少年は語る
——————誰かが笑う声が聞こえる。
——————誰かの視線を感じる。
——————誰かが僕のことを噂している声が聞こえる。
そこからつかみ取れる感情は、嘲笑、蔑み。哀れみ、etc。
向けられてるのは尊敬とか、憧れなんて感情とは程遠い。そんな、好意的なものだったらどれだけいいだろうと、思っていたのはいつの頃までだったっけ。最も、一部を除いてそんなことあるはずもない、なんて諦めてしまっているが。
なんでこんなことになってんのかって? 自分で言うのもなんだけど、僕はある程度勉強も、基礎体力と呼ばれるものも並くらいにはある自信はある。そりゃもちろんできる人に比べたら見劣りするだろうけど。
そんなものとは無縁だろう、なんて思うだろうな。
ギフテッド、その昔、この世界を作ったとされる精霊から人間に与えられたとされる能力。この世の万物に宿るエネルギーである「魔力」を基にこの世界の人間だれしもが使える、自分の想像を形にする力。
ギフテッドが与えられるのは8歳になる年の初め。その間に全人類はもれなくギフテッドを手にして、それぞれ適正のある職業に向けて日々研鑽を積んでいく。ギフテッドの有無に関係なくつける職業は勿論いっぱいあるけど、やっぱり自分の能力を活かしたいと思うのが人のサガという物だ。
なんで精霊が人間にギフテッドを与えたかっていうのは、文献で残ってるらしい。強力な闇魔術を扱う魔界の住人とのパワーバランスを保つためなんだとか、なんとか。
そんな感じでそのギフテッドっていうのは、そう、誰でも持ってるものなのだ。俺も小さいころ、ギフテッドで身体能力を強化させて討伐隊で魔獣と戦う親父に憧れたものだっけ。
世界で、使えないものがいるなんて、今じゃ考えられないくらいには。
誰にでも、使えるものだ。
そう。
世界で、ただ一人、
この僕を除いては。
僕、フィスト・スカーレットは、世界でただ一人、ギフテッドが与えられなかった人間だった。
そして、その様は、
「精霊から見放された少年」なんて揶揄された。