【51】Maria-2
話してみると。この冨永零士は見掛けは派手だが何だか体育会系な男で礼儀正しく。僕は水谷と冨永零士をマリアのライブへと誘ってみると。残りの千香子や尚吾へは水谷がチケットを渡しに行くと言い出し。僕と零士に浮気調査の依頼を任せて出て行った。
僕は水谷から預かった資料に目を通しながら。隣から資料を覗いてくる零士に
「まあ、何か任されちゃったんだ行きますか。」
と二人で浮気調査の仕事に出掛けた。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「よっしゃー!弦も張り替えたし気合いバッチリっす!昼からリハだからそろそろ行きますか!」
マリアは仕度を整えてライブハウスの在るS区へと出掛けて行った。マリアはステージ衣装用に僕のパナマ帽を見付けてマリアは取ろうととするが身長146cmと小柄な為に届かず。ピョコンピョコン跳ねて三度目に取る事が出来た。マリアはイヤホンを着けてお気に入りの音楽を掛けながらS区へと出掛けた。
マリアは取り合えず銀行へ寄り口座から、チケット10枚分の料金と移動費とご飯代で三万円下ろすと財布に仕舞い。ギターケースとギターアンプ、それと周辺機器を持つとテクテクと駅へ向かい。歩いたが荷物の多さに周囲の人は不思議な目で見ていた。
マリアは荷物の多さにヘロヘロに成りながらS区へ着くと、これから10分程歩かなければ行けないのでタクシーを拾いライブハウスへと到着した。
すると今日の対バン予定の『デリバリー デリンリジャーズ』のメンバーとマリアは出会した。そのDDのメンバーの中にマリアと顔見知りの女性ボーカリストであるURICOが居た。マリアとURICOはあまり良い関係では無く。一度マリアが音楽を辞めたのもこのURICOが原因であり。マリアは一瞬怖じ気付いたが、初のステージを岳大が見に来る事を心に込めて気合いを入れ直し。DDのメンバーの前で荷物を下ろして頭を下げて
「おはようございます!アッシ!マリアと言います!今日は対バン宜しくお願いしまっす!」
そう勢いよく挨拶をすると。URICOはマリアに気付き
「あんたチビマリアじゃん。逃げ出した半端者がノコノコとまあ。あんたみたいなチビがステージ上がって見えんのかね?Tube Lineで有名になってんだか知らないけど。声がデカイだけのお前みたいなのがステージ上がると目障りなんだよ!」
そう言うと。URICOは長いピンク色の髪をたくしあげるとマリアに唾を吐き。マリアのギターアンプを真っ赤なヒールで蹴りライブハウスへと入っていった。
マリアはURICOの言葉に傷付いたが、一度音楽から逃げた自責の念からも何も言い返せず涙が滲んだ。そしてURICOに蹴られた傷を手で擦ると涙を拭いて。ライブハウスのドアを開けて
「おはようございます!アッシ!マリアです!アッシやってやりますんで宜しくお願いしまっす!」
とライブハウス中に響く大声で挨拶をした。するとライブハウスのオーナーであり今回のライブの企画者であるトミーさんと言うライダースジャケットを羽織った60代の白髪でオールバックの大柄な男性が大笑いしながらマリアに近付き両肩を掴むと
「やあやあ!マリアちゃん!はじめまして。俺はトミーってこのライブハウスのオーナーだ。元気があって良いね!今日は頼んだよ!」
そう言って。次にPAエンジニアのエージが
「マリアちゃん。Tube Line観てるよ。宜しく。」
そうボソボソと言いスタンドへと下がった。URICOは落ち込んで居ないマリアのそんな姿に苛立ちを見せて。控室へと下がっていった。そしてURICOはバンドメンバーに
「何でうちらがあんなチビの前なんだよ!」
と文句を言うと。先にリハーサルを行うマリアを冷やかしてやろうとステージを見に行った。マリアはギターをチューニングすると、スタンドマイクを1番低く調整しPAエンジニアのエージにお辞儀をして
「宜しくお願いしまっす!」
と元気に挨拶をした。




