【57】Reptilian-2
水谷と千香子はそのまま無言で一時間程資料を調べた後に二人で喫茶店『水玉』へと出掛けた。水玉へ着くと川原エミが席へと案内してくれた時に水谷はエミに
「コーヒー2杯とマスターも来て貰って良いかな?」
そう伝えるとエミは笑顔で頷き。カウンター奥でマスターにその事を伝えていた。待つこと数分でコーヒーを3つ持ったマスターが現れ、水谷の隣に座ると
「今日は何の用なの?珠樹とぺチコが二人で呼ぶなんて大抵ロクでも無い用事だろうけど。」
髭を擦りながら、柔らかい物腰で水谷と千香子へ言った。水谷と千香子は声を揃えて
「『正解』」
と言い。続けて水谷は
「不思議が大好きな乙野 夜君に質問です。まだ猟には出てますか?」
「ああ。猟期は週の頭に毎週行ってるね。そうだ、こないだ鹿肉でジャーキー作ったんだ。」
マスターの乙野はそのままカウンター奥へと行って小皿に山盛りで鹿肉のジャーキーを持ってきた。そして
「食べなよ。」
と言うので。水谷と千香子はジャーキーを取り匂いを嗅いで口に入れて噛み始めた。そして水谷はジャーキーを噛みながら
「率直に言うなら。人を撃って欲しいんです。それは人の形をした人で無い者ですが。」
「僕に人殺しやれって言うの?撃ったことあるけど。」
「今回は法には裁かれません。」
そう返し水谷はコーヒーを啜ると。千香子が乙野へ
「今回のターゲットはReptilianと言われる連続殺人犯よ。犯行の映像や手口、被害者の証言を見て未だに警備による逮捕が為されていない所をみれば。犯人は人として認められて生きて来て無いわ。」
「アマラとカマラみたいに狼に育てられたとか?あの話しですら真実では無いのに。」
「どうかしら。動物が人を育てる事は不可能と見られているから。このReptilianを考えるに何からも育てられて居ないわ。捕らえた所で教育も不可能な程に殺傷能力に長けている。目が合った時点で殺されるわね。」
「フォークロアの様な現実なんだね。SCPに登録出来るかも。」
「どちらにせよ。貴方の力が要るから今夜珠樹の事務所に来てね。」
「同級生の頼みだ行くよ。じゃ僕は仕事があるから。」
そう言って乙野は立ち上り。カウンターへと下がって行った。水谷と千香子も会計を済ませ水玉を後にし。千香子は病院に、水谷はホームセンターへと出掛けた。
そして夜となり水谷の事務所へ集合した。水谷はどら焼を配ると零士がお茶を配り。モニターを使いReptilianの犯行手口や映像や資料を皆で確認すると。乙野は
「あの赤い髪の男の子は戦力なの?」
「冨永零士君は、今回は補助だけにします。」
「いや、右手にボウガン蛸が有ったからね。所でぺチコ。このレイプ被害に遭った被害者の中に出産した子は居るの?」
「いいえ。皆中絶した記録になっているわ。しかし一人だけ監視カメラに映像が残って居るにも関わらずに被害届けを出して居ない人が居るの。」
「その人が出産した可能性があると。」
「そうね。」
「出産していますね。Mine noteでその女性は子供との写真を上げています。そして頻繁に上げられる投稿頻度からみて寂しいのでしょうね。どれも『楽しい』や『ハッピー』の文字はそんな自分の心を隠す為に人目に見える所では書かれる事が多いです。埋める為に子供が欲しかったんですかね?」
水谷がそう口走ると。千香子は水谷の隣に移動してパソコンを扱いMine noteのページを確認した。そして
「歪んだヒロイズム。悲劇のヒロイン症候群って所ね。事件に遭った日の事まで赤裸々に綴られている。」
そしてこの女性の投稿を千香子はスクロールしモニターで読み続けた。
「ちょっと待って少し戻して。」
乙野がそう止めると。2年前の投稿された写真の影にReptilianらしき人物が写っている。小さく写っているが間違いなく監視カメラに映っていたReptilianであった。




