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ルーキスinオルトゥス ~奇術師の隠居生活~  作者: ブロンズ
第六章:ステップ編

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第1幕:改めて確認を




 サルサソースの赤に、ひよこ豆の黄、マンゴーチャツネベースの橙にアボカドバジルの緑……。

 これら、様々な種類。

 香り高き作り置きのソースを、硝子製の容器へ丁寧に重ね合わせれば……。

 


「出来たーー。七色のディップソ~~ス」



 青、藍、紫など……とりわけ青が難所だったけど。

 そこはチートの着色料で補い。

 私は遂に、人生でやりたい事500位圏内の一つ、多分三百何十位くらいにある念願の七色ペーストを用いた自由な社風の昼食を摂る事に成功した。



「野菜スティックには青のバーニャカウダベースが……ふむ。こんがりフランスにはひよこ豆とチーズソースのパテ……、香味野菜ソースのペーストも二重丸だ」



 ―――素晴らしい。

 まさか、自宅の昼食でこれ程のテーマパークを実現する事が出来るだなんて思わなかったよ。


 主に野菜ベースのソースは、お肉や揚げ物のしつこさと無縁の取り合わせだからくどくなく。

 淡白な野菜や固めのパンとは相性も抜群。

 滑らかな中にも濃厚さがあり、それぞれ全く異なる舌触り、歯触りも秀逸。


 まさに、ソースが主役のご飯。

 色を混ぜ合わせて全く違う味にしても良い。


 こうなると、楽しくなって逆に食べすぎる可能性もあるけど。

 そこは、食欲減退色な青色でバランスも良い。

 

 しかもこれは、殆どお皿を必要としない昼食。

 食材を盛り合わせるプレート。

 そしてソースの容器だけだ。

 つまり、洗い物も少なく速やかに歯磨きへ移行できるというもので。



「食べたらゲーム……、食べたらゲーム……」



 リズムを取りつつ歯を磨き。

 食事と準備が終わるまでの一時間程外で干しておいたベッドに横たわると、本日二度目となるフルダイブゲームの世界へと舞い戻る。

 起きてゲームしてご飯御食べてゲーム。

 休日をこれ程満喫できるのは、やはり非常勤万歳。

 私、給料を犠牲にする事で自由を勝ち取れたんだ。


 昔御婆様が言っていた通り、大人って素晴らしいんだね。



 ……………。



 ……………。



 意識が途切れたように感じたのは、体感でほんの一瞬。

 現実時間でもそうだろう。

 今日の予定としては、先程のログインで確認した通り。

 第二クロニクルの発令が近いらしく、その舞台は【皇国】という事で。


 とうとう、待望となる皇国への街道がPLに解放されるんだ。


 それで皇国といえば、私にも一つ心当たりがある。



「―――――只今。そしておそよう」



 二階には誰も居ないけど、挨拶大事。

 起き上がったベッドの傍らにある収納棚には、お昼前に見ていた新聞とペンが無造作に置いてあって。

 

 拾い上げたペンを回しまわし。

 もう片方の手でパネルを操作しつつ、早速目的の画面を起動する。 


 


――――――――――――――――――――

【original Quest】境界の深奥(進行度:Ⅰ) 


 

 図書館にあった怪しげな本。

 袋へと入った、謎の白い粉。


 凄く、怪しいですよね?


 どの様に分岐するか。

 全ては、貴方の動きに関わってきます。


 まずは、やっぱり通報!

 信頼できる政府・役所へ、貴方の成果を

 報告しましょう!



 ※現在、達成済みのクエストです。

 


【達成条件】

・都市政府へ不審物の情報提出を行う



          NEXT ≫ 進行度Ⅱへ

――――――――――――――――――――




 ……………。



 ……………。


 

 私からすれば、最早顔なじみにすら感じる画面。

 コレを見つけたのは、ゲームを初めてまだ間もない頃で。


 ひょんなことから始動させてしてしまい。

 これ迄一緒に行動を続けた存在だ。

 私がずっと温めている唯一のクエスト、この【境界の深奥】は……これが進行度Ⅰの時の画面だろう?


 既にこの面はクリアしているから。

 ボタンを押して、進行度を進める。


 そして更に、進行度Ⅱも、殆どやる事の無い連絡待ちみたいな状況だったから既に終わっていて。

 



――――――――――――――――――――

【original Quest】境界の深奥(進行度:Ⅲ)



 貴女の活躍により、三国に蔓延る薬物の出

 所と取引方法が発覚しました。

 ひょんなことから当事者となってしまった

 貴女は、自ら選択する必要があります。


 事実を隠蔽する信仰側へ回るか。

 事実を公に提出する規律の側か。


 全ては、【皇都シャレム】で解き明かされ

 ることでしょう。

 知られざる禁忌の奥の奥。

 正義と悪の境界線を、自らの価値観の元探

 しに行きましょう。


 手掛かりを知るには、【都市政府】と協力

 することが望ましいかもしれません。



【達成条件】

・皇国の深奥へ辿り着き、選択する。

――――――――――――――――――――




 そして―――これが、進行度Ⅲ。

 当時はまだ皇国へ行く手段なんか存在しなかったからどうにもならなかったけど。

 今なら、この難解な言葉の意味も分かるのかな。


 今迄は、例の粉を提出したプシュケ様に伺っても「まだその時ではない」って言われてたし。

 

