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ルーキスinオルトゥス ~奇術師の隠居生活~  作者: ブロンズ
第六章:ステップ編

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第17幕:生者は百年、亡者は千年




「何じゃこりゃぁ! どうなってんだよ、このクソゲェェ!!」



 茶色の髪、黄色の瞳……長身痩躯。

 やや軽薄そうなイメージを持ちつつ、落ち着いた着物姿というちぐはぐな印象を与える男は。

 その歪なイメージがピタリと合致するような悲鳴を漏らす。


 次々に襲い来る残骸、遺骸の軍勢……スケリタル・レギオン。

 

 個々の能力は、決して大したものではない。

 それこそ、1stのPLですら一対一なら楽勝と言える程度だろうか。


 では……。

 何故そのような相手をして、男は憤っているのか。

 第一に思い浮かぶは、勿論「数」

 骸骨の総数は、脅威の一万超え。

 そのような物量が皇都のみに集結し、異訪者を捕捉次第、手当たり次第に襲い掛かっている事実は、字面だけ見れば恐ろしいものに映るが。


 その上で。 

 ()()()12000体など、歴戦のPLが雁首(がんくび)揃えたこの戦場においては塵芥に等しいと。

 彼等は、ある種驕っていた。



「―――おい、おいッ……! ひとり100匹倒せばよゆーっつったの誰だぁ!?」

「あー、チャラオさんですね」

「考える脳のないスッカスカなデクって言ったの誰だぁ!?」

「それも、チャラオさんですね」



 そう、これが現実。

 

 曰く、考える脳のない、頭も骨密度もスカスカなデク―――屍の兵は、カタカタとしゃれこうべを鳴らして歩を進め。 

 PLによる疾風の如き剣の一撃を受け、吹き飛ぶ。

 道路を転がり、砕け散る。


 ……そして。

 再び破片が一つに結集し、再構築された骸骨兵が向かってくる。

 

 戦端が開かれて十数分。

 もはやこの違和感に気付いていないものは、一人としていない。



 ―――そう。どう見ても、減っていないのだ。

 どれだけ押し戻そうとも、砕かれた遺骸は数秒と掛からず立ち上がる、迫りくるのだ。



「どう見ても数の問題じゃないっすよね。明らかに、コイツ等―――ぁ? もしかしてよ、コイツ等―――()()()()()されてんじゃね?」

「………は? はぁ!?」

「そう、それ。俺も思ってたんよ。ほら、このホトケさんら、地面の下に埋まってた骨だったりするだろ? なら、構造物という可能性も微レ存……?」

「―――ありそう!?」



 索敵班に属する、悪知恵の回る団員らに仮説を提示され、男……チャラオも思い至る。

 ありそう、だが―――およそ、最悪の可能性だと。


 家屋、道路……不動の構造物なら分かる。

 馬車でも、まだ許容できた。

 だが、討伐対象たるこれらまでもが破壊不可など、一体誰が……。


 ―――消耗戦。

 無限に戦い続ける必要性。

 両の脇から呈された仮説に納得し、彼は頭をフルに回転させる。



「でも、攻撃は当たってますよね。砕けてるし……」

「―――攻撃による「破壊」は出来ない、とかか? 構造物なら吹き飛びようもないが、スッカスカ骸骨なら、触れたり押したりはできる……いや、おかしいだろ」



 PLの攻撃では傷付かず。

 押されて倒れた際、転んで砕けるなどの「ひとりでに壊れた」というべきダメージのみが通っている?


