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【50】Maria-1



 僕は都会的な通りを歩いていると。心地好い音楽が町を流れている。僕は音の鳴る方へと歩いて行くと僕は道に溢れる水気に足を取られてコケた。すると転んだ僕の手にはヌルヌルとした赤い液体がまとわりついている。


 僕は必死に起き上がろうとするが起き上がれずに居ると。目の前にはコンピューターグラフィクスの水玉模様の猫が陽気に躍りながら足下の赤い液体を跳ね上げて近付いて来る。


「さあ、お迎えに上がりましたよ。」


そう言いながら。見知らぬ真っ黒な男が、徐々に色んな色の水玉模様に成りながら寄ってくる。すると空間には亀裂が入り、ビルやアスファルトの舗装が崩れだし。空や地面も崩れだした。




◻️◼️◻️◼️◻️◼️◻️◼️◻️◼️◻️◼️◻️



11月3日


 「わあっ!あああ!」僕はそんな声を上げて目を覚ますと。朝食を作っているマリアが


「タケ、ウケるし。怖い夢で目を覚ますなんて......アッシが慰めてあげる!」


そう言うとベッドの僕に飛び掛かって来た。マリアはまた下着姿でタトゥーだらけの身体で僕に抱き付き、ピアスだらけの顔を僕に擦り寄せてきた。金髪のショートカットの髪から甘い匂いがしたので


「マリア。シャンプー変えた?」


そう訊ねるとマリアは


「アッシの僅かな変化にも気付いてくれる様になったっすね!」


そう顔をスリスリして来たので。僕は


「もしかしてマリア。引っ越せるぐらいお金が貯まったんじゃないか?」


「そ、そんなこと無いし!あっ!フライパンの火が!」


マリアはそそくさと流し台へと戻って行った。六畳一間のアパートで二人の生活は狭くて仕方ないと思いながらも、マリアの存在に8月18日に自殺を止めてからの付き合いで有り、長いこと同姓生活も有り何だかこれだけ密接して生きて来たのも高城尚吾以来である。そんな事を考えているとマリアが朝食にトーストに目玉焼きを乗せた物とコーヒーを持ってきた。僕は、たまに見るこの抽象的な悪夢の事が気になり。千香子の所にでも行ってみようか。等と考えながら目玉焼きをズルリと飲み込んだ。


 マリアはトーストを角から耳だけを噛りながら、僕に紙切れを渡してきた。マリアは頬にパン屑を付けたままニカッと笑い


「遂にアッシが箱に呼ばれたんす!」


「箱?下駄箱?」


「何で下駄箱に呼ばれるんすか!アッシはズックか!箱っつたらライブハウスの事っす!これはチケットっす!タケも来るっす!そして珠樹っちや尚吾っちや、彼女っちやペチコっちとか色々連れて来るっす!」


マリアは僕にチケットを10枚程手渡すと、パンの柔らかい部分と目玉焼きを一緒にハフハフ食べだした。僕は『ズックって...』と思いながら食器を片付けてコーヒーを飲み終えると、とりあえず水谷の所へチケットを配りに行ってやろうと思い身支度を始めた。マリアはいつものギターと違うエレクトリックアコースティックギターをクローゼットから取り出し弦を外し始めた。


「じゃあ、行って来る。S区のライブハウスで19時に出番だったな。」


僕はマリアに確認すると。マリアは親指を立ててニカッと笑い送り出した。


 水谷の事務所に着くと知らない男が掃除をしていた。短くて赤い髪型に少し背が低く色白で依頼者でもなさそうで。僕に気付いた水谷が


「冨永零士君。彼は君の兄弟子である幸島岳大君です。」


そう言うと。冨永零士と言う男は掃除の手を止めて僕に向かい


「兄弟子うっす!俺は冨永零士って言います!兄弟子と一緒にこの事務所で働かせてもらいます!」


と元気一杯に挨拶をしてきた。そんな光景を見ながら水谷は相撲漫画を読みながらニヤニヤしていた。水谷はこの探偵事務所を相撲部屋にでもしたいのだろうか?等と下らないことが頭をよぎりながも冨永零士と挨拶を交わした。




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