【9】Mine note-4
僕達は歩いて朱美の後を付いていき郁恵のアパートへと向かった。ここ喫茶店『水玉』から友引郁恵のアパートまでは歩いて20分程であり。商店街を抜けて歩いていると尚吾が突然走り出した。そして5分程して息を切らして戻って来ると。小さい紙袋を複数取り出して皆に配った。僕は紙袋の中身を見ると中にはサクサクとしたコロッケが入っている。尚吾が笑顔で
「何かさっきのやり取りで、何か腹が減ってさ。そこの『山下ミート』のコロッケ美味しいんだぜ。みんな食べなよ。」
そう言うと尚吾はコロッケをサクッと噛ると中からホクホクとしたじゃが芋が見えて実に美味しそうで。僕も続けてコロッケに噛り付いた。衣の軽くサクサクした感触の後に、ホクホクとしたじゃが芋の柔らかい甘味が僕の口の中で広がり少し嬉しい気持ちになり
「美味しいね。」
と口ずさむと。他の皆もコロッケを食べ始め。山下ミートのコロッケは好評であった。僕達は商店街を抜けて、そこから2つ角を曲がり友引郁恵のアパートへと辿り着いた。しかし友引郁恵のアパートには水谷の姿は無かった。そして友引郁恵のアパート部屋の前に着くと尚吾は僕に話し掛けた。
「何だよあの探偵まだ着いて無いじゃん。」
「そらそうだよ尚吾。郁恵さんのアパートの話をしている時に千香子さんも水谷さんも居なかった。つまり水谷さんにはここの情報は無い。」
「えっ?それなら何でここに来たんだよ?あの探偵居ないのに。」
その尚吾の質問に僕は答えた
「僕達にここを案内させる為ですよね?水谷さん。」
そう言って振り返ると。僕達の後ろで水谷はニヤリと笑い言った。
「良いねえ。幸島岳大くん。良いねえ。この件が終わったらうちにバイトに来て欲しいぐらいだよ。」
「僕もここに来て解りました。郁恵さんは部屋の中に確かに居ますね。」
僕がそう答えると。水谷は朱美に
「郁恵さんと連絡が着かなくなったのは、昨日の事ですよね。そして他の人と集まって死のうだ何て考えたら。直ぐに集まれる程、死ぬ事は単純では無い。」
そう言うとドアの鍵穴にピッキング道具を使いカチャカチャとやり始め直ぐにガチャリと鍵は開いた。しかしチェーンが掛かっていたのでドアは開かない為に水谷は
「そこのパソコンが得意な尚吾くん。ドアを引っ張っててくれ。」
と頼み。尚吾がドアを最もワイヤーカッターを取り出して。バチン!とチェーンを切り、ドアは開き水谷は朱美を手招きした。朱美は感極まって
「郁恵ーー!居るんでしょ!」
と大きい声を出しながら。友引郁恵の部屋に入り僕達も続こうとしたが水谷に止められて。千香子と水谷は郁恵の部屋の中へ入り鍵を掛けた。尚吾はその状況に納得行かないらしく少し騒いだが、僕が繊細な状況はプロに任せるべきだと伝えると。尚吾は渋々大人しく座り込み僕も隣に座り、中の顛末を待った。
すると数分で水谷が中から出てきて。煙草を取り出して火を着けた。そして咥え煙草のままでドアのチェーン修理を始めた。水谷は慣れているらしく手際よくアッと言う間にチェーンを修理すると僕達の隣へ座った。僕は何だかこの水谷珠樹と言う探偵に興味を持ち見ていると
「そんなに珍しいかい?ただのおじさんだよ。それとも君はこれからの事の方に興味が有るのかね?」
紫煙を燻らせながら水谷はそう言った。尚吾はそれに割って口を開き
「これからよりも。今はどうなったんだよ。」
水谷はその尚吾の言葉につまらなさそうに
「今は何の面白味も無い。ペチコさんのカウンセリングだよ。大人の女性は自殺未遂の頻度は多いが死ぬ事は少ない。だから集団自殺を行う際に女性の割合が増える。近い感情として、死にたいってより殺して欲しいんだろう。おじさんとしては、高城君が調べ出した『屍逝人』の方が気になるけどね。」
そう言うと水谷はポケットから尚吾のメモを取り出して。屍逝人の名前を書いた頁を開いてニヤリと笑んだ。