 屍兵は、それを歯牙にもかけず再生する。


 ……あまりに理不尽極まる戦場。

 まさしく、不死身の軍勢を相手にしている状況だ。


 この状況下で。

 まだ、唯一の救いと言える事があるとすれば。



「むふーーん……。良いね、外も。【特別報酬】のあるかなしかだけで、旨味自体はこっちも悪くないよ。ね、ゴードン」

「んだなーー……はぁ」



 彼等は勿論として。

 この場に集う異訪者は、その多くが技術を練り上げた歴戦の勇士たちという事実。

 現れた声の主たちを視界に収めた途端。


 目を見開いた盗賊団員が声を張る。 



「あ!! 青騎士だ! 青騎士って名前の癖に特に水属性の魔法とか使えるわけじゃない青騎士だ!」

「「あーおきし、あーおきし!」」

「はい、うるさーい」



 身の丈は、150センチ後半といった所。 

 空色の短髪に、蒼の鎧。

 まさしく「青騎士」という名前に相応しいいで立ちの彼は、傍らに身の丈180はあろうかという巨漢の戦士を伴っており。



「―――おぉ! 切り込み隊長、凶漢のゴードンもいるぞ!」

「「ゴードン、ゴードン!」」

「……はぁ」



 その戦士もまた、彼等盗賊にとっては有名有名処であることが伺える。



「うっっひょぉぉ。今日は滅茶苦茶ツイてるねェ。サーバー第一位、最強ギルドの副団長様と中心PL様らが、こんな狙えるところで油売りの(あきな)いしてんだからねェ!」

「サイコー!!」

「何でこんな肝心な時に団長いないんすかねェ!」


「……すっげーテンション高いな、コイツ等」

「ね。―――落ち武者って感じの……あーー、もしかして傍若武人さん達か。PK大好きクラブの」



 盗賊たちは、己らを決して過大評価はしていない。

 所詮、ギルドランクなど圏外。

 完全な道楽主義の集まりで。

 それこそ、上位のギルドを一方的に知っているだけの、悪質ファンのような……相手からすれば、取るに足らぬ存在と見られているとすら、自身らを定義して考えていたが。

 


「これは、これは、クォレハ……。円卓の副団長。天下の青騎士さまにお見知りおき頂き、恐悦至極で」

「多少はね。対人では滅法強いって有名だし、事実上位ギルドが幾つもやられてるらしいし。あと、【闘技都市】の月大会で優勝してる人も居たよね? ……たしか、タカモリさんだっけ? ただGRに興味ないだけで、粒は揃ってるんじゃない?」

「お? 本当によく調べてんねェ」



 或いは、こういった情報への貪欲(どんよく)さもランク一位たる所以か。


 流石青騎士、噂に違わぬ存在と。

 チャラオは、目の前の……少年? を前に、舌なめずりを始め。

 団員たちは各々の武器を舐め舐めし。 



「某の名前が聞こえましたが……おっと、ナイフ舐めの大会中で?」

「―――お、タカちゃん。早かったな。また、ダンちょの無茶ぶり? ウォッカベースのアレ?」

「えぇ、カミカゼしてました」



 不意に現れるは、つい今しがた別行動をとった筈の仲間で。

 突如始まる脊髄会話に。

 顔を(しか)めて首を捻った末、理解が追い付いたのか、青騎士が乾いた笑いを漏らす。



「はは、何その遣り取り。伝わりにくすぎでしょ」

「てか知ってんだ」

「いけませぬよ、青騎士殿。未成年飲酒は」

「未成年じゃないです大人ですーー。……お酒は嫌いだけど―――じゃなくて。貴方が、タカモリさん。ウチ入る?」

「えぇ、タカモリです。お初に、青騎士殿―――丁重にお断りします」



 カミカゼとは、ウォッカをベースとした度数の強いカクテルの一種。

 日常的に聞く名でもなく。

 思い至る辺り、彼が大人だというのも冗談ではないのかもしれないと。


 チャラオは、うんうんと頷く。



「―――成程。青年……いや、成年だったわけネ」



 ……………。



 ……………。



「さ、某にも現状を教授して頂きたく」

「うっす」

「実は、かなりマズい状況で―――骨ッッ!!」



 互いに積もる話はあれど、呑気に会話している間などなく。

 やがては抑えきれなくなってきたか、消えていくPL達と対照的に続々と数を増す骨の海。

 

 一時戦闘行動を中断していた影響か。 

 彼等の周囲には、目に見えて骸骨が急増しており。



「「……………」」



 自然、背中を預け合う。

 敵味方の区別なく、仮借(かしゃく)なく……偶々この場に居合わせた、ただそれだけの異訪者らは無言のままに連携を始め。


 

