【75】Transparent dot-2
transparent、透明な、透き通った。その言葉からして本来それをdot、水玉模様として認識する事は出来ない。案の定、検索しても様々な水玉模様が出てくるばかりでtransparent dotに関する事は出て来ない。そこで僕は玉田観月と言う人物について調べた。
その結果、水谷探偵事務所へ依頼に来た『玉田観月』なる人物は何処にも存在しなかった。Mine noteやブログ等にも玉田観月なる人物には当たらず、そう言ったSNS等に登録していない人物なのであろうと思ったが何か嫌な予感が過った。とりあえず事務所を後にした零士へ電話をしたのだが零士は電話に出なかった。しかし数秒後に零士から折り返しの電話が掛かった。
「兄弟子どうしたんすか? 」
「零士あのさ...... 」
「そういやさっきマリアさんに会いましたよ。クリスマスは大成功だったから喜んでましたよ。兄弟子や水谷さんも騙されてたんだから面白かったですよ。」
「あの時はお前ら...... 。」
「あっ、すみません。電車が来たんで。」
そう言って電車の轟音が言葉を遮り、通話は切れてしまった。僕はクリスマスのマリア達の悪戯を思い出して少し悔しくて鼻息を鳴らした。すると事務所のドアが開いて何故か水谷とマリアが一緒に事務所へと戻ってきた。マリアは楽しそうに
「さっき珠樹っちと鯛焼き屋さんの前で会って、一緒に食べようってなったのよ。タケも居るって言うから来ちゃった。」
「そう言えばさっき零士にも会っただろ? 」
「うん。クリスマスの悪戯は大成功だったねーって喜んでたよー。」
「これは何ですか? 幸島岳大君。」
水谷は手紙のコピーを手に取り
「冨永零士君が捜査に出てしまった訳ですね。それでは追うことにしましょう。嫌な予感がします。」
「追うって何処へですか? 」
「手紙の暗号の場所ですよ。干支です。」
「虎立つ見牛断つ旨経つ寝、音取ら去る耳雨々上手右? 」
「寅辰巳丑辰午辰子、子寅申巳巳兎兎午兎です。それを数字に直して35625751、139664474。幸島岳大君はスマートフォンでその座標を確認してください。」
「干支かぁ、なるほど。」
「この事件は幸島岳大君が気付いた通り、架空の事件なのです。Transparent dotは玉田観月、本人です。透明な水玉、ポルカドット611を信仰しているとして架空の事件を持ち掛けるなら解りますよね? 急ぎましょう。」
水谷は急いで事務所を出て、僕はマリアへ残る様に言って水谷の後を追った。僕達は電車を乗り継いで、座標の示すS区Kオリンピック公園へと向かった。二人は零士がこの暗号を解いて正確な位置へと向かっていない事を祈った。
僕と水谷はKオリンピック公園へと辿り着いた。そして座標の位置である体育館傍の横広い階段へと急いだ。僕と水谷はバスに揺られて逸る気持ちではあったが、危険なアクシデントに備える為にも落ち着かせた。
しかし辿り着いた先は悠長な状況では無かった。パトカーや救急車や消防車達が赤い回転灯をギラギラとさせ、Kオリンピック公園からはまるで僕達の気持ちを踏み躙るかの様に嘲笑う黒煙がもうもうと立ち上っていた。僕と水谷はバスから降りると急いで、黒煙の下へ走ったがそこには真っ黒になったタイルの上で消火活動が行われていた。
多くの野次馬を掻き分けて先へと向かったが、警察官に遮られ立ち止まる僕等の耳には
「何が有ったんだよ。」
「爆発事故だってよ。」
「何か若い兄ちゃんやお年寄りが燃えていたってよ。」
そんな言葉が飛び交い、消火活動を終えた所へ救急隊が駆け付け、真っ黒な人の形をした物を担架に乗せている姿を警察官達はブルーシートで覆い人々の目を遮った。僕は身体が震えて自分と空気の境界が判らない程に感覚を失って立ち尽くした。




