【68】Red Stalker-1
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12月20日
街は赤と緑の発光体に彩られ、明るい音楽がさも空気の様にそこらに散らばり。僕は尚吾と二人で買い物にS区へ出掛けている。喫茶店『水玉』でアルバイトをしている尚吾の彼女、エミへのクリスマスプレゼントを探しに男二人で出て来たのである。
付き合いを始めて1年目で初めてのクリスマスと言う事も有り、尚吾は気合いを入れてプレゼントを選んでいるのであるが。男二人でこの雰囲気の中での買い物には些か違和感をいる。そんな中でいつも迷いの無い尚吾は不安そうに
「なあタケ。いきなり初めてのクリスマスプレゼントが身に着ける物なんて重くねえかな?」
「いや尚吾とエミはもう付き合ってんだから、そんな事気にしなくて良いんじゃない。」
そんなやり取りをして。ジュエリーショップに行き尚吾が指輪を選んで止めたり、ネックレスを選んで止めたりと繰り返し。靴屋へ行ったり、服屋へ行ったりと右往左往して次第に歩き疲れていると。聞き覚えの有る歌とメロディが聴こえて来た。
僕と尚吾はその音の方へと歩いて行くと、そこでは案の定マリアがストリートライブを繰り広げており数十人の観衆に囲まれていた。尚吾はそれを見付けると僕の肩を叩いて
「そうだよ。マリアちゃんなら女性が喜ぶプレゼントが判るはずだよな。タケ。」
そう言うと。二人でマリアの演奏が終わるのを待つ事にした。そしてマリアが歌い終えて観衆の拍手の中で礼をして挨拶をすると、観衆の人々にTube Lineのアドレスを書いた歌詞カードを配ると。マリアは僕と尚吾の存在に気付いて駆け寄って来た。マリアは僕と尚吾に
「男二人でこんな所で何してるんすか?」
そう訊ね。尚吾は僕が話し出す前に
「おおーマリアちゃん。ちょっとお願いが有るんだけど。エミへのクリスマスプレゼントを選んでるんだけど、一緒に選んでくれない?」
と頼むと。マリアは僕の顔をチラリと見て、手を前に突き出して
「そう言う事ならアッシはパスです。きっとエミさんは尚吾が選んでくれる事が嬉しいんす。だから悩むがよろしい。」
そう言うとニヤリと笑って、マリアはトコトコと歩いてストリートライブの片付けを始めて。僕と尚吾の所に戻ってくると、マリアは僕の腕を掴み
「朝から歌ってたからお腹空いた。近くでご飯食べよ。アッシお好み焼が食べたい!」
そう言うので、僕と尚吾とマリアの3人で1度食事休憩を取る事にした。3人で近くの鉄板焼きの店へと行き尚吾はもんじゃ焼きを、僕とマリアはお好み焼を頼んだ。このお店は自分で焼くスタイルだったので、3人は一生懸命ボウルをかき混ぜて僕がいきなり鉄板に返そうとすると。尚吾に止められマリアが鉄板に油を引き始めた。
そして油を引き終わると、マリアは『どうぞ』と手を差し出した。僕は尚吾とマリアの顔を見ながら、ソッとボウルの中を返すとマリアもそれに続き。尚吾はボウルの中のキャベツと具材だけを鉄板の上に乗せた。そしてキャベツがしなり出すと土手を作りダム状にすると、片栗粉の混ざった出汁を注ぎゆっくりと混ぜ始めた。僕とマリアも表に色味が着き始めたら、お好み焼をひっくり返しソースを掛けてマヨネーズ、青海苔、鰹節を僕はマリアの見よう見真似で掛けた。
僕は余りお好み焼は食べた事が無いのだが、久しぶりに食べると香ばしく美味しい物であった。マリアと尚吾は、クリスマスプレゼントに対する持論を討論しながら食事を続けるが。一向に答えは出ずに食べ終わり。僕達はクリスマスプレゼント選びに街を彷徨いたが、尚吾の心に決定打を与える物は無く夕方になると僕達は家へと帰る事にした。
この時に僕達はこのクリスマスを前にした年の瀬に事件に捲き込まれるとは思っても居なかったが、帰宅と同時にそれは訪れたのだった。