 一糸乱れぬ、という言葉は。

 果たして、彼等か、敵方か、それとも……。



 ―――骨と骨がぶつかり合う。

 一方は、骸骨の大軍勢。

 もう一方は、黒布を纏った……まるで正規兵のように一律に動き続ける一団。


 後者の、あまりに模範的に過ぎる動きは。

 何処か、リアルタイムアタック(RTA)のような人間の限界を彷彿とさせる。



「……使い魔。何処まで練り上げたらああなるんだろうな」

「流石、というべきでしょうか」



 黒衣や装備品を纏う、軍勢とは別種のスケルトンたち。

 アレは、PLの産物だが。

 使役する召喚物自体は、対人に長けた彼等をして、練達の白兵術だと思わせるもので。



「それは、禁忌。それは、栄光。第二の、仮初の生を与えん、我らは死葬の守り人」

「我らは生の冒涜者」

「死を尊ぶ者」



 彼女等こそ、使役者なのだろう。

 歌うような行進と共に、日光を避けるかのような、全身を外套で覆った一団が現れ。



「屍万歳、髑髏万歳……!! 人間は百年で死ぬけど、亡者は千年だって生きられるんだよぉ? ……うへっ、えへへへ……この白さ、この曲線美、されこうべェェェ、サイコーー」

「ちーちゃん、キモイ」



 その先頭を行く一組。


 あまりに印象に残るキャラ付けに。

 青騎士が、瞬時に反応する。



「おぉーーっと、その気持ち悪いくらいの死体性愛(ネクロフィリア)ぶり。死者の王さんじゃん?」

「あ、青騎士くんじゃん。おひさ」

「うへへへ、もうじゃもうじゃ……え? 青騎士? ―――ひぃぃ……!」



 彼女等こそ、最上位に君臨する大規模ギルドが一角、【亡者の千年王国】

 死者の王と呼ばれた、ふらふら歩く黒髪の女性は。 

 合わぬ目の焦点に青騎士を収め、隣にいる落ち着いた雰囲気の女性の背後に隠れる。



「……あれ、死霊の団長さんか。噂、本当なんだな」

「そのようですな」



 円卓の盃、古龍戦団、亡者の千年王国……。

 常にギルドランクTOP3に君臨し続ける最上位ギルドの中で。 

 何故、円卓が最強と呼ばれるのか。

 何故、彼等は他の追随を許さぬ程のギルドポイントを保有するに至ったのか。


 その答えは。

 まさしく、この反応にあり。



「―――やめてェェ、殺さないでェェ……」 

「ちーちゃん、ちーちゃん? 大丈夫。今回は、キルされてもGPは奪われないよ。だから良いよ」

「良いよってなにぃ……!?」



 早期に頭角を現した、現三大ギルド。

 かつて、彼等のポイント数は僅差、均衡していたが。

 ある時、円卓の副団長たる【青騎士】が亡者の団長の首級を挙げるという事件があった。


 当時は、敵味方入り乱れた乱戦。

 青騎士もまた、団長の討伐後に亡者の副団長に倒された事である程度の痛み分けとなったが。


 PL間では有名な話で。

 噂はまことだったのかと、舌なめずりをしつつ頷く盗賊ら。

 彼等は、未だ欠片もPKを諦めてはいない。


 クロニクル下の現在は、敵ギルド団員、団長を倒してもGPは奪えぬが。

 そんな事はどうでもよく、諦めてはいない。

 