 進行度Ⅱについては、そこそこ前の話になるけど……。

 ある日。

 クオンちゃんから連絡が来て、主人であるプシュケ様が読んでいるからと古代都市へ赴いた私だけど。



『件の調査が進んだぞ、ルミエールよ』



 三人のお茶の席で。

 彼女が二指で挟んで持ち上げるのは、美味しいスイーツではなく。

 小さな長方形の透明な袋。

 その中には、粉糖のように細かい粉。



『これなる袋の内容物は、皇国で流通している生産物よ』

『皇国で流通ですか? ……およそ、植物由来。農業関連は王国の管轄だと伺っていたのですが』



 怪しい白い粉でも何でも、鉱石由来でなければ元は植物の筈。 

 抽出とか、加工とか。

 王国が得意な分野じゃないのかなとその時は聞いた覚えがあり。



『然り、であるが。いつか伝えた通り、これなるは薬物。古くは神をその身に降ろし、声を聴く触媒として用いられていた。昔から栽培されていた頃の名残もあり、少量ならば僧侶が行う治療の材料にも用いられているのよ』

『成程、だから現在でも……』

『皇国の伝統という事じゃな。……しかし、それはあくまで薬草や丸薬の状態での話。ここまで加工・凝縮し結晶の粉とするなぞ。過ぎたりて害しか呼ばぬであろうよ』

『それはつまり、幻覚とか、中毒とか、体機能の低下とか……』

『うむ、うむ。近年、犯罪組織の暗躍は増加しておる。……三国を跨いで陰で取引されている薬物の本拠。やはり、深奥はあの国か。……きな臭い話よな』

『―――怖いですね。どう思う? ハクロちゃん』

『ん……、ん……?』



 ……………。



 ……………。



 まぁ、要するにマフィアとかヤクザとかシンジゲートとか。

 このクエストの終着点は、そっち系の怖い話になりそうだよね。


 もしも致命的なミスをしたら。

 それこそ最悪……私、魚の餌とかコンクリートの下敷きとして生きて行く事になるのかなぁ。



「でも。だからこそ、このクロニクルの混乱に乗じて暗躍できるやもしれないし……。()しくも開催地は同じ皇国首都……。どう思うね? 君たち。これは千載一遇な機会だと思うんだけど」



 会話を思い出していた私の問いかけに対して。

 ホホ? とか、ほよほよ~~とか。


 ハト君は首を前後させ。

 ミニマム太陽は身体を左右に揺らす。



「なるほど? 全く分からない」



 けど、色々と良い機会ではあるね。

 最近は結構ヒマを持て余してたし。


 保留中のクエストとか。

 消化できるものは早いうちに終わらせておかないと、落ち着かなくてね。



「そうと決まれば、皇国の皆さんにも道化師の素晴らしさを布教しよう。目指すは皇都の人気者だよ」



 それもまた、つい最近改めて意識するようになった、NPC好感度というもの。

 一度戻って、パネルを……っと。



――――――――――――――――――

設定:NPC好感度【帝国】




【main:通商都市トラフィーク】

全体好感度【100/100:極高】

最高値好感度、都市の人気者です。



【main:鉱山都市フォディーナ】

全体好感度【56/100:中】

彼等が貴女に興味を持っています。



【main:学術都市クリストファー】

全体好感度【30/100:中】

彼等は貴女に興味がない様子です。



【main:要塞都市カストゥルム】

全体好感度【30/100:中】

彼等は貴女に興味がない様子です。



 NEXT PAGE  ● ○ ○ ○ ○  

――――――――――――――――――




 重要都市(メイン)である四大都市と、その他(サブ)の都市で存在するメーター。

 これが、各国の各都市ごとに設定されているらしい都市好感度の項目だ。

 王国とかは行ってない場所もあるから、まだアンロックされてない都市は名前ごと見えないけど。


 好感度には極高、高、中、小、獄小があって。


 NPC経営店の商品がお買い得になったり。

 

 施設の利用にVIPなサービスがあったり。


 上げてあると偶に嬉しい事があったりする。

 けど、逆に素行が悪かったりするとそこだけじゃなく他都市まで悪評が巡ったりして、周辺都市のNPC達からの評判すら悪くなる事もあるって聞いたね。


 盗賊なチャラオ君達から。


 ……彼等は、その辺どうなんだろ。

 結構義賊的な一面もあると思うんだけど、好かれているのも想像しずらいよね。


 

「で……トラフィークが一番高くて、次が王国のアンティクア。何故かリートゥスも高いし……。何でフォディーナよりも高いんだろうね?」



 帝国、王国とページを切り替えつつ、色々考えてみる。

 鉱山都市フォディーナは、あの子らのホームだしよくお邪魔するから分かるけど。

 凄く謎なんだよね、海岸都市。

 スイカ割りとコンテスト、防衛戦の短期しか関わった記憶がないし。

 それ以降行ってないのに。


 まさか、あの期間で好感度80過ぎまで上昇するかな?


 好感度上下の指標。

 その辺、境界が曖昧だ。



「―――……境界、ね?」



 図らずも思考がクエストと繋がっちゃったけど。


 ともかく、受けた以上は完遂するのが私の指針(ポリシー)

 大前提として、まずは今をときめく皇国へ行く必要があるよね。

 

 でも、私だから。

 帝国は自由に行き来できても、王国はせいぜい都市二つくらいだし。

 どうやっても、街道に出没する魔物のレベルが絶対的に高いであろう第三の国には行ける気がしない。


 ……ならばこれは、いつものだ。

 自分の力だけで無理だと思う時は、素直に誰かに頼るという事が必要。



「ユウト達から遠足のお誘いも来てるし……。ハクロちゃんかクオンちゃん、空いてないかな?」



 そもそもハクロちゃんは騎士さんだし。

 クオンちゃんも。 

 あまり深くは聞かなかったけど、かなり忙しいらしい。


 ―――ダメでもともと、だね。


 地図上では、かつてない遠くへの旅だけど。

 最強の助っ人さん達へ向けて、私はフレンドメールを送ることにした。

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