【55】Maria-6
ライブハウスの外では僕や、水谷、尚吾や千香子。カラテパンの数島、赤髪の見たことの無い男がマリアを待っていた。マリアはライブハウスから出て来るなり僕の腕へとしがみついてきた。
皆で手分けしてマリアの荷物を持ち、千香子はマリアの頭を撫でて
「皆で食事にでも行きましょ。今日は私が奢ってあげる!」
「やったー!」
と、そんなやり取りをしていると。僕の腕にしがみつくマリアの前にURICOが現れ
「何?マリアの彼氏?あんたマリアの過去を知ってんの?コイツはバンドを中途半端にしか出来ずに売春ばかりやって。違法薬物を売り捌いて生活していた犯罪者何だよ。」
そう言いながらマリアの髪の毛を掴み
「人並みに幸せになろうだなんて考えてんじゃねぇよ。売りのマリアが!」
続けてそう怒鳴り。マリアは下を向いて鉛のように重い空気を纏いながら何も言い返せないでいる。僕はURICOの手を払い
「僕はバンドマンってもっとカッコ良いもんだと思ってましたよ。過去しか見ないアンタ何かより未来に必死にしがみつこうとするマリアの方が全然カッコ良いですよ。退けよ。乗り越えて進もうとする人間の未来を遮ってデカイ面してんじゃねえよババア!」
そう怒鳴り。僕達は茫然とするURICOを通り過ぎ皆で食事へと出掛けた。水谷は千香子と目を合わせて鼻で笑い。尚吾は僕の肩を叩き親指を立てて笑い。カラテパンの数島謙吾はURICOの肩を叩き
「姉ちゃんアンタも良い歌、歌うんだからわざわざ株下げるこたぁねえよ。」
そう言うと。マリア達の後を付いて行った。千香子はマリアへ
「何食べたいの?今日はマリアちゃんが主役だから良いのよ何でも。」
「アッシお肉食べたい!」
そう元気良く答える姿を見て。先程のURICOの言葉に傷付いているか確認したが。寧ろ岳大に庇って貰えた事に喜びを感じたみたいな。そんな姿に千香子は安心して焼き肉屋へと一行を案内した。
焼き肉屋へと着くと10分程待たされてテレビでニュースが流れていた。水谷はそのニュースを真剣に見ていた。何やらこの町で猟奇的な惨殺事件が繰り返されているとの内容であったが。ニュースの途中で僕達は大人数でテーブル席へと案内された。
マリアは未成年の為にコーラを渡して。皆で乾杯をすると。始めて顔を合わせたカラテパンの数島謙吾や水谷探偵事務所の新入りである冨永零士は皆に自己紹介したり。和気あいあいの盛り上がりを持ってマリアの初ステージは幕を閉じた。
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宴の後に皆とS区で解散して。各々がバラバラに帰路に着いた。その中で水谷は千香子を家へと送っていた。
「ぺチコさん具合は大丈夫ですか?」
「そうね。まだフラッシュバックや依存が見られるけれど、着実に抜け出せているわ。薬物の断絶は難しいけれど私なら大丈夫。」
「そうですね...。」
「珠樹。何か言いたい事があるんでしょ。言いなさい。」
「最近この町で起こっている猟奇的な連続惨殺事件の依頼が来ました。」
千香子は立ち止まり。水谷の顔を見て
「受けたのね。」
「はい。もしもの時は水谷探偵事務所をお願いします。彼等ならやっていけると思いますが、まだ若い。ポルカドット611も途中では有りますが彼等なら止められる気がします。」
「通称Reptilian事件。珠樹。私も連れて行きなさい。」
「ぺチコさんは休んでてください。まだ身体も思わしく無いのですから。」
「貴方は一人だと死ぬかもしれない。だけど私が居れば二人で戻れるわ。あの子達には珠樹はまだまだ必要なの。私は無理はしないって約束するから。ね。」
水谷は千香子のその言葉に苦笑いをすると。ポケットから煙草を取り出して火を点けると
「断っても無理ですね。本当はこの『心の無い犯罪Reptilian事件』挑んでみたいのでしょ?」
「流石名探偵。御名答。」
そう言うと二人はまた歩き始めた。