「へい、へい、ショタ騎士。過去の事は水葬してあげるからさ、ウチ入らない?」

「うへェ!? みっちゃん!?」

「絶対イヤ。というか、僕成人済みだって言ってんじゃん」



 黒衣の屍兵が屍兵の軍勢を押し返す中、落ち着いた雰囲気の女性が青騎士へ声を投げるも。

 即答による却下。

 何故か胸を撫でおろす亡者の長は、今に溶けそうになりながら言紡ぐ。



「ふ、ふぅ……。そうだよ、みっちゃん。無理矢理は良くないよ~~? ってか、ほんとうに何言ってんの……私の内臓をころころする気で?」

「良いよ。今日は特別」

「そんな特別いやーー……!」



 目の前で行われる、最上位ギルド同士のやり取りに。

 ウズウズと待機を続ける盗賊ら。


 彼等の思考にあるのは、いつ背中から襲い掛かろうか……ただそれだけで。

 


「ま、今回協力するだけなら、全然おっけーだし。この際だから、このメンツで共闘しない? というか、その為にここに来たんだけど……皆その気じゃないの? もしかして、ボクだけ?」

「「……………」」

「おい、おい。俺たちゃPKギルドだぞォ?」

「最上位ギルドのPL……正直な所では、実に死合いたいですなぁ」

「ひぃぃぃ……、なんか怖い落ち武者さんたちいるぅ……。あ、でもイケメン……、骸骨も良い形してそう……」



 チャラオとタカモリが逸り、団員達も三日月の笑みを形作る。

 (はた)で黒髪の女性が縮こまる。


 双方の反応を確認し。

 元気一杯と頷いた青騎士は、盗賊らに負けぬ笑みを形作り、両手をあげ。



「そんなので良いなら、これが終わった後、いつでも受けてあげるからさ。ね? ゴードン」

「めんどくせえ」

「ほら、どんとこいだって。だから今は……ね?」

「……ふむ?」

「余裕だなぁ」

「いまを楽しみたいだけだよ。だって、クロニクルだよ? 楽しもうよ、今を」

「―――それは、確かに?」



 見解の相違、考え方の違い。

 特段、クロニクルに重きを置いているわけではない彼等盗賊も、その言葉には思わず同意せざるを得ず。

 毒気を抜かれ、状況を伺う中。



「ま、僕らの楽しみはこっちだけじゃないからね。そこだけはズルいけど」



 騎士が、意味ありげに呟く。



「皇国、魔族、PL、うちの主力……。どうなるのか、あっちも楽しみだよ」

「青騎士の旦那? 今のどういう事で?」

「フフ……、実はね。いま、教皇庁内部にはウチの王様たちが―――うん? ―――あ、ヤバいね、これ」

「「!」」



 青騎士二の句が告げられんとする中で、視界に映り込む影。

 大きく動き出す幾つもの巨影。


 今に、黒の鎧を纏った騎士達は。

 上空から教皇庁へと手を伸ばす。



「―――これは……、本当に予測できない終わりになりそうだよ。僕もあっち行けばよかったかなぁ?」





   ◇




――――――――――――――――――――――

【World Quest】 未曾有皇演(phaseⅡ)



【概要】

現在、皇都内部に不死者の軍勢が出現しています。

複数の勢力で協力して軍勢を掃討し、期間内に多くの戦果ポイントを獲得しましょう。


クエストの達成に応じて【ギルドポイント】及び【戦果ポイント】を獲得可能。

【戦果ポイント】引き換え対象賞品は、クエス

ト終了後に公開されます。


【仕様】

本クエストでは、皇都全域を戦闘可能域に指定。

全域を破壊不可構造物に指定。



【備考】

・開催:9/23日~9/30終日

・再参加可能/デスペナルティは特殊戦闘の規約に準拠

――――――――――――――――――――――

 



「……なに、これ」



 クエスト画面?

 私達の知ってるやつと全然違うじゃん。


 これが、普段人界側PLの見てる画面って事?

 複数の勢力でって……もしかして、人界のPLと共闘できるって事!?


