【72】Red Stalker-5
僕はスマートフォンを何回も開いてRed Stalkerのページを確認するが新しい動きは無く。それに諦め半分で『靴 十の穴』で検索を掛けてみた。そこには8ホールや3ホールと書かれた靴があり、僕はそれを見ながら考える事がバカらしくなり。考えようとするが、頭が回らずにそのまま眠りに着いた。
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12月23日
いつもせまっ苦しいベッドの上が広々として開放感こそ有るが、物足りなさを感じて指先はそれを求めるように壁をなぞっていた。
僕はRed Stalkerの要求を書き写したメモを手に取り見詰めて、マリアが不安な気持ちになっている事を考えた。しかしどうも納得の行かない点もたくさん有り、この要求を文面通りに捉えて良いものだろうか? 等と思考が右往左往と飛び乱れているが、悩みが有る際にいつも寄る水谷探偵事務所へも行くことも出来ないので僕は買い物に出掛ける事にした。
張り詰めた水色の空気は、冬の朝を報せるのに十分な程冷たくて。僕はマフラーを羽織ると電車でS区へと向かった。相も変わらず心境とは関係もなく繁華街は賑わいを見せて、僕の事やマリアの事なんか知ったことかと世界は回る。
しかしそんな喧騒とする世の中に無駄な感傷を抱いてみても何も変わらずに、ガラスの中に飾られた流行りを少し背伸びした服や靴を眺めていると僕はある事に気が付いた。その事を水谷や尚吾に連絡しようとスマートフォンを取り出したが、先日の真面目な水谷の顔や言動を思い出すとスマートフォンをポケットに仕舞い。買い物を済ませて、前々から興味の有ったレストランへと入り昼食を取った。
いつもマリアがストリートライブをやっている通りを歩きながら、マリアの事が心配な気持ちを自分では理解できずにいる事に疑問を抱きつつも僕は家路へと着いた。
この1日で水谷からも尚吾からも連絡は無く、昨日の打ち合わせ通りに事を運んでいる状況を確認する術も無く。僕はいつの間にか暮れ泥む空をぼんやりと眺めていた。マリアが居なければ晩ご飯を作る理由もなくていつもよりも時間の流れが緩やかに感じていた。
しかしそれは退屈な時間が長引いているだけでも有り、Red Stalkerの要求のメモやポルカドット611の動きを調べていても繋がりは見出だせずにRed Stalkerは単独犯であろうとの推察に至ったが。どうも解せない部分も有り、例えば愉快犯は被害者の反応を見るために近しい人物で有る事が多いが、寧ろ近しい人物が誘拐されている。
そして千香子の誘拐からの時間は兎も角として、マリアとエミの誘拐に至る時間が短すぎるのである。マリアはあの時にU駅前の広場に居たが、エミはこの町の喫茶店『水玉』へ向かう間に誘拐されている。それは朝から昼前の時間の間にである。その事からも移動時間と誘拐を行う時間を考えると、その時間は短すぎる。
ぼくはその事の辻褄を合わせて考察していくと意外な所に発想が行ったが、それは余りにも馬鹿馬鹿しくて考える事を止めて寝る事にしたのだが。一人で寝るのは少し寒い事に気が付いた。
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12月24日
あれよあれよとRed Stalkerが指定した24日となり。僕は考えうる事を全て考え尽くして自分の中での答えに至り、中半もうそれで良いやとぶっきらぼうに出掛けた。場所も要求の品も深く考えれば考えるほど迷うのであれば考えないに越したことは無いと。
16時にはまだ時間はあるが、僕の決定を下した考えが間違っていれば皆死んでしまう。この間違えを許されない事態こそがこの事件の肝であると思いながら電車へと乗り込み
「Red Stalkerよ待っていろ。」
そう気持ちだけは負けない様に口に出した。




