「「時価」」

「財布が傷物になるのはご愛敬(あいきょう)、で」



 肩……人差し指を口元へやり、悪戯っぽく微笑む男性。

 その様子も……あの、肩……凄く絵に……肩。



「―――あ、あーー? 時価って?」

「あーー、ゴメン、店間違えてたわ。てか場違いでしたすみませんでしたごめんなさいでした。マジでごめんなさいでした」

「あーー、そうそう、急用思い出したわ。てっしゅーー!!」



 ……………。



 ……………。



「ナイスだね、マスター」

「いや……ククク。良いものを見せて貰ったよ、実に」

「ふふ。さ、マリアさん……マリアさん?」



 ……………。



 ……………。



「ぷしゅーーー」



 怒涛の展開すぎて頭が追い付いて行かない。

 あれ? ルミエールさんって……あれぇ?



「ね、マリアさん。大丈夫かな」

「……ルミエールさん。私、おかしくなっちゃいます。貴女、どちらなのですか?」

「知っているだろう? 女だよ?」



 肩さすさすしないでください、何か歪んじゃいます。

 

 というか、貴公子然とした優男様にしか見えないんですけれど。

 どうやって身体つきを……コートの下どうなってるんですの?


 やはり、その風体で教育者は無理があるのではなくて?

 全方位攻撃型無職?

 願わくば、彼女の毒牙に掛かる子たちがいませんように……絶対ムリ。


 混乱し続ける私の脳裏。



「さ、お二人共。まずはマガモのソテーから。こちらのオレンジソースでどうぞ」

「ありがと。さて、食事食事」



 やがて、彼女……彼女?

 ルミエールさんが再び私の対面に座る頃、丁度運ばれてくる料理。


 白磁の平皿に盛られた、上品な脂の芳香を齎す鴨肉は、皮目が絶妙な焼き加減で。

 薄桃色の切れ目も、皿を彩る橙色のソースも……。



「……………ルミエールさん。時価って?」

「気にしない、気にしなーーい」

「あの、時価って」

「そうそう。お店の話、しただろう? さっきの彼等じゃないけどさ? やっぱり、お店を開くとああいうお客さんも中には居ると思うんだ。ね? マスタ」

「そうだね。それは、仕方なき事。略して仕事。働くとは、そういう事だ」



 ……確かに。

 私も、ギルドの系列で何度か事例は聞いた。

 オルトゥスにおいても、ルールの穴を衝くように店を荒そうとする酷ロールプレイをするような人たちは確かにいて。

 そういう時、店側が取る対応は様々だ。


 一番無難なのが、都市政府を利用する事。

 現状、最前線のPLでも国の有する戦力の前には歯が立たないというのは、誇張でもなんでもなく。


 トラフィークの牙兵団。

 リートゥスの鋼殻騎士団。

 クリストファーの輪冠術師連。

 最近話題の皇都で言えば、神使と呼ばれる強力な法の護り手など。

 

 相手が咎人であるのなら、都市内部ですら無条件にPKが可能という絶対権力たるそういう人達が常に通りを警邏(けいら)していて。

 騒ぎが起きれば、すぐに駆け付けてくれる。

 特別な税を納めていれば、優先的にルート巡回してくれたりもするらしい。


 けれど、ルミエールさんって。



「でもホラ。私って弱いし、貧乏だし、常に金欠気味なんだ。だから―――」



「用心棒しかない、よね?」

「……………」



 確かに。

 PLの店においては、巨大なギルドなどの後ろ盾を得て運営を行っているものも多い。

 上位ギルドとは、それ程までに影響力があるもので。


 まさか。



「ルミエールさんは、私のギルドを―――」

「全然違うよ?」



 食い気味ィ!!



「この喫茶店みたく、簡単に潰れちゃいそうな小さい店だからね」

「はぁ、なるほど」

「……!?」

「あまり多くの人員はいらないさ。だから、そっちは私の知る最強のPLさんにお願いしてみるとして。マリアさんには、ナースさん……もとい、看板娘をしてもらいたいんだ」

「―――かんばんむすめ?」

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