 僅かな期待が胸を過る。

 


「―――この!! ***野郎が!」

「下からチョコチョコ……鬱陶しいんだよ! そんなに死にたいならやってやる!」



 ……あーー。 

 下から断続的に繰り出される魔法攻撃が身体を掠め、仲間のイライラが(つの)っていく。


 また一人、仲間が悪態をつきながら降下していく。

 攻撃対象は、聞く意味もないだろう。



「……うわぁ、無理そう」

「ボスの考えてる事、分かりますよ。平和主義……協力自体は大変結構なんですけど、なーぜか人界の方々は私達を目の敵にしてるみたいなんですよ、何故か」

「何故か、なんだけれどね。どう思う? クオン」



 白々しいにも程がある。



「やっぱり、第一次の影響だよね。完全に敵って認識に成っちゃったの……協力、出来ないかなぁ。相互理解の第一歩なのに」

「……うち等の指導者が一番の融和派って、第一次の敵方が知ったらどんな顔するのかしらねーー。この戦場にもいるでしょうし」

「ひとでなし」



 傍らにいる騎士の一人は、ゲーム内で出会った友達。

 同じ女性だから気が合うけど。

 結構意地悪だ。


 私達本来の目的は、皇都制圧―――だけど……今は完全に想定外の事態で間違いなく。

 混乱した時は、同僚……より現実的に行動できるNPCを頼るべきで。

 そちらに向き直る。



「―――これは……、よもや」

「アリギエリ?」



 彼は、このあまりに意外過ぎる状況に対し、只混乱しているという訳ではないらしくて。

 何か、思い至ってる?



「ヴァディスよ。任務は中止だ」

「……え?」



 でも、その選択こそ彼らしくもない。

 生粋の将軍、或いは一兵卒として、下された司令には何の疑問も持つことなく、最前線へと斬って出る。


 それが、彼なのに。

 あのアリギエリが、戦いを開始するより早く任務の中止を?



「ねぇ。説明とか、ないのかなぁ」

「我らの目的は、決して変わらぬ。これなるは、大神アリマンの兆候、予兆。眷属たる冥府の一兵卒らが、現れた」

「大神アリマン?」

「―――って、魔神王陛下の同族?」



 ねぇ、難しい言葉使わないで?


 NPC特有の、この世界の人だからこそ深く知っている情報は、私達には未だ難解で。

 つまり……えっと。



「任務どころじゃないって事だね。じゃあ、私たちはどうすればいい?」

「……む、ぅ。こうなっては致し方ない」


 

 問いに対し、彼は一瞬固まり。

 苦渋、とも言うべき顔で告げる。



「貴様は、隊を率いて皇国中枢へ侵入するがいい」

「任務は中止じゃないの?」

「決して、続行不可能という訳ではない。封印の綻び、その要因もまた、紛れもなくかの組織にあるゆえ。……貴様等は、どちらかを達成するだけでよい」

「―――任務だね、分かった。教皇庁、だっけ」



 皇国中枢を制圧するか、この異常事態の根本を解決する。

 そのどちらか、或いは双方をも達成する。


 それが、任務。


 ……いっそ一人で行動したい。

 その方がずっと気が楽なのに。



「……アリギエリは?」 

「我は、我の為すべき事を為すのみ」



 ただそれのみを言い残し。

 飛竜を駆り、急ぎ己が指揮するNPCの部隊と共に去っていく同僚の背中を見送り。

 私達異訪者の部隊は、上空に取り残される。


 どうしようかな。

 今回は、仲間達も数いるし……私だけ別で行動させてもらえるかな。

 指揮は、取り敢えず誰かに任せるとか……。



「わぉ。育児放棄―――ネグレクトってやつですかね? これ」

「馬鹿。……クオン。どうするの?」

「……………」

「あの、クオンさんのこの顔」

「こっちもネグレクト考えてそうね。ふーん……、じゃあ―――どうします? 将軍さま」



 ズルいよ、ソレ。

 それ出されたら、一人だけ別行動とかできるわけないじゃん。


 というか、何で皆私の考えてること分かるのかなぁ。


 曲がりなりにも指揮官である私へ、部隊の視線が注がれる中。

 意を決っして一つ深呼吸をした私は。

 高く振り上げた手を、輝きの構造物へと向ける。 

 



「目標、教皇庁―――魔王陛下の命により、皇国中枢たる機関を制圧する。各自、好きに手柄をあげよ」

「「おおおぉぉぉ―――ッッ!!」」

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